幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 12月28日 ● 言葉の転落ぶりを楽しむ文化。

 最近テレビやラジオで良く使われるフレーズのひとつに「今年の○○(クリスマスとかカウントダウンとかが入ります)は、2000年に一度!」というのがあります。あくまでも無意味な単なる盛り上げフレーズだとわかってはいますが、それでもやっぱり聞く度に突っ込みを入れたくなります。最初は気の利いた言い回しのつもりだったのかも知れませんが、今となっては来年はなんて言うつもりなのか心配になります。多分忘れた顔をしてまた同じようなことを言うのかも。いや、きっと言うでしょう。

 「ミレニアム」という言葉の手垢のつきかたの早さも目を見張るほどのものがありました。なんでもかんでも「ミレニアム△△」。「ミレニアム福袋」とか「ミレニアムおせち」とか、ミスマッチも甚だしい言葉が飛び交っています。「カリスマ」といい「癒し」といい、宗教っぽい言葉なら何でも飛びつくマスコミの好餌になったという印象しかありません。折角荘厳な響きのあった宗教用語が、アッという間に口にするのも恥ずかしいような死語になろうとしています。

 「2000年問題」も、ここにきてやたらと幅広く使われるようになりました。本来のコンピュータ絡みのトラブルという意味を飛び越えて、なんでもかんでも年を越して問題化しそうなことは「××の2000年問題」とか言われてしまっています。これは難しいことを言って大騒ぎしている割には、旅行は控えましょう、風呂に水を張っておきましょう、食料品の備蓄を忘れずに、なんて、台風への備えと同じことしか言われないので、なんだかな、結局アナクロな天災と同じ様なものか、という緩み具合に原因があるのかも知れません。

 どれもこれも言葉が一気に流布していく過程の中で、激しく言葉の持つ価値が下落しています。しかも、深窓の令嬢が身を落としていくような、高いところから転落していくのを楽しんでいるかのような匂いさえします。

 昔も「それはもう死語だよ」なんて言葉はたくさんありましたが、最近死語へのスピードアップがやたらと激しくなってきたのは、こうして言葉そのものの消費活動を人々が楽しむようになってきたからではないかと推測しています。もしそうだとしたら、これはかなり高い文化レベルの行為です。言葉そのものの盛衰を楽しむなんて、相当に爛熟頽廃的だと思います。2000年代の日本は、日本語を弄ぶような国になるんでしょうか。
 
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