幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 11月30日 ● カタルシスのない討ち入り。

 NHKの大河ドラマ『元禄繚乱』も、先日の放送でとうとう討ち入りを果たしました。このドラマは1月からずっと見てきたのですが、途中でかなりダレてしまいました。そのダレっぷりたるや、NHKの会長自らが認めるほどひどいものだったのですが、それでもなんとかかんとか、ようやく討ち入りまでこぎつけました。松の廊下と並ぶ一番の見せ場だけに、じっくりとテレビ前で鑑賞させていただきました。

 で、見終わった感想。「なんか盛り上がらないなぁ」。どうも「遂に宿願を果たした」という快感がないのです。大石内蔵助ら四十七士と一緒に感涙を流すには、あまりにもドラマが醒めていました。原因はわかっています。吉良上野介が憎たらしくないからです。少々人間としての器は小さいけれど、それなりに愛すべき人物というイメージで描かれていたせいか、殺してしまうのは忍びない、なにも殺さなくてもいいじゃないか、とさえ思ってしまいます。

 そもそもこの敵討ちは、本当に吉良が悪いのか?と感じられるようにドラマは作られています。浅野のバカ殿様の短慮が招いた悲劇なのですから、吉良も本当は被害者ではないか、さらに言えば、それらの全ては柳沢吉保の陰謀であり、彼の手の上で大石も吉良も踊らされていただけではないか、と。これでは討ち入りが盛り上がらないのも無理はありません。現代人の目から見れば、これは敵討ちというよりも単なる要人テロ事件だからです。

 むろん、今さら忠臣蔵を1年かけてやる以上は、何らかの新しい解釈を提示しなくては意味がない、という制作側の意図はよくわかります。現代の会社や家庭に置き換えて考えられるような作り方も、忠臣蔵を良く知らない世代にでも馴染みやすいように、という狙いもあったと思います。ただこのドラマの本質は、やはり耐えて耐えてとうとう本懐を遂げるという、そのカタルシスにあるのですから、それを損なってしまっていては、忠臣蔵である意味がありません。

 トレンディドラマ系、時代劇系、ジャニーズを始めとするアイドル系をバランス良く揃えたキャスティングは、なかなか見事なものでしたし、時代劇臭くない演出も良かったと思います。ただそれだけ忠臣蔵に馴染みのない若い世代にも見てもらおうと思っているのなら、エンターテイメントとしてもっともっと面白くして欲しかったですね。「なんか忠臣蔵ってつまんないね」と若者に思われてしまったとしたら、それは大袈裟に言えばNHKが日本の文化をひとつ壊してしまったことにすらなると思います。

 
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