HEAVEN ON EARTH (BLUE NOTE)

LARRY YOUNG (1968/2/9)

HEAVEN ON EARTH


【パーソネル】

BYARD LANCASTER (as,fl) HERBERT MORGAN (ts) GEORGE BENSON (g)
LARRY YOUNG (org) EDWARD GLADDEN (ds) ALTHEA YOUNG (vo) <#6>
【収録曲】

(01-03) THE INFANT / THE CRADLE / THE HEREAFTER
(04-06) HEAVEN ON EARTH / CALL ME / MY FUNNY VALENTINE
【解説】 ( 2012年04月08日更新 / 連載 1,026回 )

 今日は 『お蔵入り写真在庫一掃セール』 をお届けしたいと思います。 春になって、これから撮影に出掛ける機会も多くなるんですが、去年撮って、日の目を見ることのないまま眠っている写真がいくつかあったりするんですよね。 このまま埋もれさせてしまうには惜しい…、という程のものでもないんですが、他に書くこともないし、ということで、さ、頑張りましょう。


< 八方尾根の自然研究の成果 (その1) > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 まずは去年の夏、八方尾根自然研究路に行った時の写真。 詳細は、えーと、 この辺り っすか。天気もよかったし、お花もいっぱい咲いていたんですが、まずは (写真・いちばん上) の “イワシモツケ” 。 名前が合っているかどうかの自信度は 72%くらいなんですが、名前の由来はアレです。 イワシの臓物 (モツ) みたいな臭いがするので、イワシ、モツけぇ。 そういうことではなくて、岩下野。 これを 「いわげや」 と読んじゃうと、ちょっぴり 「いなげや」 っぽくなってしまうんですが、上野と書いて 「こうずけ」 、下野と書いて 「しもつけ」 。 どうして上の場合は 「す」 に “てんてん” なのに、下の場合は 「つ」 なのか、その法則性が今ひとつよく分からんのですが、 「しもすけ」 だと、下(シモ)がスケベ。 そのような印象を持たれちゃうからかも知れませんな。 で、これ、下野の国 (←今の栃木県あたり) に、いっぱい生えているから、シモツケ。 そのように命名された植物によく似ていて、岩っぽいところに生えているから、イワシモツケ。 そのように命名された植物であるようですが、小さな花がいっぱい集まって、わりと派手キュートです。 で、この日、散策している時はとてもいい天気だったんですが、朝方にザーッと雨が降ったようで、お花がしっとり濡れ濡れ状態になっておりました。 で、ひとつ飛ばして、 (写真・ちょうど真ん中) は、アレです。 葉っぱに付着した水滴がとってもキラキラと光ってシャイニングだったので、思わず撮ってしまったシャイな僕。 そういったコンセプトの作品だったりします。 いいですよね、水滴。 瑞々しくて心が洗われる思いがします。 水滴と点滴と豚テキ。 この中から好きなものをひとつ選べと言われたら、断然、豚テキだと思うんですが、少なくとも点滴よりはいいですよね、水滴。 綺麗な水滴でも、点滴に混入されたりするのは、ちょっと嫌なんですけど。

 ということで、次。 ひとつ戻って、 (写真・上から2番目) 。 見た目は地味なんですが、ちょっと珍しい形状のお花ですよね。 相当のレア物であるらしく、本を見ても名前が分からずに苦労したんですが、 いがりまさしクン の力を借りて、ようやくソレらしきものを発見することが出来ました。 “ハクサンタイゲキ” っすかね? グーグルで 「はくさんた…」 まで入力しても、白山タクシーとかしか出てこないんですが、 「はくさんたい…」 まで行くと、白山体育館と並んで顔を見せるので、レア度としてはそこそこなのかも知れません。 “ハクサン” のほうは
/^o^\ハックッサーン で、いいとして、 “タイゲキ” って、何? …と思ったら、漢字で書くと 「大戟」 。 普通、漢字で書かれると何となく意味が分かるものなんですが、これはさっぱりですな。普通に 「白山大戦」でいいぢゃん? …という気がするんですが、それでは何か不満だったんすかね? ちなみに 「戟」 というのは こういうもの らしいんですが、なるほど。 言われてみれば、何となく形が似ているような気がしないでもありませんな。 言われなければ、まったくそんな気はしないんですけど。 で、これはトウダイグサの仲間なんだそうです。 「東大草」 ではなくて、 「灯台草」 。 海のほうの灯台ではなくて、蝋燭を立てる台のほう。 言われてみれば確かに、そっちのほうには形が似ているような気がしないでもありませんな。 茎を切ると白い汁が出て、それに触れると漆みたいにかぶれちゃうんだそうです。ハクサンタイゲキには “野漆” という別名もあるようですが、ロウソク責めと漆プレイのコラボとか、何ともハードでありますなぁ。。。

 ということで、 (写真・下から2番目) 。 鶴っぽい形のお花が何とも言えずに “ヨツバシオガマ” なんですが、これ、前にも出ましたっけ? で、調べてみたら、ありました。 これ ですな。 再出なので、あれこれ論評を加えるのはヤメておきますが、今回の写真のほうがより鶴っぽさが分かりやすい仕上がりになっていて、何よりだと思います。 で、 (写真・いちばん下) 。 独特のお花の形状からして、シソ科の植物として計上しておけば間違いないと思うんですが、んーと、ウツボグサ? ただ、ただのウツボグサだとさほど珍しくもなくて価値がないので、“タテヤマウツボグサ”。 そっちのほうにさせて頂きたいと思います。 どこがどのように違うのかは ここ を見て貰うとして、実際のところ、タテヤマっぽいですよね、これは。 撮影場所もちゃんと八方尾根になってるしー。 伊吹山ごときに生えてる、ただのウツボグサとは違うんだよ! そんな優越感に浸ることが出来て、何よりでありますなぁ。


< 八方尾根の自然研究の成果 (その2) > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 ということで、次の5枚です。 まずは (写真・いちばん上)。 これはアレです。正体不明です。本で調べても、いがりクンのサイトで検索しても該当するものが見当たらなくて、悔しいけど敗北を認めるしかない、サイボクハム好きの僕。 そういう方向で話を進めるしかないと覚悟を決めたんですが、と思ったら、名前が判明しました。 「八方尾根 花」 で画像検索したら、あっさりと同じ花の写真を発見。 『老いぼれ雑記』 というサイトに正解がありました。 “オオコメツツジ” っすか。 老いぼれに答えを教えられて、何とも癪に障るんですが、おまけにマウスオンで画像が切り替わるという高等テクまで駆使されていて、老いぼれの癖に生意気だぞ! そう思わずにはいられません。 ただ、“オオコメツツジ” のところでマウスオンすると、何故だか “ギボウシ” の蕾みたいなのが出てきたりして、そういうところはいかにも老いぼれらしくて好感が持てますな。 で、これ、言われてみれば確かに微妙にツツジっぽい仕上がりだったりするんですが、どの辺りが “オオコメ” なのかは今ひとつよく分からず、ちなみに漢字で書くと、「大米躑躅」。 何でもいいけど、いつ見ても難しいですなぁ、ツツジという字、略して、ツツ字。 微妙に “髑髏(どくろ)” という字に似てたりもするんですが、ま、無駄に難しいということ以外は、まったく似てなかったりするんですけど。 いずれにしろ、名前が分かって、超スッキリしたので、次に進みます。 (写真・上から2番目) 。 わりとよくあるタイプの花なんですが、黄色い花びらと、黒っぽい “おしべ” のコントラストが、個人的にはちょっぴり好きっ♪ で、名前を調べた結果、ヤクシソウ? …という結論に落ち着きそうになったんですが、それよりもっと、よりベターにマッチするのが見つかりました。 “タカネニガナ” でしょうな、多分。 となると、 ここ で既に取り上げられていて、 “今さら感” が漂いまくる、今さらジロー。 そんな空気が漂ってしまいます。 ついでにいうと、ひとつ飛ばして (写真・下から2番目) の “チングルマ” も、 ヨツバシオガマと同じところ で取り上げられているので、今回、詳細に関しては割愛させて頂きます。 写真的には今回のほうがアップ・バージョンになっているので、再度取り上げた意義はあったと思うんですが、個人的にはこういう “おしべ” や “めしべ” がモジャモジャしているお花は、あまりタイプではなかったりします。 鼻毛、切れよ! そう言いたくなっちゃいますよね。 人に言う以上、僕もなるだけ鼻毛は切る…、というか、なるだけ抜くように努力しているんですが、くしゃみが出まくって大変です。 今の時期は花粉とのコラボなので、余計に。

 で、次。 ひとつ戻って、 (写真・ちょうど真ん中) 。 これは横に名前を記した看板が立っていたので、手間いらず。 “ハッポウタカネセンブリ” であると断言しても、ま、恐らく、それほど大きな間違いではないと言えるのではなかろうかと。 で、これはアレです。 基本は “センブリ” です。 ちょっぴり “寒ブリ” みたいで、お洒落な名前であるとは言い難いんですが、漢方薬としてよく使われるので、一般大衆にもわりと馴染みが深いのではなかろうかと。 「良薬は口に苦し」 と言いますが、コイツも相当に苦いようで、名前の由来もそこから来ているそうです。 何でも、1000回振っても苦いから “千振り” なんだそうで。 そもそも、振り回せば苦みが消えるという発想からして間違っていると思うんですが、ま、気持ちは分かるんですけどね。 何となく、振り回してやると “苦み” が先っちょのほうに移動して、根元のほうは大丈夫になるような気がするんですが、ま、そんな気がするだけの話で、実際は1000回振っても苦いものは苦いんですけど。 振り回すだけなら猿でも出来るので、人間であればもうちょっと工夫が求められるところなんですが、正露丸みたいに “センブリ糖衣” にしちゃうとか? 糖衣錠に関しては子供の頃の苦い思い出があったりするんですが、何のことはない、正露丸糖衣が甘くて美味しかったので、飲み込まずにずっと舐めていたんですよね。 が、 「羊の皮を被った狼」 というのはまさにコイツのことで、調子に乗って舐めて掛かっていると、やがて本性を現して、いきなり、めっちゃ苦くなるんですよねー。 最初から苦ければそれなりに対処するんですが、甘い顔を見せて油断させるとは、やりくちが汚すぎると言わざるを得ません。 とまあ、そんな性悪なセンブリの野郎なんですが、お花のほうはというと、これがもう、びっくりするくらいにラブリー&キュート。 水色の花びらに紫色の斑点を散らすという意匠は、センブリながら、あっぱれ。 そう評価せずにはいられませんが、で、このハッポウタカネセンブリは、アレです。ただのセンブリではありません。 “タカネ” の名前を冠しているように、まさに “高嶺の花” でありまして、しかもアタマに “八方” まで付いちゃってます。 八方の固有種らしく、超レア物であると言っていいのではなかろうかと。 うちの近くに七宝町 (しっぽうちょう) というところがあって、そこに行けば七宝焼きが見れるんですが、ハッポウはぜんぜん咲いてませんからね。わざわざ八方まで行った甲斐があったというものですが、ということで、 (写真・いちばん下) 。 これまた、なかなかキュートなお花なんですが、名前を調べてみたら、そちらのほうもなかなか優雅でありました。 “ユキワリソウ”。 何だかこう、川中美幸あたりが新曲で出しそうですよね。 …とか思っていたら、既に原田悠里が旧曲で出しておりました。 花・花・花・・・オール花の歌の名曲、コンピレーション初登場! 川中美幸は 「うすゆき草」 っすかぁ。 で、この “ユキワリソウ” はですね、 “サクラソウ” の仲間みたいです。名前からして春先に咲きそうな感じなんですが、夏に咲くんですな。細かい話は 太目の細井クン におまかせするとして、いや、あまり大したことは書いてないんですけど。 山の上だと雪が溶けるのも初夏くらいだったりするので、ユキワリソウが初夏に咲いたとしても、アショカ王はきっと許してくれるのではなかろうかと。


< 八方尾根の自然研究の成果 (その3)+親海湿原 > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 ということで、次。 八方の写真は残り2枚なんですが、  (写真・いちばん上) は “イワカガミ” 。 で、その下は “クガイソウ” 。 面倒になってきたので細かい説明は省きますが、とまあそんなことで、八方は以上です。 で、続いては、少し南下した “親海湿原” というところで撮ったお花の写真を紹介したいと思うんですが、親の海と書いて “およみ” とお読みします。  「白馬さのさか」 というスキー場の国道に面した駐車場に車を止めて、そこから歩いて10分くらいで到達出来る、とっても便利な湿原なんですが、利便性が高いだけあって、湿原の資質としては正直、今ひとつ。 湿っぽさのないドライな性格の湿原といった感じで、ぱっと見、単なる草むらとしか思えなかったりします。 草むらにムラムラするという趣向の人ならいいかも知れませんが、お花目当てだとちょっぴり拍子抜け。 ま、ぜんぜん咲いてないことはなくて、よく見れば写真3枚分くらいのネタは提供してくれるんですが、ということで、 (写真・ちょうど真ん中) 。 これはアレです。 “クサレダマ” 。 以前、 ここ で取り上げたことがあるので、 “腐れ玉” とか書くのはヤメにして、 “苦鎖麗惰魔” という新しい展開に持ち込もうかと思ったんですが、面倒なのでそれもヤメにして、ということで、次。  (写真・下から2番目)はアレです。 “コオニユリ” です。 いや、もしかしたら “クルマユリ” なのかも知れませんが、ユリの仲間であるのは間違いありません。由利徹やユリ・ゲラーとも仲良くやっていけるに違いありませんが、野草には珍しい鮮やかな赤色の花びらを反り返らせた上に斑点まで付けちゃって、何とも派手な出で立ちですよね。心を揺り動かされるユリでありますが、ということで、ラストです。  (写真・いちばん下) 。 これはアレです。 “サワギキョウ” 。  なでしこジャパンには澤 (さわ) という義侠に溢れたキャラがいるんですが、こっちのほうは、沢に生えてる桔梗っぽい花を咲かせる植物だから、サワギキョウ。 で、澤兄貴と違って、こっちのほうは見た目もキュートですよね。桔梗っぽいと言っても、色以外はさほど似てないような気もするので、これで桔梗を名乗るのは卑怯な気もするんですが、かと言って、片山右京を名乗られても富士山で遭難するのが関の山だし、ま、右京で苦境に陥るくらいなら、桔梗でいっかぁ。 そういう判断に基づいて、この名前に落ち着いたのかもしれません。 とまあそんなことで、桔梗で話が佳境に入ったところで、お花写真の在庫処分は、おしまい。

 話のどこが佳境に入っていたのかと言われると、甚だ返答に困るところではありますが、とりあえずまあ、今日の後半はラリー・ヤングです。 この人はアレです。 『ユニティ』 だけで勝負している。 そのように、あまりコアではない日本のジャズ・ファンからは思われてるに違いないんですが、その意味ではウニだけで勝負している 「うに亭」 というウニ料理専門店に相通じるものがありますよね。 いや、そんな店が本当にあるのかどうか定かではないんですけど。 ウニ料理というのは極めてレパートリーの幅が狭いので、ウニだけで飯を食っているのは大変だと思うんですが、で、 『ユニティ』 はアレです。 ウニ醤油やジョー・ヘンダーソン、更にはエルビン・ジョーンズといった強力無比なメンバーを従え、オルガンなのに泥臭くない新感覚な新主流派サウンドを築き上げたエポック・メイキングな作品として、エポック社の野球盤と同じくらい、エラい。 そういったアルバムだったりするんですが、あ、ウニ醤油ではなくて、ウディ・ショウですか。 いずれにしろ、この作品のお陰でヤングくんは “オルガンのコルトレーン” と呼ばれることになります。 普通、名字が“ヤング”なら、あだ名は “ヤングマン” か “ヤングコーン” と決まっていたんですが、思わずトレーンの名前を出したくなるほど、イメージが強烈だったんでしょうな。 初期のプレスティッジ時代のリーダー作を聴くと、あまりにも普通な泥臭いオルガン・ジャズをやっていて、愕然としちゃうんですが、後期のブルーノート時代は概ね小難しい感じの作風になっていて、コアなファンの受けはいいようです。 ということで、今日は1968年に生まれた 『ヘブン・オン・アース』 という1枚を紹介したいと思います。ということは、今から44年前の吹き込みでありますな。僕と同じ誕生年なので話が早いんですが、 『地球上の天国』 っすか。 天国と言うのは天の上にしかないのかと思ったら、そうとも限らず、意外と日本の地上にもあったりしますよね。 「天国 (てんくに) 」 という名前の天ぷら屋さんとか。少なくとも 「うに亭」 よりはありがちだと思うんですが、天国らしく、ジャケットには天使らしきお子様が降臨されておられます。サイドマンにはバイヤード・ランカスターハーバード・モーガンという、個人的にはまったくよく知らないサックス奏者が名を連ねていて、ギターのジョージ・ベンソン以外、知名度という点では 『ユニティ』 の足下にも及ばないんですが、わりと大きめの編成なので、かなりハードな作品に仕上がっているものと推測されます。 心して掛からなければなりません。

 ということで、1曲目です。 ヤングのオリジナルで、 「ザ・インファント」 。 インファントというのは “陰気なエレファント” の略とか、そういうのではなくて、確か 「幼児」 といった意味だと思うんですが、ショーターに 「インファント・アイズ」 という傑作バラードがあったりしますよね。 あれ系の佳曲であることが期待されるんですが、いざ演奏が始まってみれば、唖然、愕然、左卜全 (ひだり・ぼくぜん) 。なんじゃ、この “ゆる曲” は!? 岡崎正通クンの書いた日本語ライナーを見たら、 「当時流行っていたブーガルーのビートを取り入れた」 という記述があったんですが、まさにソレ。 典型的なソウル系の仕上がりで、 “オルガンのコルトレーン” のイメージ、台無し。 うーん、先祖返りしちゃいましたかぁ。。。 ま、“こむらがえり” よりはマシだと思って諦めるしかありませんが、ブーガルーは高木ブーに任せておけばいいのにぃ。 いや、ブーの専門はハワイアンだから駄目っすか。 ま、これはこういうモノだと認識して、最初から諦めムードで取り組めば、そんなに落胆することもないと思われるんですが、オルガン・トリオによってベタで幼児的なテーマが演奏された後、ハーバード・モーガンが登場します。 フレディ・ハバードとリー・モーガンとの間に生まれてしまった子供のような名前なんですが、持ち楽器はテナー。 よくあるタイプのソウル系であるものと認識しました。 で、続いて出てくるバイヤード・ランカスターのアルトはちょっぴりフリーキーで、ジェームス・スポールディングを泥臭くした感じだったりするんですが、でもって、ギター・ソロはジョージ・ベンソンでありますか。 ベン・ジョンソンの名字と名前をひっくり返したようなこのオッサンは、後にポップスの世界で大成功を収めるんですが、根はウエス・モンゴメリーの流れを汲むジャズ・ギタリスト。 実力の程は確かなので安心していて大丈夫なんですが、ここでもなかなかファンクなソロを披露してくれております。 でもって、最後はヤングのソロっすか。 ベタな曲なりにアドリブのほうはわりと頑張っていて、途中からはホーンも絡んで来て大いに盛り上がる、大飯原発。 そんな仕上がりだったりするんですが、最後はテーマに戻らず、ちょっと中途半端な感じでフェードアウトしちゃうのが、ちょっと残念。 ま、最初の印象よりは全然マシだったので、何よりでありました。

 で、次。 これまたヤングのオリジナルで、 「ザ・クレードル」 。 クレードルというのは “揺りかご” の意味なんだそうですが、 「ザ・幼児」 から 「ザ・揺りかご」 へ。 更なる先祖返り…というか、子供返りが懸念されるところなんですが、大丈夫でした。 岡崎クンの書いた日本語ライナーによると、本人曰く、マイルスの音楽にインスパイアされて書いた作品なんだとか。 実際のところ、さほどマイルスっぽくはなくて、どちらかというとマイワシっぽい仕上がりだったりするんですが、ボサノヴァ風の軽やかなリズムが心地よく耳に響きます。 で、アドリブに入ると、それなりに “オルガンのコルトレーン” っぽさを感じさせる瞬間があったりもするし、いやあ、いいっすなぁ。 ちなみにここでは管楽器の2人はお休み。ベンソン君の見せ場もなく、その分、ドラムスのエドワード・グラッデンという人が頑張ってます。 エルビンと比べると迫力不足の感は否めませんが、その分、薄力粉っぽい薄さと粉っぽさがあって、悪くありません。 最後、ちょっと中途半端な感じのフェードアウトで終わっちゃうのが前曲に引き続いて、ちょっと残念なんですが、全般的にヤングらしい若さに溢れていて、よかった。 そのように評価していいのではなかろうかと。 で、続く 「ザ・ヒアアフター」 もマイルスに触発されて作った曲のようですが、新主流派っぽいミステリアスな雰囲気が、何とも言えずにマダガスカル。 いや、とりあえず韻を踏もうとしたらそれしか思い付かなくて、ちょっぴり不毛でありましたが、エルビンを地味にしたようなグラッデンのタイコっぷりがノリスケさんの奥さんを彷彿させて、秀逸です。 子供の頃、タエコさんって、名前が普通じゃん! …と、不満に思っていたんですが、鯛子さんだったんですな。ちゃんと海産物していて、何の問題もありません。 ただ、海苔と鯛の間にイクラの子供が生まれる筈がないので、鮭と浮気したんじゃないのか? …という疑念は拭い去れないんですが、で、演奏のほうは、アレです。 トリオによるテーマに続いて、ベンソンのソロが登場します。 なかなか斬新な弾きっぷりで何よりだと思うんですが、で、続いて出てくるテナーのソロも、何だかとってもモーダルだったりします。 いいですよね、モーダル。悶える感じがして。 で、続くバイヤード・ランカスターくんはフルートを吹いているんですが、これがまた、なかなかいい感じのプチ前衛風な仕上がりになっていたりします。 その後、集団即興演奏っぽくなって小難しさがピークに達するんですが、でもって、その後、オルガンのソロらしきものが出てきて、そこにテナーが絡んできて、で、最後はやっぱりフェードアウトっすか。 これをやられると、カラオケで歌うときに困るんっスよね。 きっぱり見切りを付けて途中で歌うのをやめるのか、原作に忠実に、少しずつ声を小さくしながら最後まで職務を全うするのがいいのか。 無駄な悩みが増えるので、フェードアウトするのはカラオケでは歌わないようにしているんですが、ま、いずれにしろ、60年代後半のブルーノートっぽさ、バリバリ全開、夜露死苦! そんな1曲でありました。

 で、続いてはアルバム・タイトル曲の 「ヘブン・オン・アース」 。 何となく、小難しさがバリバリ全開になりそうな予感がしたんですが、大丈夫でした。 ブラック・ファンク丸出しのポップな仕上がりだったりして、予想の裏をかかれちゃいました。 レア・グルーヴって奴っすかね? テーマの後、ギター、テナー、オルガンの順で、深いけれど不快ではないソロが披露されて、でもって、最後は集団即興演奏っぽくなって大いに盛り上がって、フェードアウトして、おしまい。 で、次。  「コール・ミー」 。 イギリス人の作曲家、トニー・ハッチが書いたヒット曲で、ライブ・ステージなどでしばしばリクエストされたことから、ここにとりあげられることになった。 そういう経緯が日本語ライナーに書かれておりますが、いかにもヒット曲らしいポップな仕上がりで、悪くないと思います。なかなかやってくれますなぁ、ハッチ。みなしごにしては上出来だと思います。最近では 「みなしご」 を放送禁止とみなして、みつばちハッチになったんでしたっけ? いずれにしろ、2曲目と同様、ボッサのリズムが心地いいんですが、この手のサウンドにはオルガンとギターのコンビがとってもよくマッチしますよね。 ということで、ベンソンが大活躍。 便所では括約筋が大活躍。 いや、便所で括約筋は力を抜いているだけなので、括約筋が活躍するのは便所の外だと言ったほうがいいかも知れませんが、いずれにしろ、まったく関係のない話なので、別にどっちでもいいんですけど。 で、ギターの後はテナーが出てきて、それなりに活躍。 オルガンのいい感じのソロがそれに続いて、でもって、きっちりとテーマに戻って、でも最後はやっぱりフェードアウトで、おしまい。 で、アルバムの最後を飾るのはお馴染みのスタンダード、 「マイ・ファニー・バレンタイン」 。 この曲だけアルセア・ヤングという人のヴォーカルが入るんですが、誰かと思ったらラリー・ヤングの奥さんみたいです。 若い嫁を貰って、うらやましい限りです。 いや、名前がヤングなだけで、実際はそこそこ、年をくってたりするのかも知れませんけど。若くないのに、ワカコみたいな。 で、肝心の歌のほうはというと、可も無く、不可も無くといったところかと。 身内だからといって、無駄に意味も無くフィーチャーするのは、どうか? …という気がしないでもないんですが、ま、実害はないから別にいいんですけど。 ただ、最後が何だかちょっと盛り上がらない感じになってしまっておりますが、とまあそんなことで、おしまい。

【総合評価】

 60年代後半の色んな要素を詰め込んでみました。 …という、そんなコンセプトのアルバムでありますな。 ま、放射性ヨウ素を詰め込まれるよりは全然マシだし、小難しいのばかりを6曲並べられても疲れるだけだし、トータル的にはこれでよかったんじゃないっすかね? 流行のブーガルーも、嫁の歌も、花見の席の余興のようなものだと思えば許容の範囲内だし、若いだけがヤングでない。 そんなことを教えてくれる1枚なのでありました。


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