POINCIANA REVISITED (IMPULSE)

AHMAD JAMAL (1969)

POINCIANA REVISITED


【パーソネル】

AHMAD JAMAL (p) JAMIL SULIEMAN (b) FRANK GANT (ds)
【収録曲】

(01-03) HAVE YOU MET MISS JONES / POINCIANA / LAMENT
(04-05) CALL ME / THEME FROM VALLEY OF THE DOLLS
(06-07) FRANK'S TUNE / HOW INSENSITIVE
【解説】 ( 2013年02月19日更新 / 連載 1,066回 )

 衝動買いしてしまったショーコー本が届きました。 『麻原彰晃、戦慄の予言〜日出ずる国、災い近し』 というヤツです。 (一部既報。) ぜんぜん期待してなかったんですが、ぱっと見、まずまずであるような気がしないでもないので、とっておきのネタとして、書くことが無くなった時まで大切にとっておこう。 そう思っていたんですが、今週、いきなり 「その時」 がやって来ました。 仕方が無いので泣く泣く放出することにしますが、表紙と裏表紙は こんな感じ です。 表の写真がモザイクっぽくなっているので、もしかして裏のほうはモロ? そう期待していたら、同じものが小さく載っているだけだったのでガックリしちゃいましたが、拍子抜けする表紙。 そう言っていいかも知れません。 で、表紙をめくった裏っ側のところには こんな文言 が。 ノストラダムスの大予言も大ハズレして、2013年までは余裕で生き続けることが出来ている僕達は、大予言などとうに忘れて、大納言を食べたりしながら日々を過ごしているわけでありますが、美味しいっすよね、大納言。 小豆の粒が入ったカステラみたいなやつ。 もしかしたら大納言カステラというのが正式名称なのかも知れませんが、ここ20年くらいは食べてない気がして、確かに当時の日本を懐かしむ気分にはなりました。 ま、今の日本でも食おうと思えばいつでも食えるような気はするんですけど。 この日本に残るもの、それは…。 少なくとも大納言だけは普通に残っているんですが、で、ショーコーくんが宗教生命を賭けて 「勃発するっ!」 と断言している第3次世界大戦はというと、今のところ、さっぱりでありますなぁ。 ま、このオッサンの宗教生命などとうの昔に絶たれているので、ハズレたところでぜんぜん大した問題ではなくて、別にどうでもいいんですが、この本を書いた当時はまだ、宗教生命 (自称) バリバリ全開だったようで、 著者紹介 のところには美辞麗句が並んでいたりします。 著者近影のほうもなかなか素敵な笑顔だったりするので、海や川や湖などを長い距離泳いで欲しくなったりするんですが、ま、著者遠泳ではないので泳いではくれませんかね? 水中クンバカ (←水中で息を止める修行) をやらせてみても、さっぱりでしたからね、彰晃くん。 アーナンダこと井上嘉浩くんは途中で心臓が止まって 5分30秒という低調な記録に終わってしまい、 「何を怖がってんだよ!」と尊師に叱られていたんですが、じゃ、叱ってる本人の記録はどうなのかというと、15秒。 さすが尊師。 笑いのツボをきっちり押さえているんですが、泳ぎが得意なようにはとても見えません。 じゃ、何が得意なのかというと、予言。 これはガチだったりします。 ま、その話はおいおい書くとして、まずは簡単にオウム真理教の歴史を振り返ってみましょう。

 この本の初版が発行されたのは1995年3月。 これが彼らにとってどういう意味のある時期だったのかというと、ここ にある無駄に詳しい年表を見れば一目瞭然。 学研の 『ムー』 に空中浮遊の写真が掲載されて、見る人を 「むぅ。」 と関心させたのが1985年っすか。 この当時はまだ、ただ胡散臭いだけで、さしたる害悪のない存在だったようですが、1989年になって出家信者の親たちが騒ぎ出し、その問題を追求しようした坂本弁護士が家族ともども殺されちゃいます。 翌年に 「真理党」 を結成して衆議院選挙に立候補するものの、25人全員が落選。ちなみに麻原彰晃が獲得したのは1783票だったんですな。 イナバさん(1783)、浅はかにも麻原に一票。 そう覚えておくといいでしょう。 参議院の比例代表でUFO党に投票して、まったくの死に票になってしまったことがある僕でも、さすがに麻原くんには投票しなかったんですが、ま、東京4区の住民ではなかったですからね。 各候補者の得票数が Wikipedia にありますが、マイトレーヤこと上祐史浩が310票、ミラレパこと新実智光が205票、ヴァジラティッサこと中川智正は1445票とわりと頑張ったんですが、マンジュシュリー・ミトラこと村井秀夫はたったの72票。 さすがは尊師、堂々トップの得票でありますな、身内だけに限って見れば。 惜敗率も 2.69%だから、負けはしたんだけど惜しかったよね。 そう、前向きに評価していいのかも知れません。本人は5〜6万票を獲得して当選すると信じていたようですが、東京4区の最下位当選者の得票数は68132票。読み通りの票が得られていたとしても微妙なところだったりするんですが、この選挙結果に危機感を募らせて、教団はより一層暴力的な方向へと暴走し始める次第であります。 1994年には松本サリン事件が発生。 で、この本の初版が出された1995年3月というのは、地下鉄サリン事件が発生した、まさに 「その時」 だったりするわけで、ある意味、オウムの “全盛期” と言えるかも知れませんが、で、同じ年の1月には阪神大震災も起こっております。 彰晃クンがそれを完璧に予言していたという話が本の冒頭に出てくるんですが、何でも地震発生9日前の1月8日に、自前のラジオ放送で 「 95年、日本は地震に襲われる。一番危ないのは神戸。」 そう断言したんだとか。 マジかよ!?

 ま、後からなら何とでも言えるんですが、調べてみたらこれは結構ガチでした。 「オウム 阪神大震災」 でググってみると、それらしいネタがけっこう出て来たりしたりします。 実際のところ、占いが得意なオウム信者がそんなようなことを言って、麻原くんはただ 「神戸に地震が来るんだね。」 とオーム返しをしただけといういうのが実情のようですが、当たっちまったぜ、おいっ! どうすんだよ!? 本人達も、さぞやビビっちゃったに違いありません。 ソ連が作った地震兵器がどうのこうのとも言ってるので、せっかく当たった予言も 『ムー』 並みに胡散臭くなっちゃったりしているんですが、水中クンバカは15秒だし、選挙は1783票だし、うちの尊師って、実はぜんぜん大したことなくね? そう疑問を持ち始めていた信者も、これを機会に少しは見直したりしたのかも知れません。 で、麻原くんはこの地震ネタ以外にも、1月1日の時点でさまざまな “大予言1995” を世の中に発信しているんですが、まず手始めに政治の分野では 「選挙で自民党が大勝するっ!」 …と。 ほぉ。 当時の首相は社会党の村山クンで、阪神大震災の際、自衛隊の派遣を渋ったりして問題になっていた気がするんですが、自社さきがけ連立政権という、今では考えられない組み合わせでしたよね。新党さきがけって、武村ナントカ君くらいしか記憶に残っていなかったんですが、鳩山由紀夫とか、菅直人とか、前原誠司とか、玄葉光一郎とか、枝野幸男なんかがいた党なんですな。 で、その年の選挙はどうだったのかというと、比例区、選挙区共に小沢一郎クン率いる新進党が自民党より多くの得票を得るという結果に終わった模様です。UFO党は伸び悩みました。 で、自民党も決して 「大勝」 とはいえなくて、尊師、駄目じゃん! どうして彼がそんな正しくない予言をしちゃったのかというと、どうやら小沢クンはオウムと敵対していたようで、あんな奴らを選挙に勝たせてはいかんっ! そんな私怨が絡んで、冷静な判断を下せなくなっていた。 そういう事情があったみたいです。予言というか、単なる個人的な願望を述べていただけなんですなー。 で、経済の分野はどうなのかというと、「1ドル100円を挟んだ展開から、80円台まで円高が加速するっ!」 …と。 鳩山クンや菅クンが天下を取った時代には、そんな感じになっちゃったんですが、じゃ、1995年の実情はどうだったのかというと、おお、4月19日に史上最高値79円75銭という、当時としては記録的な円高を記録してるやんっ! ショーコー、凄ぇぇぇ! クンバカと政治は駄目でも、経済には強ぇぇぇ! で、専門の宗教分野に関しては言ってることが難し過ぎて理解不能なので軽く読み飛ばすとして、あとはえーと、ショーコーくん、犯罪についても語っておりますな。むしろ、こっちのほうが 「専門」 と言えそうなんですが、エゴの増大、イコール、仇 (あだ) をなすものに対しては何をやってもいいんだ、あるいは仇をなすものに対しては一定の暴力が許されるというマスコミの風潮、このマスコミの風潮によって個人主義の徹底がなされ、そして暴力が増大するのである。 そのようにマスコミ批判を繰り広げたりしております。 「お前が言うなぁぁぁぁ!」 誰もがそうツッコミを入れたに違いありません。

 そしてショーコーくんは自分達の未来についても予言しております。 「 95年は、社会的に見ても、世界的に見ても、非常に不安定な時代を迎えるわけだが、オウム真理教にとっては逆に外的な圧力は弱められ、大発展の年になるはずであるっ!」 …と。 さ、年表をもう一度見直してみましょう。 1995年3月20日、地下鉄サリン事件。 3月22日、上九一色村など全国の教団施設25箇所を強制捜査。 4月8日、林郁夫が逮捕される。 4月23日、村井秀夫刺殺事件。 5月16日、麻原彰晃が殺人容疑で逮捕される。 ………。 全部で359ページくらいのこの本は、34ページに書かれたこの予言の大ハズレによって、続きを読む必要性がまったく無くなったと言えそうですが、そのすぐ後の 「東洋と西洋のすべての叡智を温存する団体に」 というところには、なかなか興味深い記述があったりします。 西洋文明、例えば、例を一つ挙げるならば、化学があるわけだが、この化学の研究はまさに大量殺人のために使われる。 (中略) しかし東洋の叡智というものは、相手を大量に殺戮するような方向には向かわない。したがって、力関係において、完全に西洋文明が優位に立ち、そして東洋の叡智が滅ぶ。 確かに滅んじゃいましたよね、東洋の叡智。 というか、自分達で滅ぼしちゃったんですが、 「必ず戦いが起きる。そして必ず大量の殺戮が起きるっ!」  そう断言しちゃったものの、なかなか起こりそうにもないので、じゃ、自分達で起こしちゃう? そう、浅はかに考えちゃったんでしょうな、麻原しょこたん。 で、その後、本の中では例の1月8日のラジオ放送がかなり詳しく紹介されることになるんですが、登場人物は尊師のほか、聖者マンジュシュリー・ミトラ正大師と、愛欲天メッターベーサッジャパンディタ師。 “愛欲天” って、何だかめっちゃ俗っぽい称号だったりするんですが、メッターベーサッジャパンディタ師って、こういうホーリーネームを間違えずにちゃんと正しく噛まずに言えたりしたんですかね、この人たち。それならそれで、なかなかの才能の持ち主だと思わずにはいられませんが、で、その他2人、佐藤と高橋というめっちゃ普通の名前の人も登場します。 で、中身のほうはというと、ほぼ全文、読むのが苦痛以外の何物でもない無駄にマニアックな占星術ネタで占められているんですが、最後のほうになってようやく日本の地震の話が出て来ました。 高橋クンいわく、「 95年の9月10日から9月16日、このころ日本で核絡みの地震が起きるっ!」 …と。 ハズレてるじゃん、高橋っ! で、尊師いわく、 「あともう一つ、4月15日にも起きるんだよね。」 …と。 駄目じゃん、アンタも! ま、その後、尊師に 「高橋君、地震の場所はどうかな?」 と聞かれて 「神戸のあたりに危ない地点があると出ました。」 と答えているのは、高橋くん、素直に凄ぇぇぇ! …なんですが、当時は神戸で地震が起きるなんて、あまり誰も考えていませんでしたからね。 ただ、東京に直下型の地震が来るとするなら9月16日が怪しいとかも言っていて、阪神大震災を完璧に予言したと言い切るには無理がある気がしないでもなくて、ま、実情はこんなものなんでしょうなぁ。一瞬でも、オウムの予知能力って、けっこうガチだったとか!? そう思ってしまった自分を恥じるしかありません。

 で、その後、 「 5月には僕が逮捕されちゃうんだよね。」 と言った決定的な予言が出されることもなく、この95年は何となく不作の年っぽいので、タイ米を大量に買い込んで缶詰でも作ろうかと思っている。 そんな暢気な発言をしているショーコー君でありますが、で、続いては第2章。 ここでは1994年12月4日のラジオ放送の内容が紹介されております。 何のことはない、基本的にオウム放送を活字にしただけのものなんですな、この本。 ちなみに、この回の出演者は尊師と聖者マンジュシュリー・ミトラ正大師のほか、ボーディサットヴァ・ヴァジラパーニ師長と、聖者ティローパ正悟師。 大物ですよね、ティローパ。 聞いたことのあるホーリーネームだと思ったら、早川紀代秀なんすな。 基本、小物ほど嫌がらせとしか思えないような無駄にクソ長いホーリーネームを与えられる傾向があるようですが、で、放送の中身のほうはというと、まともに読む気はとうの昔に失せてしまっているので、割愛。 ということで、第3章。 ここでは尊師の過去の予言のうち、見事に “的中” したものが簡潔にまとめられているので、まだ見れるレベルだったりするんですが、 “的中” と言っても、普通に考えれば誰でも予測が付くような経済や政治の大まかな傾向だったり、 「しばらくの間、暑さに気をつけなくてはね。」 といったどうでもいい世間話だったりするし、87年の時点で 「五年後くらいにオウム真理教は真理だと定評が立つだろう。」 とか言ってたりするので今ひとつアレだったりするんですが、5年後といえば1992年。 2年前の選挙での惨敗を経て、オウムはカスだという定評が不動のものとなったのが実情だしー。 で、第4章の 『日出ずる国の行方』 に書かれている予言のあまりの当たってなさ具合には思わず目を背けたくなる程ですが、うーん、酷ぇ。マジで酷ぇ。想像以上に酷ぇぇぇ。。。 こんなオッサンに騙されて洗脳されて、結果的に刺し殺されちゃった聖者マンジュシュリー・ミトラ正大師がちょっと哀れに思えてしまうレベル。 麻原を踏みつけてその上に立って、彼の暴走を止められる幹部さえいれば、オウムも立ち直ることが出来たのかも知れませんが、教団内で “踏み台ショーコー運動” が起こらなかったのが彼らにとっての最大の不幸だったと言えるかも知れません。

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(´Д`)つ┃

 僕にはショーコーの犠牲になった人たちに焼香をあげることくらいしか出来ませんが、心からご冥福をお祈りして、今日の話はおしまい。

 ということで今日はアーマッド・ジャマルなんですが、この週末、僕はちょっぴり体調不良でありました。 金曜日に雨に打たれながら現場を監督したのが災いしたのか、微妙に風邪をひいちゃったような気が? ちょっと寒気がするくらいで熱もないんですが、腸の調子が超悪くて、めっちゃ食欲不振。 今から20年ほど前に鈴蘭高原というところにスキーに行った際、お昼に 「手羽先一郎」 というのを食ったら胃がどーんとして、しばらく何も食えなくなっちゃったんですが、あの時以来の消化系不良でありました。 土曜日はゆっくりお休みしたかったんですが、監督業務が入っていたので、一日、外で寒風にさらされながら過ごし、で、日曜日は大事を取ってずっと布団で寝ていることにしました。 衝動買いしちゃったタブレットパソコンで何とか原稿を書いてみたんですが、さすがにちょっと限界を感じたので、後半は月曜日以降にさせて頂こうと。 とまあそんなことで今日に至るんですが、もう大丈夫です。何とか回復しました。 もともと一日寝ているほどの症状でもなかったので、軽いサボりのようなものだったんですが、さ、気合を入れ直して適度に頑張りましょう。 ということで 『ポインシアナ・リヴィジテッド』 。 副題として 『アット・ザ・トップ』 みたいなことが書いてあったりするんですが、先週の ジュニア・マンスのやつ も似たようなタイトルでしたよね。 同じ所でのライブなのかと思ったら、この前は “トップ・オブ・ザ・ゲイト” という店で、今回はニューヨークのトップ・クラブ “ヴィレッジ・ゲイト” などに於ける録音。 そういうことみたいです。 トップ・クラブなので 「アット・ザ・トップ」 なんでしょうが、ちなみにこの2つの店は同じ建物にあったそうです。 姉妹店というか兄弟船というか、そういった関係なんですかね? で、ジュニア・マンス同様、今回取り上げるアーマッド・ジャマルという人は、日本での知名度や人気という点では、地味に微妙な感じのするキャラだったりしますよね。 ジャズ名盤ガイドの類いだと 『バット・ノット・フォー・ミー』 が取り上げられるくらい。 後は、独特の間を持たせたスタイルがマイルスに多大なる影響を与えたとか、そんなエピソードが語られるくらい。 じゃ、マイルスみたいな知的でクールなピアノを弾くのかと思ったら、意外と普通に黒っぽかったりもするんですが、うちのサイトではわりと冷遇されていて、今日で3回目の登場ということになります。 最近、わりとマイナーなアルバムまでCD化されるようになって、僕の目にも留まるようになったんですが、で、 『ポインシアナ・リヴィジテッド』 というタイトルはアレです。 昔、 「ポインシアナ」 を弾いたら大当たりしたので、そいつを再演してみました。そういった意味合いがあるんだそうです。 ライブなんですが全部で7曲も入っていて、プチ病み上がりの僕にはちょっとハードかも知れませんが、ま、ぼちぼち聞いてみることにしましょう。

 ということで、1曲目。 歌物ナンバーの 「ハブ・ユー・メット・ミス・ジョーンズ」 。 「ジョーンズ嬢に会ったかい?」 などという邦題が付いているんですが、これを見ると、ジョーンズ嬢にあったかい缶コーヒーを差し入れしたくなりますよね。 いや、コーヒーが好きなのかどうかは知りませんけど。 コーンポタージュ缶とか、おしるこ缶のほうがいいっすかね? ジョーンズ嬢に 「何飲むかい?」 と聞いてからにしたほうがいいんじゃないかい? そう言われると、確かにそんな気もするんですが、で、演奏のほうはと言うと、観客の拍手に続いて、いい感じに無伴奏のピアノ・ソロが出てきて、いかにもライブな気分が高まったりします。 その後、ベース、ドラムスの順に参加者が増えていくあたり、定番中の定番ではありますが、なかなか効果的な演出なのではなかろうかと。 その後、なかなかテーマらしきメロディが出てこないのも “焦らしプレイ” として効果的だし、そもそも僕はジョーンズ嬢がどういう曲だったのか、今ひとつ思い出せなかったりするので、どこまでがテーマで、どこからがアドリブなのか判然としなかったりするんですが、敢えてそういう手法を取っているような気もしますな、ジャマルくん。 途中で他の曲のメロディを引用したりするのもこの人の特徴のようで、いきなり 「ロッキン・イン・リズム」 が顔を出したりするんですが、こういう引用癖は飲尿癖に比べればぜんぜんノーマルなので、観客が引くようなことはありません。 むしろ盛り上がっていて、何より。 で、そうこうするうちに、おしまい。 まずは挨拶代わりに軽く1曲。 そういう位置付けであるようですが、今後の展開に大いに期待が持てるオープニングでありました。

 ということで、次。 アルバム・タイトル曲というか、どうやら目玉曲であるらしい 「ポインシアナ」 。 これはアレです。 関西地方の若妻が、道で汚いものを拾って、お口の中に入れようとしている幼女をたしなめる歌っすよね? 「そんなババちいの、ポインしやな!」 …って、いや、アメリカ人にこのニュアンスが伝わるとは思えないので、もしかしたら違うのかも知れませんが、で、調べてみたらやっぱり違ってました。 赤い花が咲く木の類。 そういったものであるようです。 何となく南国っぽい植物で、そのせいか曲のほうもエキゾチックな風情が漂っていたりするんですが、ジャマルくんはこれをかなり凝ったアレンジで料理しております。どういうふうに凝っているのかというのは、あまり深く考えないようにしたいと思うんですが、というのも今日の朝。 高速道路を走りながらこの曲を聞いていて、原稿をどうやって書こうかと考えていたら、ジャンクションのところで曲がりそこねて、あっ、やべぇ! おかげで変な方向のインターに降りてしまって、30分ほど遅刻しました。しっかりしろ、監督っ! ま、それくらいで済んでよかったんですが、下手すれば事故っちゃう恐れもあるし、これからは何も考えずに生きていくことにしよう。そう心に誓った次第であります。 ま、今は運転中ではないので考え事をしていても何の問題もないんですが、ただ仕事中ではあるので、演奏を聞きながら感想を書くわけにもいかず、記憶を頼りに適当に片付けておこうかと。 で、これはアレです。 まず最初に、短いフレーズをしつこく繰り返すの部 (その1) が登場します。出だしはピアノの無伴奏ソロで、途中からリズムが入ってきて気分が盛り上がるというパターン。 で、その後、テーマの断片のようなものを織り交ぜつつ、アドリブらしきものを繰り広げたり、他の曲を引用したり、短いフレーズをしつこく繰り返すの部 (その2) が出てきたりして、以下、そいつらが混然となって、とっかえひっかえ顔を出したり引っ込んだりしながら、ぐんぐん前に進んで行くという、ま、大体そういった感じのアレだったのではなかろうかと。 ちなみに、引用されている他曲は 「アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー」 なんですが、そいつが元テーマと違和感なく繋がったりするところは、さすがだと思います。 世の中を思い付きだけで生きているワケではなさそうなんですが、わりと知的なキャラであると言えそうではありますな、ジャマル。

 ということで、次。  「ラメント」 。 J.J.ジョンソンに同じ名前の有名曲があるんですが、それとは別のジャマルが作った無名曲のようです。 ま、こっちはこっちでなかなかの佳曲だったりするんですが、で、演奏のほうはアレです。 この上なくビル・エバンスっす。 ワルツっぽい感じのアレなので、余計にソレっぽく思えるのも知れませんが、ジャマルが洗練されたスタイルの持ち主であると評されたりするのも、これなら納得のいくレベル。 わりと長めの演奏なので、終盤はちょっぴり気分がダレる・ホール&ジョン・オーツな感じがしないでもないんですが、とまあそんなことで、次。 仕事も終わり、道も間違えずに無事、家に帰り着いたので、ここからは普通に演奏を聞きながら感想を書くことが出来るんですが、時間とヤル気は皆無に等しいので、さ、頑張りましょう。 4曲目の 「コール・ミー」 はトニー・ハッチという人の作品。 名前からしておそらく 「みなしご」 だとみなしていいと思うんですが、明るくキュートで小粋な小唄。 そんな感じに仕上がっていたりして、親がいなくても前向きに素直に育っているようで、何より。 で、ジャマルはこれを急速調でスインギーに料理しておりまして、これもまた、なにより。 あとはえーと…、次。  「テーマ・フロム・ヴァレー・オブ・ザ・ドールズ」 「人形の谷のテーマ」 っすか? 調べてみたら “Valley of the Dolls” という映画があるみたいで、何故だか 「哀愁の花びら」 という邦題が付いてたりするんですが、基本的には付けたい放題ですからね、邦題って。 原作はジャクリーン・スーザンのベスト・セラー小説 『人形の谷』 のようですが、こっちは凄く素直に訳したんですな。 映画や小説の中身はどうなのか知りませんが、とりあえずテーマ曲は哀愁を帯びたバラードに仕上がっておりまして、ちなみに作曲者はアンドレ・プレビンである模様。 で、ジャマルのプレイも知的リリカルな仕上がりとなっていて、何より。

 ということで、次。  「フランクズ・チューン」 「フランクの曲」 というタイトルが示す通り、フランクの曲っす。 フランクといっても、フランク・フォスターとか、フランク・シナトラとか、フランク永井とか、フランク・フルトソーセージとか、いくつか候補が頭に浮かぶんですが、正解はというと、フランク・ストロージャー。 ほぉ、意外な穴を持ってきましたなー。 かなり幻系に近い白人のアルト奏者っすよね。 僕の知ってる限り、リーダー作は これ 1枚。 ほぉ、懐かしいっすなぁ、ヤーコン。 この、妙に読みにくい青系の壁紙も久しぶりに見た気がするんですが、このアルバムでは 「フランクの曲」 は取り上げられてない模様です。 が、聞いてみたらどこかで聞いたこのがあるメロディだったので、他の誰かが取り上げているのではないかと思われますが、ググってみたらすぐに答えが分かりました。 これ 。 ジャケ絵のデータが半壊状態? ま、ぜんぜん似てないのでこれくらいの見え方のほうが適切なんですが、「レーザー、今なら安いですよ、奥さん!!」 のほうは無駄にクッキリしておりますな。 で、これまたハード・バピッシュな佳曲。 そう、10年くらい前の僕が論じている通り、なかなかの佳曲だったりしております。 やりおるやん、ストロージャー。 で、演奏のほうはというと、ここまで、ほぼジャマルの一人舞台といった感じだったんですが、ここに来てようやく、ベース弾きのジャミル・スリーマンとドラムスのフランク・ガントにも、それなりのソロ・スペースが与えられていて、何より。 ということで、ラストです。  「ハウ・インセンシティヴ」 。 言わずと知れたアントニオ・カルロス・ジョビンの代表作なんっすが、ここでのジャマルはボサノバのボサの字もノバの字も感じさせない超アップ・テンポの4ビートで料理しておりまして、その意外性が意外と悪くありません。こういうのもアリっすなぁ。 ベースとタイコのソロもそれなりにフィーチャーされていて、これでジャミルくんとガントくんも成仏出来るのではないでしょうか。 とまあそんなことで、今日はおしまい♪

【総合評価】

 前半のちょっぴり手の込んだ作風がジャマルくんの持ち味ではないかと思われますが、後半に入ると、テーマ → アドリブ → テーマ → おしまい。 そんな流れがはっきりと分かる、オーソドックスな仕上がりとなっておりました。 で、超保守的な僕としては、そっちのほうが好みかもー? 後半がわりといい感じだったので、全体としてのイメージもよくなって、総合的に評価すると、78点くらい。 ま、よかったんじゃないっすかぁ?


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