【アルバム名】
FANTASTIC (VEE JAY)
【リーダー名】
FRANK STROZIER (1960)
【パーソネル】
BOOKER LITTLE (tp) FRANK STROZIER (as) WYNTON KELLY (p)
PAUL CHAMBERS (b) JIMMY COBB (ds)
【収 録 曲】
W.K.BLUES / A STARLING'S THEME / I DON'T KNOW / WALTZ OF THE DEMONS /
RUNNIN' / OFF SHORE
【内   容】
 寒い夜はやっぱり「おでん」だねっ♪ということで、今日のテーマは『おでん種 あれこれ』。そもそも「おでん」という言葉は「田楽(でんがく)」からきております 。焼いた豆腐やコンニャクに味噌をつけて食べる「田楽豆腐」や「田楽焼き」ですね。 で、日本人というのは何にでも「お」をつけて丁寧語にするのが好きな民族でありまし て、例えば便所だって「お便所」になるし、トイレは「おトイレ」、便器は「お便器」 という具合。となると当然、田楽は「お田楽」、饅頭は「お饅頭」、沖縄名物の“ちん すこう”は「おちんすこう」になるわけですね。この傾向は外車だって例外ではなく、 フェラーリだって「おフェラーリ」になっちゃうわけです。で、日本人というのは何に でも「お」をつけて丁寧語にするのが好きであると同時に、何でも省略して略語にする のも好きな民族なんですよねー。そのため「お田楽」は後半が省略されて「おでん」と なり、同様に「お饅頭」は「おまん」、「おちんすこう」は「おちん」、「おフェラー リ」は「おフェラ」となるわけです。だから「おでん」は漢字で書けば「お田」もしく は「御田」となるわけですが、いきなり
 
 昨日、お田を食べた。
 
という文章に出くわしたりすると、「おたぁ?何それ?」と読み間違えてオタオタ しちゃうのが関の山なので、おでんは平仮名で「おでん」。これでイイと思います。で 、田楽としてカラダの表面に味噌を塗りたくられたコンニャク一派なんですが、あるも のは身を持ち崩して“しらたき”になり、あるものは人肌に温められたあげく、カラダ の真ん中に切れ目を入れられたりしたわけなんですが、一方、当初は味噌を塗るという スタイルだった田楽はやがて味噌で煮込まれるようになり、関東地方へ伝播するにつれ て今度は醤油ベースのツユで煮込まれるようになります。そして現在ではただ単に「お でん」と言えばこの醤油ベースのツユで煮込まれたものを意味するようになり、味噌味 のおでんのほうはわざわざ「味噌おでん」と“味噌”をつけて、ふつうのおでんと区別 するようのが一般的ですね。ちなみにウチのあたりでは“フツーのおでん”のことを「 関東煮」といったりします。かんとう煮。しょうらい、オトナなって“かんとう”にい ったら、ぜったい“かんとう煮”を食べるんだぁ♪とは思いませんでしたが、いや、子 供の頃は関東煮ってあまり好きじゃなかったんですよね。だからもし何かの分野で頑張 って「敢闘賞」というのを貰えることになって、もしその賞品が「関東煮」だったりし たら嫌やなぁ。。。と思っていたわけなんですが、30近くなった頃からだんだん好き になってきたんですけどね。で、コドモの頃からおでん種の中でも“魚肉練り製品”だ けは大好きでありまして、今でも“魚ねり”は最後まで楽しみにとっておくことにして おります。
 
 で、先日、某ぎゃる系読者からいただいた「おでん種せっと(ツユつき♪)」は まさに“魚ねり”のオンパレードでありまして、見た瞬間、嬉しくって思わず小躍りし ちゃいましたね。シアワセとはこのことかぁ。。。と、しみじみ魚肉練り製品からはみ 出しているイカの足をカジったわけですが、同時にいただいた「津軽らーめん」という のもたいへん美味でした。ところでこの「津軽らーめん」というの、僕は寡聞にして知 らなかったんですが、日本におけるラーメンの元祖ではないか?という説もあるみたい です。魚介類のダシをベースにした水産系の和風スープと細打ちの“ちぢれ麺”が特徴 のようですが、この“ちぢれ麺のちぢれ具合”がハンパじゃありませんで。ウチのよう な健全系のサイトでこのような例えが適切であるかどうか分かりませんが、言うなれば “ドンブリの中の陰毛図”状態。ただ麺によくツユが絡むという点ではこれに勝るもの はなく、とっても美味しくいただきました。ラーメンというより“中華そば”という感 じですね。
で、おでん、ラーメンときて、ここで問題になってくるのがオマケに貰った「やー こん・ぜりー」。覚えてますか?やーこん。一時期この塩通でも“どう考えてもウンコ と間違えられてしまうウコン”と共に話題になったことがありますが、
 
  ヤーコン ヤーコン ヤー今日は♪
 
という歌もありましたよね。タイトルはずばり「ヤーコンでこんにちわ」。そのま んまですね。で、川崎市在住のビクター歌手・根本美恵子さんはこの歌のミリオン・ヒ ットにより紅白出場の話も出たようなんですが、「公共放送に魂を売りたくない。」と いう理由で辞退したそうであります。偉いぞネモト、それでこそ男や!で、問題の「や ーこん・ぜりー」なんですが、とりあえず左から光をあてて撮影してみました。パッケ ージの色は梶井基次郎の心をとらえたレモンイエローでありまして、ただ“ぎゃるのハ ート♪”をGETするには今ひとつオシャレ感に欠けるデザインなのが残念ですね。で 、中身のほうもレモンイエローをしておりまして、普通のゼリーに比べて汁気が多いよ うに思われましたので、とりあえずナナメに傾けて見ました。その結果「まあまあ、フ ツーのゼリーやな。」という感触を得られるに至ったわけなんですが、いくら“やーこ ん”などというセンシティブな名前がつけられているとはいえ、相手はイモですからね ぇ。トロロ芋にコンニャクを混ぜてゼリーにでっちあげたような面妖なシロモノになっ ていることが懸念されるわけでありまして。ただ、救いとしては「ヤーコンでこんにち は!」(作詞:根本美恵子 作曲:吉川金一 歌:根本美恵子)の最後に歌われている
 
 ヤーコン ヤーコン ヤー今日は!
 ヤーコン ヤーコン ヤー今日は!
 梨の味する 不思議なおいも
 
というところでありまして、美恵子ちゃんが嘘つきでない限り、「やーこん・ぜり ー」は梨味のゼリーということになります。それなら別に恐れることはありませんよね 。ということで、とりあえずパッケージの説明を読んでみましょうね。『アンデスの不 思議なおイモ・ヤーコンゼリー』というのがこの商品のフルネームであるようです。一 個でりんご約半分のカロリー(52kcal)とあって、天然のフラクトオリゴ糖とポ リフェノールが豊富なヤーコンのするおろしゼリー。甘みをおさえた、おなかと体にや さしいゼリーです。という説明があります。「おなかにやさしい」のはイイですなぁ。 このところ、ちょっぴり下痢気味だしぃ。で、原材料のところを見ると
 
  ヤーコン、フラクトオリゴ糖シロップ、レモン果汁、ゲル化剤(こんにゃく、 寒天)
 
などと書いてあり、味をととのえるにレモン果汁、ゲル化するのにコンニャクの力 を借りているようです。やはりヤーコンだけでゼリーにするのは無理があったんだね。 。。という裏事情が垣間見えるわけですが、販売者は「癒しのネットワーク・ヤーコン 友の会 石黒つや子」となっております。美恵子によって応援されたヤーコンは、つい に“つや子”の手によって商品化されたわけでありますな。ではさっそく食べてみまし ょう。
 
 ・・・・・。
 
 @ さ、本日はフランク・ストロージャーです。しかしフランクくん、しばらく 見ないうちに顔付きが変わりましたなぁ。…って、アンタの絵がヘタなだけやん。
 
  ・なに駄目か?  やっぱり不満か? ストローじゃ
 
  > せめて蛍光ペンでぇ。。。
 
(通釈)ホテルで食べようと思って家からペヤングを持っていったが、箸を忘れて しまった。しかたなくストローで食べてみたが、やっぱり駄目だった。
 
ヘニャっと折れちゃいますからねぇ、ストローじゃ。で、フランク・ストロージャ ー。先日、東海林さだおを『猫めしの丸かじり』という本を読んでいたら「口惜しい。 ヤックンに石ぶつけるー。」という一文が出てきて、それが妙に気に入ってしまったん ですが、この『ファンタスティック』というアルバムのライナーはヤックンが担当して おります。で、ヤックンはストロージャーのことを「白面の貴公子」と称しております が、成るほど、うまいこと言うもんですなぁ。で、このヴィージェイ盤の『ファンタス ティック』はそんなストロージャーの“とても素晴らしい”初リーダー作なんですが、 辞書で“fantastic”を引くと“ふうがわりな”“へんな”“異様な”“ばかげた”“ 空想的な”という意味もあるんですね。
で、フラ・ストちゃんの演奏というのは同じ白人アルトでもアート・ペッパーのよ うに流麗ではなく、リー・コニッツのようにストイックでもなく、ストイコビッチのよ うにストイコがビッチなわけでもなく、ポール・デスモントのように甘美でなく、藤山 のように寛美でもないという、要するにワケのわからんスタイルでありまして、“ふう がわりな”という意味での“fantastic”というタイトルは、けっこうイイ線いってる んじゃないかと思います。ンなことで、では1曲目から聞いてみましょう。
 
 「W.K.ブルース」は調子のいいファンキー・ブルースです。ヤックンがそう書 いているからにはもう間違いないわけでりまして、ちなみにタイトルの“W.K.”とい うのは作曲者のウイントン・ケリーのことでありましょう。僕がこのアルバムを購入し ようと思うに至った動機の80%くらいはケリー、チェンバース、ジミー・コブという リズム隊とブッカー・リトルの参加にあったわけですが、ケリーとリトルというのはス タイル的にちょっぴり異質ですよね?で、このケリー作のブルースも単純なリフ・ナン バーながら、リトルやストロージャーの資質を反映してか“アーシーさ”はわりと希薄 であります。ケリーのコンピングはところどころファンキーですけんどね。で、ソロ先 発は仏花リトル。出だしの部分がちょっぴりマイルスとモーガンの中間風で、おっ?と か思ってるうちにいつものリトルに戻ってまいります。で、続くストロージャーのソロ が、かなりヘン。。。ヤックンは絶賛しておりますけどね。ストロジャーにこんな「と ぐろを巻くような一面があったとは。」と書いてありますが、あ、ストロージャーと伸 ばさないのが正解なんですな。とか書いてるうちに2曲目。「ア・スターリングス・シ ーム」はストロージャーのオリジナル。あ、既に「ストロージャー」で単語登録しちゃ ってあるので“伸ばすバージョン”で御勘弁くださいね。で、これがなかなかメロディ アスでハード・バピッシュな名曲なんですよね。かなり複雑な構成のような気もするん ですが、ラテン・リズムを交えるなど、コムツカシサを感じさせない作りとなっており ます。ソロ先発はストロージャーでありますが、1曲目に比べると幾分オーソドックス な吹きっぷりとなっておりますな。「ちょっと無理しすぎちゃったカナ?」と自己批判 した結果でありましょうが、パーカー派とは一線を画したソロとなっております。よく も悪くも60年代的とでも申しましょうか。と孟子も申しておりましたが、孔子には是 非、格子戸をくぐり抜けて夕焼けの空を見あげて欲しいものですなぁ。見あげて貰って 、どうなるもんでもないですけどね。ソロ2番手のリトルはいつものリトル、ソロ3番 手のケリーはいつものケリーで、お世辞にも相性がいいとは言いかねますが、それに輪 をかけるチェンバースのアルコ・ソロに思わず落涙、桜木ルイ。。。
 
 3曲目「アイ・ドント・ノウ」もストロージャーのオリジナル。ちょっぴりアー シーサを感じさせるナンバーですな。先発する余裕しゃくしゃくたるブッカー・リトル のトランペット・ソロうんぬんと、某・辛口系マスターが買いておりますが、リトルを 褒めたりするですな、ヤックンも。続くストロジャーのソロがまたいい。このトラック はテンポが快適なのだ。やる方にも聴く方にも。と、ヤックンの“のだ文体”も冴え渡 っているのだ。で、ここでは曲調が曲調だけに、ケリーのソロがいい味を出しておりま すね。
 
 4曲目「ワルツ・オブ・ザ・デーモンズ」。どこかでお聴きになったメロディで あろう。プレステージ盤『エリック・ドルフィー&ブッカー・リトル・メモリアル・ア ルバム』の全B面を占める「ブッカーズ・ワルツ」と同曲である。と、CDの日本語ラ イナーにありますが、個人的には「タイム盤に入ってた曲」という印象が強いですね。 えーと、そっちでは「ザ・グランド・ヴァルス」となっておりますね。そういえば先程 、リトルとケリーの相性はどうか・・・というようなことを書きましたが、よく考えた らタイム盤の『ブッカー・リトル』でも何曲か共演してますよね。前言撤回。
で、タイム盤の「偉大なヴァルス」(←“VALSE”は“WALTZ”と同義で しょう。ロリンズに“ヴァルス・ホット”=「熱いワルツ」という曲があるしぃ。)が 、いかにもリトルらしい“病弱的な哀感”を湛えていたのに対し、ストロージャー版は 気持ち明るめ。テンポも速めですしね。リトルもストぴょんも伸びやかに吹いておりま すなぁ。試しにヤックンご指摘のドルフィー&リトルの『メモリアル』も聴いてみまし たが、成るほど、同じ曲ですな。ヤックン、嘘つかない。こちらは更にハイ・テンポで 、ドルフィーはバスクラを吹いております。興味のある人は3曲聴き比べてみてくださ いね。
 
 興味のない人は5曲目の「ランニン」へ。忍者ハットリ君?それは「ニンニン」 。後半の「ニン」しか合ってませんね。ストロージャーのオリジナルで、タイトルどお り急速調の駆け抜けるようなナンバーです。テンポが速いせいか、ストロージャーのソ ロはこの曲が一番ストレートで分かりやすいですな。で、続くリトルのソロも圧巻。こ んなに“何にも考えてなさそうで楽しげなリトル”というのも珍しいです。思わずジミ ー・コブだって頑張っちゃいますよね。はいラスト。「オフ・ショア」はレオ・ダイア モンドという人が書いた有名な南海の小唄らしいです。南海の小唄だけに難解ではなく 、何回も聴きたくなるようなナンバーである。とは、さしものヤックンも書いておりま すが、ヘロヘロ系だとばかり思っていたストロぴょんのトーンが、前曲あたりから急に 力強くなっているのはどういうわけでしょう?個人的には「強いストロージャー」のほ うが好きですけどね。で、続くリトルのソロはヤックンも指摘しているとおり、あまり 曲調とはマッチしておりませんな。ケリーはまあまあですかね?
 
 ということで、1曲目のストロージャーのソロが今ひとつだったので、2曲目以 降はほとんど真面目に聴いたことがなかったんですが、改めて聴いてみると思ったより も悪くありませんでした。という1枚でした。あ、ヤーコンゼリーなんですが、思った よりも芋ではなく、レモン汁の味と「マンナンライフの蒟蒻畑」風の食感と(←あそこ までは固くないけど)、若干の「すりおろしたイモ」の舌触りのある、普通のおいしい ゼリーでした。確かに「おなかにやさし」そうな感じでありまして、これでもうしばら くは下痢しらずでありましょう。めでたいことです。


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