幹事クリタのコーカイ日誌2009

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12月8日 ● 順調な滑り出しの『坂の上の雲』。

 注目のNHK新大河ドラマ『坂の上の雲』が第2回まで終わりました。2回と言っても1回の放送が90分(しかもNHKなのでCMなしの正味時間)なので、すでに民放の連続ドラマなら4回分くらいに相当します。密度が濃いし、物語の展開も早いです。ドラマ冒頭に誕生した秋山真之が、2回目ですでに20才くらいになっています。

 僕はかつて原作を読んで、これが司馬遼太郎作品の中では『竜馬がゆく』と並ぶ人気作であることがよくわかりました。前半の青春群像小説部分も、後半の戦争小説部分も、ともに内容が濃く読み応えがあり、しかも司馬作品ならではの面白さとダイナミックさがあります。司馬は生前この作品の映像化を最後まで拒否していました。戦争賛美ととられないように映像化することは難しいとの判断だったと聞いています。

 それが司馬の死後にようやく映像化が許可されたと報じられたのがすでに数年前。その後、脚本担当の野沢尚が自殺して一時は中断。そこからまたNHKが粘り強く制作を続けて、ようやく新大河というカタチで放送にいたったのですから、実に原作ファンとしては長い間待たされたという思いがします。

 キャスティングが発表された時、秋山真之=本木雅弘、秋山好古=阿部寛、正岡子規=香川照之はピッタリだと絶賛しました(こちら)。考えられるベストのキャスティングだと思います。実際にオンエアを見て、僕は自分の印象が間違っていなかったことを再確認しました。3人とも実年齢が役の年齢よりもかなり上回っていますが、明治人は現代人よりもはるかに老成しているので(現代人が幼いとも言える)、実際のイメージではこれくらい年上の俳優が演じてちょうど良いのだろうと思います。

 心配された脚本ですが、野沢尚が原案を書き上げていたものを、脚本諮問委員とか脚本監修というカタチで補って放送しているようです。委員には関川夏央や宮尾登美子なども加わっているので、きちんとチェックされているのでしょう。見ていても違和感は少なく安心です。『天地人』のようなトンデモ脚本だったら怒り狂うところですが、原作に対しても歴史事実に対しても、歴史上の人物に対してもきちんとリスペクトをもって書いていることが感じられます。そのあたり、本当に『天地人』は酷かったですからね。

 演出もまた王道。きちんとお金をかけてチャチにならないように、また『天地人』のように奇を衒ったりもせずに演出されていますし、時代考証もきちんとしているみたいで突っ込み所も少ないので心安らかにドラマに集中できます。ただドラマだから仕方ないのでしょうが、女性がストーリーに絡みすぎの気味はあります。原作は完全に男の物語なので、ドラマに華を添える意味で菅野美穂や松たか子が出ているのでしょうが、あまり出しゃばらないで欲しいという気分です。

 主役3人以外のキャストについては、細かく言えば不満もあります。夏目漱石が小沢征悦って、あんな大柄な西郷隆盛みたいな漱石は信じられません。漱石と言えば小柄で神経質そうなイメージじゃないと。また高橋英樹の児玉源太郎も堂々とし過ぎで、激情家の知謀の人には見えません。何よりこの2人が出てくると『篤姫』のイメージが強すぎます。

 とは言え、トータルに見れば十分に合格点。この調子でどんどんいって欲しいものです。最後に久石譲の音楽も素晴らしいです。歴代大河ドラマと比べても出色かも。さすがという感じです。


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