幹事クリタのコーカイ日誌2009

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12月9日 ● テニスもサックスも登る道は似ている。

 サックスを習い初めて5ヶ月が経ちました。現在は練習曲「ダッタン人の踊り」が終わり、来週からは「ムーン・リバー」を始めます。サックスを始める前から吹きたかった曲なので、いよいよレッスンで吹けるかと思うと楽しみです。そのうち人前で華麗に吹いて、妙齢の女性たちをウットリさせる計画です。

 この5ヶ月を振り返って感じたのは、サックスとテニスの上達の過程というのが実に良く似ているということです。もう本当に驚くほど似ていて、いつも僕は自分のサックスのレベルを「テニスで言うとこの段階だな」と感じながら練習してきました。

 まず最初の一歩。テニスはラケットにボールを当てること。サックスは音を鳴らすことから始まります。全くの素人はボールがラケットに当たって飛んでいく、もしくはサックスを吹いて音が鳴る、それだけで嬉しいものです。繰り返しやっているうちに徐々にできる確率が上がっていき「楽しい」「できた」と思います。この段階では「面白い!」と誰もが感じます。

 次にテニスならコートにボールを入れる、サックスならきちんと常に一定の音を出すという段階になります。テニスはラケットを、サックスは息をコントロールするわけです。これはかなり難しくなります。これまではただラケットを振り回す、もしくはサックスを単に吹くだけで良かったのですが、この段階になるとなかなか自分が思ったようにコントロールできずに、ちょっとイライラし始めます。でも上達して次の段階に入ったことは実感できるので頑張ることはできます。

 これがある程度できるようになると、他の基礎テクニックも学びます。テニスならストローク以外に、ボレー、サーブなどの技術練習をします。サックスならロングトーンに続いてタンギング、スケールの練習です。どちらも次のステップに移行するために必要な技術ですが、これができそうで実はなかなか簡単には上達しません。一応基本を学んだ上で、これらの技術は次のステップで磨いていくことになります。

 その次のステップとは、テニスならゲームをすること、サックスなら曲を吹くことです。いよいよここからが本番です。ゲームも曲もこれまでの基本練習に比べたらずっと楽しいです。もう基本なんてかったるくてやってられないくらいです。いよいよ自分もこのレベルに達したかと思うと感動するほどです。これが本当のテニス、もしくはサックスだと思います。

 しかし最初はゲームをするだけ、曲を吹くだけで楽しかったのですが、すぐに壁にぶち当たります。テニスならいくらゲームをしても勝てません。サックスならちっとも上手に曲が吹けません。基礎の技術がまだまだ不完全なのに、それを組み合わせてプレイするゲームや曲がちゃんとできるはずもないのです。

 しかもどちらも「相手」がいます。テニスの場合は自分のプレーを邪魔するように、意地悪するようにボールを散らす相手がいます。これまでのようにコーチが易しい打ちやすいボールを出してくれるのとは訳が違います。サックスの場合はリズムをきちんと合わせることが必要になります。これまでは適当に吹いていても何とかなりましたが、他の楽器と合わせるためには、リズムを正しく刻まなくてはなりません。しかし、まだスケールもタンギングもちゃんとできないのに、リズムに合わせて正確に吹くなんてうまくできるはずもありません。

 そして初めて自分が下手なために迷惑をかける、ということをこの段階で知ります。テニスの場合は大抵ダブルスですから、自分のせいで負けてしまいペアに申し訳ないと卑屈にさえなります。サックスなら一緒に演奏している人の足を引っ張ってしまい、これもまた身の置き所がなくなります。ここにきてテニスもサックスも基本を繰り返し練習することの大切さを思い知るわけです。

 そしてテニスならこのあたりで上達が止まったと感じ、ちょっとイヤになります。初心者が1年くらいテニスをしてギブアップするのは大抵この段階です。「ちっとも上手くならない」「負けると悔しい」「ペアに申し訳ない」「楽しくない」と思ってやめてしまう人が多いのです。でも、実はここが我慢のしどころ。上達していないわけではなく、上達が見えにくくなっているだけ。ゲームで勝てないのは相手の方がはるかに上だからで、向こうはこちらのレベルに合わせてゲームをしてくれているから、自分が少々上手くなっても簡単には勝たせてくれません。ただ相手も実は内心「強くなった。うかうかしているとそのうち負けるかも」と思いながらやっているのです。

 だからテニスを始めた人にはいつも「3年我慢してやりなさい」と言います。3年我慢してテニスをすれば、少しは勝てるようにもなるから楽しめるようになります。1年そこそこでやめてしまっては、その1年が全く無駄になってしまいます。みんな「わたしはテニスに向いていない」と言ってやめていきますが、誰だって1年やそこらではそんなものです。向いていないと言えば、プロになるような素質のある人以外は、ほとんどみな向いていません。

 さて、ではこの段階のサックスはどうかと言うと、実は僕にはまだわかりません。曲がまだきちんと楽譜通りに吹けないのですから、テニスで言えばまだゲームをしても全然相手に勝てないレベルです。この先、どれだけ頑張って練習すればある程度道が開けてくるのか、僕にはまだ見えてきていません。ただテニスの上達の過程と同じようなものだとすれば、「なかなか上達しないな」と思いながらも挫けず頑張って練習しているうちに、いつか気づいたら結構上手になっていた、ということになるのかなと考えています。それまで精々楽しみながら練習していこうと思っています。


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