幹事クリタのコーカイ日誌2009

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9月16日 ● テニス界の政権交代。

 全米オープン男子シングルス決勝は6連覇を目指す王者フェデラーに、20才の新鋭デルポトロが挑みました。過去に一度もフェデラーに勝ったことがないデルポトロ。グランドスラムで初めての決勝ということを考えても、フェデラーに勝てる要素は少ないと思っていました。全仏であわやというところまでフェデラーに善戦はしていましたが、フェデラーが苦手なクレーならともかく、ハードの全米では敵わないだろうと。

 実際、立ち上がりはフェデラーペース。しかしデルポトロの非凡なところは、2セット目から完全に切り替えてきたところです。フェデラー相手に開き直るというのは簡単なようで、そうそうできることではありません。大抵の相手はここぞのフェデラーの集中力に打ち負かされて自滅の道を辿るのに、デルポトロは自分のテニスに徹して互角の戦いを展開しました。そして逆に切れたのはフェデラー。最終セット先にブレイクを許すと、そのまま押し切られてしまいました。デルポトロの見事な逆転勝ちでした。

 デルポトロは昨年夏にいきなりブレイクしてきた選手です。それまでは有望な若手というだけだったのが、夏に4大会連続でツアー優勝。当時同じように売り出し中だった錦織圭の1才年上のライバルと日本では見なされていました。その後2人は明暗を分けてしまいます。錦織は故障続きなのに対しデルポトロは順調にランキングを上げてきて、今年に入ってロディックと5位争いを展開しながら、徐々に4強に迫ってきていました。

 僕は昨年秋にAIGジャパンオープンでデルポトロを見ました。残念ながらジャパンオープンでは決勝で体調不良のために立ち上がりが悪くベルディフに負けて準優勝に終わりましたが、すでに若手というにはあまりにも風格があって「これは強くなるぞ」というオーラがたっぷり出ていました。ちなみにこの時の女子の優勝者が今回の全米で準優勝した若手ウォズニアキでした。

 それにしても男子テニスは次々と新星が出てきますし、それをガッチリと受け止めるベテラン勢も元気で、新旧対決が実に面白いです。かつて「ニューボール世代」と言われたフェデラー、ロディック、ヒューイット、ハースらがまだまだ元気なのに(サフィンの引退は残念ですが)、ナダルを筆頭に、ジョコビッチ、マレー、デルポトロ、チリッチと次々と若手が上がってきて、その世代間抗争がいまもっとも白熱しています。

 今年ナダルがフェデラーから一時期1位を奪ったように、恐らく来年にはもっと若手が伸びてきて、いよいよ完全な政権交代が起きることでしょう。フェデラー王朝もいまが最後の輝きという気がしますが、その「終わりの始まり」が今大会だったと思います。