今年日本で一番話題のミュージカル『スウィーニー・トッド』を観てきました。殺人理髪師を主人公にしたブラックユーモアあふれるブロードウェーミュージカルを宮本亜門が演出、市村正親、大竹しのぶがＷ主演、共演に武田真治、ソニンなどテレビでもお馴染みの人気俳優を加えての舞台ですから話題になるのも頷けます。

　宮本亜門のミュージカルを観たのは初めてでしたが、切れの良い演出でだれることもなく楽しめました。幕のない舞台での場面転換の巧みさも含めて、演出家にはまず拍手です。主演の市村正親と大竹しのぶ。ともに演技力は抜群。特に大竹しのぶはやはり天才女優ですね。素晴らしい演技で迫力満点。改めて拍手。

　人肉を食べるというグロテスクな話の割には、それほどイヤな感じを受けなかったのは宮本亜門の演出の冴えと、俳優たちのキャラクターでしょうか。主演の２人だけではなく、武田真治や斉藤暁の漂わせるユーモラスな雰囲気も救いになりました。

　拾いモノと言っては何ですが、ソニンが良かったです。特に歌が素直で聞きやすく、アイドルが演じているという印象では全くありません。大竹しのぶが演技の割にやはり歌がイマイチだったので、余計にソニンの歌の素直さ伸びやかさが印象に残りました。と言うか、歌だけは残念ながら全体に物足りなかったですね。演技のレベルに及んでいません。一昨年観た『モーツァルト』の圧倒的な歌の迫力を思うと、それだけはちょっと残念です。

　とは言え、トータルな評価としては十分に楽しめるレベルです。これから大阪、九州と地方公演が続くようですから、チャンスのある方は観に行っても損はないと思います。