幹事クリタのコーカイ日誌2004

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5月19日 ● 誰が彼女をいじめたか。

 皇太子の「雅子の人格・キャリアを否定する動きがある」という発言以来、皇室関係がいろいろと取り沙汰されています。要は雅子妃が外国に行きたいと思っているのに、それよりも男の子を産まなきゃいかんだろう、と宮内庁がストップをかけていて、それが元で雅子妃は体調を崩してしまった、と皇太子が発言したわけです。

 皇族がそういう直接的な不満を言うことがこれまでなかっただけに、今回は前代未聞の大騒ぎになってしまいました。しかも特に発言の主が皇太子だっただけに一層重みが増します。

 今回の騒ぎには幾つかのポイントがあります。まず皇族は意見を言ってはいけないのかということです。彼らだって人間ですから、いろいろな思うこともあり、やりたいこともあります。それを宮内庁に押し込められたら当然不平不満も出てきます。恐らくは一般人よりもはるかにいろいろな我慢を強いられていることは想像に難くありません。

 そして誰でも知っているように、不満というのは口に出すだけでも随分とすっきりするものなのです。皇族はその立場ゆえ滅多なことでは愚痴ひとつ言えないという状態がさらに不満を募らせてストレスになっているのでしょう。

 僕はもっと皇族が自由に発言できるような雰囲気を醸成することが大事だと思います。もちろん政治的な発言は、それを利用しようという人々によって増幅されてしまいますから慎重にあって欲しいとは思いますが、ある程度は皇族にも自分の意見や気持ちを自由に発言させる機会は設けた方が良いと思いますし、それによって国民と遊離しがちな皇室が身近になることでしょう。

 次に、皇族の公務とは何か、ということです。そもそも雅子妃は外交官でした。彼女を皇太子妃に迎えた以上、皇室外交の新しい展開を期待したはずですし、彼女自身そのつもりで外交官を辞めて皇室に入ったのだと思います。ところが実際には結婚して11年、外国訪問はわずか5回。宮内庁から言われるのはひたすら「子を作れ」です。それでは「人格・キャリアの否定」と皇太子夫妻が不満を抱いても仕方ありません。現代社会で結婚したキャリア女性に「子作り」以外の役割を否定したら人権侵害で訴えられかねません。

 それもこれも、結局皇室典範に天皇は男子でなければならないと定められているからいけないわけです。前から議論されているように、そろそろ女性天皇を認めるよう皇室典範の改正に真剣に取り組む時期が来ていると思います。

 雅子妃がこのままでは子どもを作るのが難しいのなら、期待は秋篠宮しかありません。仮に秋篠宮のところが3人目に挑戦して首尾良く男の子が産まれたとします。それで向こう数十年は大丈夫ですが、しかしその子に必ずまた男の子が産まれるとは限らないのです。「男子に限る」というのは、結局いつか破綻が起きることが目に見えているルールなのです。

 そもそも過去には数例のあった女性天皇を認めず、明治以降天皇は男子に限ると定めたのは、戦前の天皇が陸海空軍の統帥権を持っていたから。すなわち男しか軍人になれない時代に、それを統べる大元帥が女性というわけにはいかないというのが理由です。

 だったら平和憲法下「象徴天皇」になった戦後日本では、女性天皇でも何の不都合もないどころか、むしろ女性天皇の方が「象徴」としては相応しいとすら言えるのではないかと思います。

 女性天皇について反対している人たちは女帝よりも「男系」「女系」にこだわっているようですが(女性天皇の子どもが天皇になった例はない、すなわち女系天皇は過去にない)、子どもとの血のつながりの濃さという意味では、男よりも自らの胎内で子を育てる女の方が濃いのではないかと思います。だからいっそ基本的に天皇は女性とし、女系天皇を優先するとした方が良いのではないでしょうか?

 最後に。このまま皇室典範を改正しなければ先ほど述べたように恐らく天皇制は維持できず崩壊してしまいます。僕は以前にも書いたように天皇制は逆の人権侵害であると考えていますので、このまま天皇制が崩壊するのも悪くはないと思っていますが、なし崩しになくなると言うわけにもいかないでしょう。天皇制を存続させるにしろ廃止するにしろ、きちんと議論を積み重ねていかなければなりません。跡継ぎがいないからやめます、なんてわけにはいかないのです。

 ところが熱心な「男系天皇至上主義者」(なんて言葉があるのかどうか知りませんが)は、実は秘かに「ダメなら天皇制など潰してしまえ」なんて思っているのかも、と邪推したくなるほどです。雅子妃はそんな頑固な男性優位主義者の犠牲になっているのだとしたら、実に気の毒です。ダイアナ妃のように離婚して自由になるなんてストーリーは、日本の皇室ではあり得ないでしょうしねぇ。


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