幹事クリタのコーカイ日誌2002

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9月12日 ● プロっぽい感想。

 コピーライターのMっちゃんはかつて夏休みの宿題の読書感想文に一言「よかった」と書いて出して怒られたそうです。当たり前です。ただ本人は「ああ、やっぱり怒られたか」と思っただけで、それ以上なんとも感じなかったそうですから、さすがMっちゃんです。彼にしてみれば宿題を出しただけでもマシらしく、だいたい普段から半分くらいしか宿題は出さなかったというのですから大物です。

 そんなMっちゃんですから、よくテレビや映画、CMなどを見て感想を言うのですが、大抵は「凄かったよ」「面白かった」「絶対感動するから」などという単純な表現しかありません。どう面白かったのか、何を感動したのか聞いてもちゃんと答えられないことが多く、それでもコピーライターかい!と思わず突っ込みを入れてしまいます。特に本業であるCMについての感想までもが「なんか面白いと思わない?」なんて小学生並みのレベルですから呆れてしまいます。

 そんな素人同然のMっちゃんに比べて、CMプランナーのY田さんはCMを見ることが趣味の人ですから、やたらとマニアックでプロっぽい(って、プロなんですけど)CMの感想を言います。

 先日Y田さんがポツリと「マツナナの生茶のCMは全部あおりで撮っているのが凄い」と言いました。松嶋菜々子が「だって生茶はナマだから」とのたまうCMです。木の上に登っていたり、野球のボールを拾って「るん!」とか叫ぶ妙なCMで、旬のマツナナでなければ成り立たないよなぁ、みたいな感想は僕も持っていました。

 しかし、このCMが基本的に下からずっと彼女を撮っているから凄い、というのはさすがCM作りのプロらしい感想です。言われてみれば女優をあおって撮ることは滅多にありません。女性を綺麗に、特に可愛く撮るなら、やや上からというのが基本です。松浦亜弥なんて、何を見てもほとんど同じような角度からしか撮っていません。鼻の穴が見えるような角度から撮るなんて嫌がる女優が大半だと思います。

 ところが生茶のCMはひたすら下から下からあおって撮っています。それでいてちゃんと可愛く撮れているのですから、スタッフの腕の良さと松嶋の魅力のなせる業、ということになります。なるほどね、と僕たちは感動しました。そういう視点からCMを見ることはなかったからです。

 もっとも、それがわかったからと言って、それで面白いCMが作れるかというと、それはまた別の話なんですけどね。どんな世界でもクリエーターやプレーヤーと評論家は別種の才能です。理論と実践は別と言ってもいいでしょう。いくら優れた選手でも評論家としてはダメな場合はいくらでもあるし、どんなに鋭い批評をしているからと言っても、ではその批評に値するような創作ができるかというと、それもまた別です。そして、それで良いのです。ま、Mっちゃんのようにあんまりわかっていないのも問題だとは思いますけどね。


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