MORE STUDY IN BROWN (EMARCY)

CLIFFORD BROWN & MAX ROACH (1954/8/3,6 1955/2/23,24 1956/1/4,2/17)

MORE STUDY IN BROWN


【パーソネル】

CLIFFORD BROWN (tp) MAX ROACH (ds) RICHIE POWELL (p)
SONNY ROLLINS (ts) <#1-3> HAROLD LAND (ts) <#4-8> GEORGE MORROW (b)

【収録曲】

(01-03) I'LL REMEMBER APRIL / JUNIOR'S ARRIVAL / FLOSSIE LOU
(04-06) MILDAMA / JORDU / THESE FOOLISH THINGS
(07-08) LANDS END / THE BLUES WALK

【解説】 (2009年06月21日更新)

 前々回 、車載専用の音楽プレイヤーについてレビューを書いたんですが、もしかしてアレは無駄な買い物だったのではないか?…という気がしてきました。 というのもですね、カーナビが壊れたんですよね。 いや、完全に壊れたというわけではないんですが、いつ死んでも不思議ではない、かなり重篤な状況に陥っております。 具体的に言うと、CDを読み込まなくなっちゃいました。 その昔、沖田浩之クンが、ABC、ABC、ABCD、E気持ち♪…という歌を歌っておりましたが、CDが駄目だとE気持ちになれなくて、とても困ります。 おそらくディスクの汚れが原因であるものと思われるので取り出して掃除をしてみたんですが、駄目でした。 となると、ピックアップレンズの汚れが考えられるのでクリーニングを実施してみたんですが、やはり駄目でした。CDのデータをうまく読み取れる時もあるんですが、 「んひぃぃぃ、んひぃぃぃ、んひぃぃぃ…」 と、ひきつけを起こしたような音がして、そこから先の行程に一歩も進まなくなることがよくあります。いつも通っている道なら大丈夫なんですが、たまによく知らない道を走ったりすると、たちまち調子が悪くなります。歳をとって、新しい道を切り開こうとするチャレンジ精神が薄れてきたんですかね? 「いつもの道でいいのにぃ。。。」 とダダをこねて、ナビを拒否するようになります。 こういう場合は張り倒すに限りますよね。 ばちーん!…横っ面を叩いてやると、びっくりしたように静かになって、その後、 「きゅぴきゅぴきゅぴ…」 と、ぶつくさ言いながらもデータを読み込むようになるんですが、いやあ、世の中やっぱり、暴力ですなー。

 が、このバイオレンス手法も次第に通用しなくなってきました。このところ、叩いてもちっとも言うことを聞かなくなってきたんですよね。 むしろ、不貞腐れて余計に状況が悪化することも少なくないんですが、やはり子供のしつけとかでも、体罰の効果があるのは最初のうちだけなんですなー。 となると、心を入れ替えてこれからは優しく接するか、あるいは、いっそのことSMに走るか、選ぶ道は2つにひとつしか無いんですが、いちいち痛めつけて悦ばせてやらないと道案内してくれないナビというのも、ちょっと面倒な話でありますなぁ。 “ナビ子” という名前を付けて可愛がってきた大切な存在なんですが、そろそろ決断の時が迫っているのかも知れません。 とまあそんなことで、新しいカーナビを買うことにしました。  “ナビ子” とのお別れはちょっと寂しいんですが、僕が彼女と出会ったのはいつのことでしたかね? このコーナーでネタにした覚えがあるので、1998年以降であることは確かなんですが、ちょっと探してみますかね? どういう書き出しだったのか、だいたいの見当が付くんですが、おそらく

 ・ 新しいカーナビを買いました。

 ・ 君はカーナビが好きかな? 僕はですね、まあまあです。どちらかというとカーナビよりも鴨鍋のほうが好きだったりするんですが、美味しいですよね、鴨鍋。


 …の、どちらかのパターンだと思います。 が、鴨鍋ネタを書いた記憶はないので、おそらく前者でしょう。 ということで、 「新しいカーナビを買いました」 でググってみたんですが、さすがにそれでは埒が明かないので、 「パーソネル」 というキーワードを追加してみることにしました。 お、 これ ですな。案の定でした。 ここ を見ると、“jazz giant vol.19” の開始は 2001/09/23 となっているので、2001年の終わりか、2002年の初め頃に書いたものと思われます。 あ、大晦日に便所が詰まったのか、おっさんがトイレのすっぽんを買っていた。…という話が出てくるので、2001年12月31日に書かれたものでありますな、こりゃ。 ということは、ナビ子の購入は 2001年12月だと推測されます。 あれから7年半。2人で一緒に色んなところに行きました。たくさん楽しい思い出も作りました。 でも正直、君の声はもう聞き飽きちゃったしぃ。  「この先、左方向です。」 とか、 「目的地に到着しました。ルート案内を終了します。」 とか、いつも同じようなことしか言わないしぃ。 最近ではあまり会話も弾まなくなってきたんですよね。 ちなみに、このナビ子はメニュー設定で “おしゃべり” か “普通” か、好きなキャラを選ぶことが出来るんですが、 “おしゃべり” にすると、 「そろそろ休憩しませんか?」 とか余計なことを言い出して、ただうるさいだけなので、 “普通” にしておりました。御殿場あたりをドライブしていて、生身のギャルに、 「そろそろ休憩しない?そこに “風が運んだ物語” っていう看板が出ているしぃ♪」 とか言われるのは楽しいんですが、所詮、相手はナビですからねー。

 ということで、新しい彼女を金で買うことにしたんですが、今度のはですね、 “ゴリラ” です。 カーナビで、ゴリラというネーミングは、ちょっとどうか?…という気もしたんですが、 価格.com を見ると、売れ筋ランキングでも、注目ランキングでも、満足度ランキングでも、なかなかいい線いってるんですよね、ゴリラちゃん。 ここはひとつ思い切って、売れ筋&注目ナンバーワンの GORILLA NV-SB540DT 最安価格 (税込) : \60,555 、行ってみるぅ?…と、思わずポチりそうになったんですが、すんでのところで思い留まりました。僕の場合、社有車のカローラフィルダーと自家用車のエクストレイルの両方にゴリラを乗せることになるんですが、載せ換え用に車載用取付けキットとか、カーシガーライター接続ケーブルとか、パーキングブレーキ接続ケーブルとかを買って、ついでに外で使う時に備えて予備のリチウムイオン電池を買って、更にはテンキー付きジョイスティックリモコンまでポチっちゃった日には、総額8万円コースになってしまいます。 夏のボーナスを当て込んで奮発してもいいんですが、買った後で 「今年はボーナス出ないよ。」 と言われたらショックなので、 Mini GORILLA NV-SB360DT で我慢することにしました。バッテリー内臓で歩行ナビとしても使えるみたいだし、MP3プレイヤーの機能もついてるみたいだし、FMトランスミッターでその音をラジオに飛ばせるみたいだし、いいぢゃん♪ 前々回レビューした車載専用の音楽プレイヤーがまったく無駄になっちゃうかも知れませんが、それはそれでいいぢゃん♪ 何だか妙に値段が安いので、高いヤツと比べると、いろいろなところに問題があったりするんでしょうが、下手に比較をしたりせずに、最初からこういうものだと思っていれば、これで十分なような気もします。 ということで、えーい、買っちゃえー!

 最安値のところではオプションの品揃えが今ひとつだったので、本体価格 38,984円のところで買いました。オプションは車載用取付けキットとカーシガーライター接続ケーブルと予備電池とリモコンを頼みました。パーキングブレーキ接続ケーブルは車載用取付けキットに付いてくるんですかね? カーシガーライター接続ケーブルのほうにもあるっぽい? もしかして両方買ったらダブっちゃいますかね? 実を言うとこのコード、まったく必用無かったりするようなんですが、というのも、 ここ を見ると、 M2.6×10mmのビス1本で機能制限を解除出来るみたいでありまして。ゴリラの世界では有名な裏技のようです。 前回はこの、パーキングブレーキセンサーコードの取付で非常に苦労したんですが、こりゃ、楽でいいですなー。 で、商品が届くのを楽しみに待っていたんですが、本体は在庫があるものの、オプション類の入荷は7月上旬になるとのメールが入りました。 もう、気分はすっかりゴリラちゃんとの新しい生活モードに突入していて、とても待ちきれないので、オプションはキャンセルして、本体だけ発送して貰うことにしました。明日には届くと思うんですが、楽しみ〜♪ で、一方、車載用取付けキットとリモコンは “即納” と書いてある店があったので、そちらに注文するとして、カーシガーライター接続ケーブルはとりあえず1本を流用する方向で大丈夫ですかね? で、予備電池に関しては即納の店がなかったので、とりあえず保留することにしたんですが、よくよく調べてみると 7000円近い純正品でなくても、DB-L50 という型番のヤツが使えるみたいです。これなら互換品が1個 970円で売られていて、安っ!めっちゃ安っ! 思わず2個買ってしまいました。 あまりにも安すぎて発火したりするかも知れませんが、とりあえず最初に頼んだ店にオプションの在庫がなくて本当によかったです。あまりよく調べもせずに衝動買いして、あやうく無駄な銭を使っちゃうところでした。

 とまあそんなことで、後はゴリラちゃん+オプション品が届くのを待つだけなんですが、ナビ子を捨てるにあたって、ひとつだけ気掛かりなところがありました。仕事でよく行くポンプ場とかを目的地として、100箇所くらい登録してあるんですよね。出来れば、その資産を新しいナビでも活用したいところなんですが、例えて言うなら、ナビ子に買ってやった洋服やら、鞄やら、アクセサリーやら、パンツやらを取り返して、それをゴリラちゃんにプレゼントすることが出来ないか?…ということなんですけど。 ナビ子には目的地のデータをSDカードにバックアップする機能があるんですが、さすがにそのデータがゴリラでそのまま使えるとは思えません。 ただ緯度と経度さえ分かれば、新ナビで目的地を設定するのが楽になりますよね。 そこで早速ナビ子の部屋に勝手に忍び込んで、SDカードという名前の鞄に洋服やら鞄やらを詰め込んで、強奪することにしました。 おうちに帰って、こっそり鞄の中を覗いてみると “VCF” という拡張子のファイルが出来ていたんですが、エディタで普通に中身を見ることが出来ました。

  BEGIN:VCARD
  VERSION:2.1
  FN:南濃町山崎
  N:南濃町山崎
  X-KMENAVI-GEO:1267188;4918317
  X-KMENAVI-SYMBOL:0000
  END:VCARD

 どうやらこれが目的地のデータのようなんですが、何じゃ、この数字は? おそらく “1267188;4918317” という部分が緯度と経度なんだと思うんですが、北緯 35°00′00″ 東経 136°00′00″ とか、そういう分かりやすい表記ではないんですな。 これではまったく汎用性というものがありません。何とか普通の緯度経度に変換する方法がないものか、いろいろと調べてみたんですが、この “X-KMENAVI-GEO” の部分がどうも怪しいですよね。調べてみたら “GEO” というのは測位系といった意味のようなんですが、で、 “KMENAVI” の部分はもしかして、 “九州松下電器 (Kyushu Matsushita Electric) ナビ” の略? どうやらナビ子一族の独自形式であるらしく、どう読み取っていいのか、まったく分かりませんでした。 せっかく洋服やら鞄やらを奪い取ってきたのに、マジックで大きく “ナビ子” と名前が書かれていて、流用出来へんやん!…みたいな。 こんなのゴリラちゃんにプレゼントしたら、 「こんなお古のパンツ、いらないっ!」 と言われるに違いありません。 とりあえずナビ子本体で見れば、普通に 北緯 35°00′00″ 東経 136°00′00″ といった形式で表示されるので、それをひとつずつメモ書きするしかありませんなぁ。 奪い取った洋服やら鞄やらはナビ子との楽しかった思い出の印として、部屋の中にでも飾っておきますかね? 時折、パンツの匂いを嗅いだりしながら、故人を偲びたいと思います。 …って、まだ完全に死んだわけではないんですけどね、ナビ子。

 ということで、ゴリラちゃんが手元に届いたら IMPRESSIONS のほうで紹介したいと思うんですが、恐らくネタに困って、ここでレビューすることになることになるのではなかろうかと。 とまあそんなことで、このお話は次回に続きます。乞うご期待♪

 ということで、今日はクリフォード・ブラウンです。通称、ブラウニー。 ブラが好きでウニが嫌いな僕にとって、何とも微妙なネーミングなんですが、いっそのこと、バフンウニーのほうがどっちも嫌いなので諦めがついて、かえってスッキリするんですけどー。 とまあ、呼び名はともかく、音楽性は抜群なんだけど、人間性にかなり問題があるというタイプが少なくないジャズ界において、このブラウニーという人は、 “性格がいい天才” として知られております。珍しいですな。例えば僕が小学生だった頃に同じクラスだったニワくんは、あまりにも頭がよかったので “天才” と呼ばれておりましたが、女子生徒をイジめたりして決して性格がいいとは言えませんでしたからね。風の頼りに聞いた話では、そんな天才ニワ君もオッサンになって性格が丸くなったそうですが、このブラウニーという人は若い時から人間が出来ていたそうです。 ただ、この手の優等生タイプは一緒に遊んでもあまり面白くないので、ジャズファンの間では人気が出にくい傾向にあるんですが、幸いというか何というか、この人は早死にしました。交通事故のため、25歳という若さで死んじゃいました。日本のジャズファンは早死に系が好きなので、僕の頭の中でブラとウニとが綱引きをしているように、優等生と夭折とでプラスマイナスして、トータルすると、引き分け。…ということになって、そこそこ人気があるようなんですが、今日はそんな彼の 『モア・スタディ・イン・ブラウン』 という1枚を紹介したいと思います。タイトルだけ見ると、名盤として名高い 『スタディ・イン・ブラウン』 の拾遺集といった感じなんですが、その実、色んなところから余りものをよせ集めてきたゴッタ煮のような作品でありまして、かなりマニア向けであるような気もするんですが、とりあえずまあ、1曲目から聴いてみましょう。

  まずは 「アイル・リメンバー・エイプリル」 。日本では 「四月の思い出」 という邦題で知られているんですが、 『アット・ベイズン・ストリート』 で演奏されてたやつの別テイクということになります。本テイクと別テイクが2曲続けて出てきたりするのは苦痛以外の何物でもないんですが、こうして最初から完全に別物扱いになっているのは、何とか許容範囲内だと思います。クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットは、再初期・前期・後期の3タイプに分類することが出来るんですが、これはソニー・ロリンズの入った後期の演奏でありますな。どうして録音順に並べなかったのか、その了見が今ひとつよく分からんのですが、ま、所詮は外人のやったことですからね。民族間のギャップだと諦めるしかないんですが、ラテン調で華やかなので、オープニングにいいと思った。…とか、そういうことなのかも知れませんけど。 理由を聞いてみれば、外人のやった事でもそれなりに理屈が通っていたりするんですが、ブラウニーとロリンズと言えば、どちらもアドリブの天才として知られております。 即興演奏と言ったって、所詮は一人の人間のやることなので、同じ曲ならどうしても似たようなソロになっちゃうものなんですが、この2人は違います。 ま、テーマ部のアレンジは同じなので、所詮は同じ曲にしか聞こえなかったりするんですが、即興パートをよーく聞くと、本テイクと別テイクとは、実は別物なんだ。…ということが分かります。ソロ先発はブラちゃん、後発はロリちゃん。ロリブラというのはロリっぽいブラジャーではなく、ロリ系ブランドのことなんだそうですが、それはそうとソロ3番手はリッチー・パウエルでありますか。このパートだけは本テイクと似たような印象を受けてしまったんですが、ま、それはそれで、そういうものなんですけどね。リッチーくんの技量が劣っているとか、リッチーくんは金持ちだとか、そういうことではないと思うんですが、続くマックス・ローチのソロだって、どこかで聞いたことがあるような感じだしー。 ま、ドラムスのソロなんて、どれも似通ったものになるのは仕方のないことなんですが、終盤は ts→tp→ts→tp の8バースで大いに盛り上がって、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 いやあ、別テイクでしたなぁ。

 2曲目、 「ジュニアズ・アライバル」 。 中日ドラゴンズの荒木と井端を “アライバ” と略すのは、 “洗い場盗撮” みたいで、ちょっとどうか?…という気がするんですが、しかも 「ジュニアの洗い場、るんるん♪」 …って、それはいけませんなー。色んな意味で、犯罪です。 いけませんが、ブラウニーの書いたこの作品は、なかなかいいと思います。ちょっぴりファンキーなムードがあったりしますよね。 オリジナルでは日の目を見なかったのが不思議なほど、曲も演奏も出来がよくて、悪くないと思います。 テナーとトランペットのユニゾンでテーマが演奏され、でもって、ソロ先発はブラウニーなんですが、これくらいのテンポ (ミディアム) だと歌心が際立って、いいですな。 とか言ってるうちにロリンズのソロが始まりましたが、この人の持つ悠揚迫らざる吹きっぷりが堪能…出来るとこまで至らぬうちにピアノのソロが始まりましたが、ちょっと各自の持ちスペースが短か過ぎですよね。女子高生のスカートは短かければ短かいほどいいんですが、ジャズのアドリブでパンツが見えそうなほど短かいというのは、ちょっと物足りないところがあって、そこが没になった要因なんすかね? ま、短かいなりにきっちりローチのソロもフィーチャーされて、でもって、テーマに戻って、おしまい。 ま、短かいなりに、それなりに充実していたんですが、やっぱりちょっと短か過ぎぃ。。。 ということで、3曲目です。 「フロッシー・ルー」 。タッド・ダメロンのオリジナルのようです。 プラッシーとか、風呂敷とか、ピロキシなら分かるんですが、フロッシーって何ですかね?…と思って調べてみたら、よく分からなかったんですが、いかにもダメロンっぽくて、駄目ではなくて、いい曲でした。ブラウニー、ロリンズ、リッチー、ローチと続くソロも抜群です。 ま、どれも短かくて、ちょっと物足りないものはあるんですけどー。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 ということで、次です。 「ミルダマ」 はローチのオリジナルです。 けん玉とか、替え玉とか、 “大木こだま” なら分かるんですが、ミルダマって何ですかね?…と思って調べてみたら、よく分からなかったんですが、これはアレです。 『ブラウン=ローチ・インコーポレイテッド』 で演奏されてたやつの別テイクということになります。ほとんどローチの独奏と言ってもよく、時々アンサンブルのパートがあったり、一応ブラウニーのソロもフィーチャーされたりするんですが、トータル的にはローチの自己満足であると思っていただければ間違いないでしょう。 テイク1〜6まで残っているようで、オリジナルに収録されたのは1〜4までを “いいとこ取り” して編集したバージョンだったんだそうで。 ジャズの世界では、あまりそういうことをして欲しくなかったんですが、僕のソロは完璧だったのに、正男クンがトチったぁ。。。 …とか、そういうこともあるでしょうからね。いいソロだけを寄せ集めたいという気持ちも分からんではないんですが、このアルバムには未編集のテイク5が収録されております。 ローチの叩きっぷりも、トランペットのソロも完璧なんですが、アンサンブルでブラウニーがちょっと音をハズしているところがあります。猿も木から落ちるというか、弘法も筆の誤りというか。 人間だもの。 by 相田みつを。 たまにはそういう事もあるよね。 が、没テイクですな、こりゃ。

 ということで、5曲目。 「ジョードゥ」 。 言わずと知れたデューク・ジョーダンの代表作です。 『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』 というアルバムに収録されておりましたが、あれは実はブラウニーのソロを残して 4′00″ に短かく編集したバージョンだったそうで、これまた余計なことをしてくれたものでありますなぁ。。。 今回、ここでめでたくノーカット版が収録されることになったんですが、とまあそんなことで、ブラウニーのソロ自体はあっちで聴いたものと同じです。完璧な出来なので文句の付けようがないんですが、新鮮味は無いですな。 言われてみればオリジナル盤ではトランペットのソロの後、やや不自然な感じでテーマに戻っていたんですが、本来はその後、ハロルド・ランドとリッチー・パウエルがソロを取っていたんですな。勝手に消されちゃうほど出来が悪いわけでもなく、本人たちにしてみれば甚だ遺憾で、そりゃ、いかんやろ?…と言いたくなるに違いありませんが、ま、さほど傑出した出来というわけでもないので、仕方がないような気もするんですけど。とくにリッチーのプレイはこの上なく地味で、むしろカットして正解だったかも知れませんが、終盤のテナーとトランペットの掛け合いまで消しちゃったのは、ちょっと勿体ないような気がします。ラストのローチのソロは、ま、いいとして。 とまあそんなことで、聞き慣れたテーマのところに戻って、おしまい。 本来は 7′47″ もあったんですな、これ。

 で、次。 「ジーズ・フーリッシュ・シングス」 。 ブラウン=ローチ・クインテットのメンバーの中ではリッチー・パウエルが群を抜いて地味なんですが、それに輪をかけて存在感が無いのがベースのジョージ・モロウ。 情事・モロ見えなら、かなりソソられるものがあるんですが、所詮は地味なベース弾きですからなぁ。 今まで、まともなソロ・パートすら与えられたことが無かったんですが、これはそんなジョージ君を大フィーチャーした異色のナンバーでありまして、一世一代の大舞台に涙を流して喜んだことでありましょう。 が、あまりにも地味過ぎて、オリジナルに収録されることはなかったみたいなんですけど。 もしこれが原因でジョージ君がグレちゃったとしても、決して彼を責めることは出来ません。どうぞ、気の済むまでバイクで石榑 (いしぐれ) 峠を暴走してください。酷道マニアの相田では、いや、間では、けっこう有名なんですよね、石榑峠。電光掲示では “榑” という字が出ないらしく、 “石ぐれ峠” と書いてあったりしますけど。 一応は国道なのでカーナビで桑名から滋賀県に抜けようとして距離優先でルート検索すると、誘導されて泣きを見る恐れがあるんですが、とりあえずトンネルが貫通したみたいなので、2011年くらいになれば大丈夫かと。 とまあそんなことで、ベースのピチカートによってテーマが演奏された後、ベースのピチカート・ソロがあって、テーマらしいテーマに戻らずに、おしまい。 ボツ扱いなのも、やむなしか?…という気はするんですが、1曲くらいはこういうのがあってもいいと思います。 僕もけっこう心が広いですなー。

 ということで、次です。 「ランズ・エンド」 。 唯一 『スタディ・イン・ブラウン』 からの拾い物という事になるなんですが、あのアルバムの中で、僕はこの曲がいちばん好きなので、この別テイクは嬉しい限り。 タイトルから分かるようにハロルド・ランドのオリジナルでありまして、哀愁味を帯びたマイナー調のメロディーは、まさに日本人好み。僕もこの手のサウンドは大好きです。日本人だもの。 by 相田みつを。…って、みつを君はあまりそんな事は言ってませんか。日本人とか、そういう狭い枠を超越して、広く “人間” という存在をマクロな視点で見つめてますからね、みつを。 で、これ、オリジナル盤にはテイク14 (!) が収録されているようで、日本語ライナーを書いた児山紀芳クンがわざわざ (!) を付けているところを見ると、異例とも言える数の多さであるようなんですが、ま、普通、多くてもテイク7くらいで妥協したり、手を打ったりしますからね。ブラウンくんは性格が大らかそうなんですが、ローチくんはちょっぴり意固地で、妥協を許さないキャラっぽい感じがするので、こいつが無駄にテイクを増やしたんですかね? 意外とブラウニーが完全主義者だったりするのかも知れませんが、で、ここに収録されているのはテイク12なんだそうです。 ランド、ブラウン、パウエルとつづくソロは、テイク14が各人32小節なのに対し、ここテイクでは各人16小節と短かくなっている。…とのことなんですが、これではやはり、あまりにも短か過ぎるような気がします。ローチやブラウンでなくても、僕だって不満です。 おまけに後テーマに戻るところもちょっと失敗しているし、こりゃ、あと2テイクやり直しも、やむを得ないところでありましょう。

 で、 アルバムの最後を飾るのは 「ザ・ブルース・ウォーク」 。 作曲者としてブラウンの名前がクレジットされておりますが、実はソニー・スティット作の 「ルーズ・ウォーク」 であるというのは、ジャズ検定 (中級) あたりで出題される可能性が高いので、押さえておかなければなりません。 オリジナルは 『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』 に収録されているんですが、そちらと比べるとこの別テイクは、テーマ・アンサンブルの出来が今ひとつですな。 ソロ・オーダーはブラウニー、ランド、リッチー、ローチの順。 各自のソロの途中に残った面々が合いの手を入れたり、ドラム・ソロの間に合奏パートがあったりして、いかにもハード・バップらしい凝ったアレンジが施されているんですが、で、極め付けは終盤のテナーとトランペットのバトル。 4小節交換で始まり、そこから2小節、1小節…と、次第に間隔が短かくなって、大いに盛り上がったところで、テーマに戻って、おしまい。 ところどころツメの甘いところもあるんですが、演奏そのものは悪くない出来でありました。でもやっぱり、本テイクのほうが遥かに出来がいいですなぁ。 …ということが判明したところで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 寄せ集め以外の何物でもないんですが、意外にも統一感のある仕上がりとなっておりました。よく分からん曲順も、いろいろ考えた結果なのかも知れません。 色んなタイプの演奏があって最後まで飽きさせず、余計な編集が加えられていた作品がオリジナルに戻されたのも大歓迎。 が、別テイクものは本テイクに比べると、やっぱり完成度が劣りますな。 所詮は没テイク集やなぁ。…ということで、結局のところマニア向けの1枚なのでありました。


INDEX
BACK NEXT