INTRODUCING KENNY COX (BLUE NOTE)

KENNY COX (1968/12/9)

INTRODUCING KENNY COX


【パーソネル】

CHARLES MOORE (tp) LEON HENDERSON (ts) KENNY COX (p)
RON BROOKS (b) DANNY SPENCER (ds)

【収録曲】

(01-03) MYSTIQUE / YOU / TRANCE DANCE
(04-06) ECLIPSE / NUMBER FOUR / DIAHNN

【解説】 (2009年06月07日更新)

 少し前のことになるんですが、携帯音楽プレイヤーが壊れました。どの携帯音楽プレイヤーなのかというと、 これ なんですが、いや、短い命でしたな。このレビューを書いて数ヵ月後には、お亡くなりになりましたからね。 すぐに壊れたからと言って、別にカナちゃんが安っぽかったとか、そういうことではなく、いや、どうしようもなく安っぽいのは紛れもない事実なんですが、壊れた原因の80%くらいは僕のほうにあります。 僕は こんなふう に延長ソケットを介して、付属のカーシガレットUSBアダプタにカナちゃんをぶっ挿していたんですが、クルマから降りる際に鞄でもぶつけたのか、スライド式のUSB端子のところがプラプラになってしまいました。 こ、骨折? これでは充電やデータの転送が出来なくて、終わったも同然です。ご愁傷様です。…って、それ、80どころか、100パーセント、君の責任なんじゃないか?…と言われると、そういう気がしないでもないんですが、めっちゃ安っぽいし、ホルダーの選択とか操作性に問題もあったし、付属のアンテナは反り返っていたし、ちょうどいい機会なので、安楽死処分とさせて貰うことにしました。カナちゃん、短い間、お疲れさまでした。どうぞ安らかにお眠り下さい。 葬り去ってからふと気になって、墓から掘り出して解剖してみたところ、USB端子のかしめてある部分が緩んでいただけで、ラジペンで挟んでやったらすぐに直ったんですが、僕の中では既に死亡届も提出してますからね。直って嬉しいというよりむしろ、今頃になって生き返りやがって!…と、忌々しく思う気持ちのほうが強く、そのまま机の引き出しの奥のほうに押し込んでおきました。その後、一度も食事を与えていないので、さすがに餓死しちゃったものと思われます。 カナちゃん、もう2度と生き返ったりしないでネ♪

 ということで、新しいのを買いました。クルマの中で聴くのに、FMトランスミッター機能が付いてるのを探したんですが、その結果たどり着いたのが これ です。クルマの中でも聴けるというか、クルマの中でしか聴けないタイプなんですが、よく考えたら僕の場合、クルマの中で聴くのがほとんどですからね。クルマ専用に特化したこういうタイプのほうが取り付けもスッキリして、降りる時に鞄をぶつけて端子が折れるといった過ちも繰り返さないに違いありません。 ただ、あまりにも説明がシンプル過ぎて、どういう機能があるのか不安な点もあったんですが、例えば、設定したFMトランスミッターの周波数が、クルマを止めた途端に消えちゃうんじゃないか?…とか。 エンジンを切った時点で電源の供給を絶たれるわけですからね。設定を保存しておけと言うほうが無茶なような気もします。 が、実際のところは大丈夫でした。 88.5MHzに設定したんですが、電源が切れてもその数値は記憶されておりました。 よく考えたら 512MBの内蔵メモリーがあって、音楽のデータだって保存出来るわけですからね。電源を切ったくらいで設定が消えると考えるほうが間違っておりました。 その他、ディスプレイに曲名とか表示されるのか?…という疑問もあったんですが、こちらも大丈夫でした。生意気に日本語だって表示出来ちゃいます。もっとも昼間だとディスプレイが反射して、何が表示されているんだか分かったものではないんですが、夜なら普通に見えるので大丈夫です。 ただ問題なのはフォルダーの管理が出来ないところでありまして、僕は手持ちのCDをMP3にリッピングする際、アルバム単位でフォルダーを作っているんですよね。それをそのまま内蔵メモリーやSDカードに転送してやると、別にエラーになるようなことはないんですが、フォルダーを選択するすべがありません。 内蔵メモリーもSDカードも一体化した全836曲くらいのデータの固まりとしか認識されず、例えばケニー・コックスの 『イントロデューシング』 を聴きたいと思った場合、あれは確か、678曲目からだったな。…というのを記憶しておくか、さもなければ、昼間だとぜんぜん見えないディスプレイを見ながら、1曲目の 「Mystique」 が出てくるまで、ただひたすら曲送りボタンを押し続けなければなりません。そんなことしながら運転してたら、事故るちゅうねん!!

 幸い、この機種には “ランダムプレイ” というのがありました。 僕は今まで、アルバムの1曲目から最後まで、順番に聴くのがオトコちゅうもんや!…というポリシーを持っておりまして、ランダムプレイなど、フンと鼻で笑って馬鹿にしておりました。 が、フォルダー選択が出来ないとなると、背に腹は変えられません。 “カス” をつかまされてしまった身の不幸を嘆きつつ、ランダムプレイに魂を売り渡すしかありません。もうちょっとよく考えてから買うべきでしたなぁ。。。 が、実際にランダムプレイを使ってみるとですね、これが意外といいんですよねー。 今まで毎回のように、今日はどれを聴こうかと悩んで、結局はいつも 『郷ひろみベスト』 ということになって、さすがに 「よろしく哀愁」 も飽きたなぁ。…といった生活を続けていたんですが、ランダムなら機械が勝手に選んでくれるので、悩む必要がありません。  『郷ひろみベスト』 を1曲目から最後まで順番に聴いていると、途中でよく知らない曲が出てくるんですが、よく知らない曲はあまり面白くないので、いつもそこで飛ばしてしまいます。 2枚組CDの2枚目の中盤以降は知らない曲ばかりが続くので、いつもそこで聞くのをやめてしまいます。 結果、よく知らない曲は、いつまでたってもよく知らない曲のままで生涯を終えることになってしまうんですが、ランダムで不意にそういうのが出てくると、1曲だけの辛抱だから、我慢して聴いてみようか?…という気分になったりするんですよね。 結果、今まで知らなかった隠れた名曲が発見出来たりもして、いやあ、いいですなぁ、ランダムプレイ。 僕はとりあえず内蔵メモリーのほうに昭和歌謡を入れて、SDカードのほうにはジャズなんかを入れているんですが、内蔵もSDもお構い無しにランダムなので、ジョー・ヘンダーソンのハードなブロウの後に、いきなり松本ちえこが出てきたりして、意外性があって、飽きません。

 とりあえず miniSD の 2GBのやつを 12枚ほど買って、手持ちのCDを片っ端からリッピングして放り込んでやりました。名刺入れサイズのケースに6枚入るので、それ2個で 5000曲ほど持ち運べることになります。 microSD のほうが嵩張らないんですが、アレはあまりに小さすぎて、クルマの中に落とすと2度と発掘出来なくなさそうですからね。 ただ、 miniSD の時代は既に終わってしまったようで、手に入りにくかったり、割高だったりするのがちょっとネックなんですけどー。 いずれにしろ、飽きてきたらカードを入れ替えればいいので、この資産で当分は生きていけそうなんですが、問題は内蔵メモリーの収録曲のほうであります。 こちらはパソコンが無いと入れ替えられないので、どうしてもいつも同じラインアップということになってしまうんですが、 512MBで 100曲くらいしか入らないので、どうしても同じのが出やすくなるんですよねー。 またしても 「よろしく哀愁」 かい!…みたいな。 いっそ、内蔵メモリーには何も入れなければいいんですが、なまじ空きがあるのに使わないというのは、何だかもったいないような気がするしー。 そもそもこのプレイヤーのランダムプレイは、そのランダムさがどうも今ひとつのような気がします。 おそらく、全曲をシャッフルして順番を入れ替えてくれるのではなく、ただ適当にその場の思い付きだけで選んでいるんでしょう。何だかやたらと同じ曲ばかりが出てくるような気がします。 もしかしてこいつ、ちょっとアホなんですかね??? アホなんだったら仕方ないと諦めるしかないんですが、幸い、僕はアホではありません。どちらかというと、賢いほうなんですが、そこで僕は考えました。何を考えたのかと言うと、ランダムプレイがもっと乱雑になる方法をなんですが、例えばえーと…、ダミーを使うというのはどうですかね? ダミーというのは 0.1秒くらいの何も音が入っていないMP3のデータなんですが、何かの役に立つかも知れないと思って、既にそのダミーファイルは作ってあります。 これ (↓) です。

  DUMMY MP3.zip

 名前を変えたダミーファイルを30個ほど“ZIP” で圧縮してあるので、右クリックで保存して解凍して、何かの役に立てていただければ幸いなんですが、こんなものいったい何に使うのかというと、僕の場合、SDカードの各1曲目にコイツを入れてあります。 このプレイヤーには一応レジューム機能が付いているんですが、カードを入れ替えると1曲目に戻ってしまうんですよね。せっかくのランダムプレイもカードを入れ替えると、いつも最初だけは同じのが出てきちゃいます。 イントロが始まった瞬間、またお前か!…と忌々しい気分になって、速攻で次の曲に飛ばすことになるんですが、1曲目をダミーにしておけば、問題はすべて解決。 経験上、 “ROOT” に置かれたファイルがサブフォルダよりも優先して演奏されるようなので、 “ROOT” にダミーを1個だけ転送しておきました。我ながら、何て賢いっ! で、続いてはランダムプレイの乱雑さを向上させる方法なんですが、思い切って内蔵メモリーに入れてあった音楽データは、ばっさりと削除しました。 そのかわり、そこにダミーファイルを450個入れてみたんですが、サブフォルダーを15個作って、中に30個ずつのダミーを入れました。 容量的には10000個くらい入れても大丈夫そうだったんですが、あまり数を増やしすぎて、さほど賢くもないプレーヤーがパニクって、フリーズしたりしても困りますからね。カードの分を含めて、1000曲以内。 ま、それくらいが妥当なところではなかろうかと。 果たしてこんなことでランダムプレイの乱雑さが向上するのかと言われると、あまり自信はありません。心情的にはバラけてくれる気がしないでもないんですが、もしかしたらまったく無意味かも知れません。 計算上では

  (変更前) 内蔵メモリー:100曲 SDカード:400曲 選ばれる確率 1/500=0.200%

  (変更後) 内蔵メモリー:450曲 SDカード:400曲 選ばれる確率 1/850=0.118%

となるので、1.78倍くらいは精度が上がることになると思うんですけどー。 余計な手間を掛けさせやがって!…と思わずにはいられませんが、ただ、乱数を発生させるというのは簡単のようでいて、実は非常に難しいという話を聞いたことがあります。安っぽい音楽プレーヤーごときでは、やむを得ないところなのかも知れません。 コンピュータは有限オートマトンとみなせるので、外部からの入力がない限り計算によって求める確定的な擬似乱数しか生成できない。…などと、 “Wikipedia” にも何だかよく分からないことが書かれています。有限オートマトンって何なんですかね?数に限りのある自動羊肉? ま、確かにジンギスカンで肉が切れることもあるに違いないので、マトンは有限なんだと思うんですが、で、擬似乱数では何となく乱雑さの精度が今ひとつであるような気がします。 そもそも乱数というのは、キャンディーズと何か関係があるのか?…とか、いろいろな疑問が沸き上がってきたんですが、キャンディーズのメンバーはラン・スー・ミキですからね。乱数と何らかの関係があったとしても別に不思議ではありません。ミキちゃんにだけ外れて貰えば、それで十分に成り立つ話です。 今度、手持ちのキャンディーズの曲ばかりを入れたSDカードを作って、ランダムプレイでの乱雑さを検証してみようと思うんですが、恐らく同じ曲ばかり出てきちゃうでしょうな。キャンディーズの歌って、9個くらいしか持ってないしー。

 ということで、実験してみました。とりあえず1曲目にダミーを、2曲目以降には 「アン・ドゥ・トロワ」 「ハートのエースが出てこない」 「やさしい悪魔」 「わな」 「哀愁のシンフォニー」 「春一番」 「暑中お見舞い申し上げます」 「年下の男の子」 「微笑がえし」 を入れました。ランダムプレイで10曲目まで演奏してどういう順番になるのか、非常に楽しみなんですが、収録曲が1回もダブらずに出てくれば完璧なんですけどねー。 まずは内蔵メモリーに何も入れない状態バージョンなんですが、2曲目以降はこういう順番になりました。

(1回目結果) 春一 わな 悪魔 微笑 アン 暑中 ハート 哀愁 年下

 な、何、この、完璧なシャッフルプレイは!? 1回だけでは偶然という事も考えられるので、一度、電源を切ってリセットして、もう2度ほど試してみました。

(2回目結果) 微笑 アン 悪魔 暑中 哀愁 年下 ハート わな 春一

(3回目結果) わな アン 春一 悪魔 哀愁 微笑 年下 ハート 暑中


 完璧やん! いやあ、適当に思いついた数字を出してくるだけかと思っていたら、意外にもめっちゃ考えていたんですなー。 そういうことだとあまり意味は無さそうなんですが、内蔵メモリーにダミーを 450曲、SDカードにキャンディーズを 9曲入れた状態で試してみました。

(1回目結果) 春一 悪魔 暑中 哀愁 わな アン 微笑 年下 ハート

(2回目結果) 悪魔 暑中 わな 哀愁 微笑 年下 アン ハート 春一

(3回目結果) 春一 わな 年下 アン 微笑 悪魔 暑中 ハート 哀愁


 これだけダミーの数が多いと、出てくるのはほとんどダミーばかりになっちゃいますなー。ダミーと言っても演奏時間がまったくゼロというわけではないので、 6秒ほど無駄な無音の時間があって、それでようやくキャンディーズが1曲出てくるような感じになります。 ただ、全部で 460曲あってもきっちりシャッフルされるところは、凄い♪…と評価していいのではなかろうかと。 ただ、キャンディーズですからねー。 ラン・スーが乱数の精度の向上に寄与しているという可能性は十分に考えられるので、ここはひとつ、郷ひろみでも試してみたほうがいいですかね? ということで、収録曲を 「男の子女の子」 「お嫁サンバ」 「裸のビーナス」 「よろしく哀愁」 「誘われてフラメンコ」 「お化けのロック」 「林檎殺人事件」 「セクシー・ユー」 「How many いい顔」 の9曲に変更してみました。  450曲のダミーは、ただ邪魔なだけであることが判明したので、全消去するとして。

(1回目結果) いい顔 セクシー 男女 お嫁 お化け よろ哀 誘フラ 林檎 裸ビナ

 郷ひろみでもイケるやん! 続いては、収録曲が一巡したところで電源を切るのではなく、さらにランダムプレイを続けるとどうなるのかを実験してみたんですが、

  お化け 裸ビナ 男女 誘フラ 林檎 お嫁 セクシー よろ哀 いい顔
  お化け 裸ビナ 林檎 いい顔 男女 よろ哀 誘フラ セクシー お嫁
  お化け 男女 裸ビナ 林檎 よろ哀 誘フラ いい顔 セクシー お嫁

 …と、9曲 (ダミーを含めると10曲) 単位で、律儀にシャッフルされるということが判明しました。思った以上に、えらく頭がエエやん♪ けど、出だしはいつも 「お化けのロック」 ばっかやん! 「裸のビーナス」 も3曲目までには必ず出てくるし、 「男の子女の子」 も3曲目までに2回出るし、個人的にあまり聴きたくない曲が優先して前にくる “嫌がらせ機能” 搭載なんすかね? 色々と調べた結果、せっかくの優秀なシャッフル機能も電源を切った時点で、すべてリセットされる模様なんですよね。 レジューム機能をオンにしても、1曲目だけは記憶されているものの、2曲目以降は律儀に最初からシャッフルを組み直す仕組みになっているようです。 で、その際に用いる乱数列がおそらく、めっちゃパターン化しているのではないかと思うんですが、となると、ダミーファイルを 450個入れたみたところで、あまり効果はないんですかね?どうなんですかね? とりあえず乱数がもっと乱れるように、データの中に大月みやこの 「乱れ花」 とか、大月みやこの 「乱れ雪」 とか、小田和正の 「春風に乱れて」 とか、真木由布子の 「乱れ舞い」 とか、大滝詠一の 「乱れ髪」 とか、宝塚歌劇団の 「忍ぶの乱れ」 とか、MEN☆SOULの 「乱れ咲き☆ディスコナイト」 とか、すけべ動画の 「未亡人快楽乱れ咲き」 とかを入れてみようと思うんですが、その成果の程は、またそのうちに。

 ということで、今日はケニー・コックスなんですが、誰?…と思った人も少なくないに違いありません。 かく言う僕もまったくよく知らなかったりするんですが、CD屋 『イントロデューシング・ケニー・コックス』 で見かけて、ブルーノート盤だからそんなに大ハズレは無いだろう。…と踏んで、押えておくことにしました。 イントロデューシングというからには、これが初リーダー作なのではないかと思うんですが、輸入版でライナーノートが英語で書いてあるので、詳しいことは分かりません。 ご丁寧に参加メンバー全員が顔を揃えているジャケットを見る限り、ケニー・コックスくんは恐らく白人なのではないかと思われるんですが、真ん中に写っているちょっと髪型のヘンな兄ちゃんがリーダーなんでしょう。トランペットを持ってる兄ちゃんは、ちょっぴりパパイヤ鈴木ですよね。 これ、 『イントロデューシング・ケニー・コックス・アンド・ザ・コンテンポラリー・ジャズ・クインテット』 というのが正式な名前のようなんですが、見るからに同時代のジャズ5人組でありますな、こりゃ。 “Contemporary” には “同年齢の” という意味もあるようですが、年齢的にもほぼ同じくらいに見えます。 リーダーを含め、有名さ…というか、無名さのレベルも同程度ではないかと思うんですが、ヘタに1人だけ人気があったりすると、妬みとか、嫉みとか、そういった感情が沸き起こって、 「もうケニー君とは一緒にやらないっ!」 とか、そういう事態になりかねないんですが、この5人組の場合、しばらくは安泰でしょう。ちなみにテナーを吹いてるレオン・ヘンダーソンは、ジョー・ヘンダーソンの弟なんだそうですけど。 ジャケ絵を書くのがめっちゃ面倒臭そうで、今から憂鬱なんですが、あまりにも顔が似なかったら、またモザイクを入れる手でありますな。 とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょう。

 まずはケニー君のオリジナルで、 「ミスティック」 。 ピアノによるシンプルなイントロに続いて、2管によってテーマが演奏されるんですが、バピッシュではないし、ファンキーでもなくて、これはやはり、新主流派っぽいということになるのではなかろうかと。…と思って原文ライナーを見たら、 「私はこれらの構造でビバップ感じを入れようとし」て(主なモチーフの間、実際のビバップ句に注意してください) という意図があるようなんですが、いや、スキャナで読み込んでOCRで認識させて翻訳サイトにかけたものなので、日本語としては今ひとつ正しくないんですけど。 言われてみれば確かに、主なモチーフの間、ビバップ句があるような気がしないでもありません。 個人的には、何となくハービー・ハンコックあたりが書きそうな曲だという印象があったんですが、とか言ってるうちにトランペットのソロが始まりました。チャールス・ムーア君ですな。 典型的なモード奏法ではないかと思うんですが、誰に似ているかというと、フレディ・ハバード。 ま、そういうことでいいのではないかと思います。 時折、派手な音を鳴らしたりもするんですが、決して破綻に陥ることはなく、直線的な創造性の衝撃的な証拠を示し、で、あだ名を付けるとすれば 「ブー」 といったところに落ち着くのではないでしょうか。 いや、演奏はぜんぜん関係なくて、ただ見た目だけの話なんですけど。

 で、続いてはレオン・ヘンダーソンのソロが登場します。お兄ちゃんのジョー・ヘンダーソンとは、あまり似てないじょー。 …というのが第一印象なんですが、ではいったい誰に似ているのかというと、この盛り上がらないモードっぷりは、まさしくジョージ・コールマン。 それで決まりでしょう。身内のジョーには似なくて、他人のジョージに似ちゃったんですな。遠くの親戚より近くの他人と言いますからなぁ。 この際、あまり関係のないことわざではあるんですけど。 で、ソロの最後を締めるのはリーダーのケニー・コックスなんですが、なんと言うか、微炭酸なハービーって感じ? 悪くはないと思うんですが、正直、あまり印象に残るプレイではありません。 演奏よりも、変な髪型のほうが印象に残ってしまいます。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 個々の力量はどうあれ、トータルとしてみると、いかにも60年代らしいストレート・アヘッドな仕上がりで、ま、よかったのではないでしょうか。

 続いては、 『ユー』 。 このアルバムは全体の83%ほどがメンバーのオリジナルで占められているんですが、これだけは作曲者として “David Durrah” という名前がクレジットされています。 デヴィッド鰈なら、かれい技師のフルネームだから分かるんですが、誰なんですかね、デヴィッドだらあ。 何となく西三河っぽい響きなんですが、西三河が 「じゃん・だら・りん」 、東三河が 「のん・ほい・だに」 なんですよね。 “デヴィッドほい” ではないので、まったく東三河っぽくはないんですが、ライナーノートによると、どうやらケニー君のお友達のローカルなピアニストのようです。 で、この曲、何だかとってもウェイン・ショーターっぽい作風だったりして、僕は好きです。 で、演奏のほうはというと、モロに60年代のマイルス・クインテットだと思っていただければ、それですべては解決します。先ほどジョージ・コールマンだったレオン君は、今度はショーターと化しているし、先ほどはちょっぴりハバードだったブー君も、ここではわりとマイルスっぽい感じ? 見た目のわりに、意外とセンセイティブなプレイだったりするんですが、続くコックスのリリカルなタッチのソロも悪くありません。存在感が無いなりに、それなりに頑張っていると言えるでしょう。 で、終盤にはロン・ブルックスのベース・ソロがフィーチャーされたりもするんですが、時折、ホーンの2人がバックでメロディを吹いてくれたりするので、さほど退屈にならずに最後まで聞き通すことが出来ます。 ということで、テーマに戻って、おしまい。 1曲目よりも更に出来がよくて、こりゃ、わざわざクソ面倒なジャケ絵を書くだけの甲斐があるというものですな。 絵のほうはまだ書いてないんですが、何とか頑張ってみようと思います。

 次、 「トランス・ダンス」 。ケニー・コックスのオリジナルなんですが、いや、これはいいですな。 何がいいと言って、 “TRANCE” と “DANCE” で韻を踏んでいるところが、もう最高っ♪…なんですが、 「トランス・ダンス」 。 「恍惚の踊り」 ですか。日本語にしてもいいですよね。 少なくとも 「豚骨の鳳啓助」 よりはいいと思うんですが、あまり好きではないんですよね、豚骨。 まだ恥骨のほうがマシだという気がします。 で、曲のほうはというと、さほど恍惚ではないものの、それなりに踊り。…といった感じでありまして、ジャズロック調のリズムが、これもひとつの60年代だと言えるのではなかろうかと。 で、ソロ先発はレオン・ヘンダーソン。さほど覇気は感じられないんですが、言葉遣いはハキハキ、好きな家事は掃き掃除、好きなフィンランド人はハッキネン。そういうタイプなのではないかと思われます。 とか言ってるうちにチャールス・ムーアのソロになりましたが、ここでのプレイは幾分ファンキー風味のようなものが感じられ、ちょっとだけリー・モーガンも入ってますかね? 続くケニー・コックスのピアノには、ちょっとだけハロルド・メイバーンが入ってないでもなく、で、最後はロン・ブルックスのベース・ソロですか。時折、ホーンの2人がバックでメロディを吹いてくれたりはしないんですが、何とか最後まで聞き通すことは出来ました。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 ややベタなナンバーではありましたが、ま、たまにはいいんじゃないでしょうか。

 4曲目の 「エクリプス」 はレオ・ヘンのオリジナルです。 「蝕」 ですな。日蝕とか、月蝕とかの “蝕” 。虫が食うと書いて “蝕” 。 セーターが虫が食われたりするとちょっとショックなんですが、ショックではなくて、 “蝕” 。 で、コレはアレですな。ジョー・ヘンダーソンあたりが書きそうなタイプの曲です。ちょっぴり小難しくて、あまり面白くはないんですが、ハードなアドリブの出発点としては、こういうのがいいのかも知れません。 ダニー・スペンサーがトニー・ウイリアムスばりのドラミングで煽り立てる中、ムーア、レオン、コックス、ブルックスの順でソロが披露されることになるんですが、レオンは彼の最も揮発性でいます、しかし、彼は露出症の突風の中に下に決してさまよいません。…と、原文ライナーには書かれております。フリチンにコートだけ着た姿で立っていたら、突風が吹いてきて露出してしまったんでしょうか?それでも決してさまよわない。そういうところがとっても揮発性だと僕も思います。ショーターや彼のブラザー、ジョーの多くもどうのこうのと書かれておりますが、これらによるほとんどのfoをどんなdoub.tにもさせないfheのテノールの男性が彼のスタイルを形成するということですよね。…って、この辺り、OCRの認識度が今ひとつで、限りなく意味不明です。何となく、彼の男性そのものが立派であったという事は伝わってくるんですどー。 ということで、テーマに戻って、おしまい。 個人的にはあまりソソられるものがないタイプの演奏だったんですが、ま、1曲くらいはそういうこともあるでしょう。

 ということで、次。  「ナンバー・フォー」 。 トランペット担当のチャールス・ムーアのオリジナルです。これまた、個人的にはあまりソソられるものがないタイプの演奏で、この先、クソ面倒なジャケ絵を書かなければならないのが憂鬱になって来ましたが、レオン、コックス、ムーアの順でハードなソロが繰り広げられております。各自のソロがクソ長くて、気がメゲます。中では、ムーア君のソロが健闘していると言えるかも知れませんが、ということで、テーマに戻って、おしまい。 で、ラストの 「ダイアン」 はレオン君のオリジナルです。これはアレです。バラード調です。ほっと一安心です。 ま、バラードはバラードで、ちょっぴり暇だったりもするんですが、聴いてて疲れるよりはマシだと思います。 で、これ、作ったのはレオンなんですが、フィーチャーされているのはチャールス・ムーア。 マイルス・デイビスの影響を色濃く感じさせるものとなっております。 と思っていたら、レオン・ヘンダーソンがウェイン・ショーターの影響を色濃く感じさせる吹きっぷりで登場し、ケニー・コックスのとってもハービーっぽいソロがあって、いかにもといった感じの紋次郎イカ。そういった作品に仕上がっております。子供の頃、好きでよくカジっていたんですよね、紋次郎イカ。今から思えば、どうしてあんなイカ臭いものを喜んで食っていたのか不思議でならんのですが、遠足には必ず 「イカの姿フライ」 を持っていったし、伊勢志摩に社会見学に行った時はお土産に 「のしイカ」 を買ったし、イカ好きだったんですが、子供の頃の僕。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 これはアレです。 “60年代マイルス” そのものです。そこに若干、フレディ・ハバードとジョー・ヘンダーソンを加えてみたじょー。 …といった感じなんですが、ま、それでいいじゃないっすか。 中盤2曲ほどツライ部分もありましたが、トータルとしては概ね、よく健闘していたと思います。 ちなみに僕の持ってる輸入版CDはもう1枚、 『マルチダイレクション』 というアルバムとカップリングされているんですが、全12曲。 もう、嫌というほど “同時代のジャズ5人組” を堪能することが出来て、ちょっぴり嫌になりました。 きっちり1枚ずつ分けて聴くのが吉だと思います。


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