INTRODUCING PAUL BLEY (DEBUT)

PAUL BLEY (1953/11/30)

INTRODUCING PAUL BLEY


【パーソネル】

PAUL BLEY (p) CHARLES MINGUS (b) ART BLAKEY (ds)
【収録曲】

(01-03) OPUS 1 (alt take) / OPUS 1 / TEAPOT (WALKIN')
(04-06) LIKE SOMEONE IN LOVE / I CAN'T GET STARTED / SPONTANEOUS COMBUSTION
(07-09) THE THEME / SPLIT KICK / THIS TIME THE DREAM'S ON ME
(10-11) ZOOTCASE / SANTA CLAUS IN COMING TO TOWN

【解説】 (2008年11月09日更新)

 今日(11月8日)はエバラのソフトボール大会でありました。毎年恒例の行事です。毎年恒例の行事なので、過去にも何度かこの話題を取り上げたことがあるんですが、例えば ここ とか。あるいは ここ とか。1回の原稿の量がやや短めであるとは言え、同じネタで2回も引っ張ったんですな、当時の僕。 どうやらこれは 2001年に書かれたもののようなんですが、そうですか。当時はコイズミ政権でありましたか。淡水魚の中では鯉がわりと好きな僕は、コイズミ君にもわりと期待を寄せていたんですが、伊勢湾岸道も無事に開通したことだし、とりあえずよかったのではないかと思います。 で、当時、実行委員の1人であり、エースであり、不動の1番バッターでもあった仙石部長がですね、定年退職して数年前にいなくなってしまいました。 “仙石杯ソフトボール大会” という異名があるほど影響力の強かったこのオッサンの勇退によって、もう、うちの会社はソフトボールには出なくていいね♪…と、みんなで楽観していたんですが、以後も毎年のように、この時期になるときっちり社内回覧が回ってきて、難儀なことでありますなぁ。。。

 毎年、嫌々ながらも出席していた僕なんですが、去年、初めて出場を辞退しました。左下腿骨の骨折から約10ヶ月。バッテイ手術を2ヵ月後に控えて、激しい運動はとてもじゃないけど、無理。…という、立派な言い訳があって何よりだったんですが、今年はそういうわけにもいきません。脚、すっかり治っちゃいましたからね。 ソフトボール大会の開催を知らせる回覧が僕のところに真っ先に回って来たんですが、出られない理由がない以上、出ないというわけにもいきません。仕方なく 「出席」 のほうの欄にハンコを押しておいたんですが、回覧が一巡した後にチェックしてみると、僕以外は全員が欠席となっておりました。しまった!ハメられた! こんなことなら右脚の骨も折っておくんだったと思っても、時すでに遅し。こうなったらもう、とりあえず会場に行くだけ行って、 「まだ脚が完治してなくて、走れないしぃ。」 とゴネて、応援に回るというのが得策でありますな。実際問題、2年前の大会ではホームに突っ込んだ際に脚を怪我して救急車で運ばれたり、ピッチャーライナーが顔面を直撃したり、当時はまだ現役だった仙石部長にも打球が当たったりと、かなりデンジャラスな状況になってましたからね。無理して頑張って怪我をしてもアホらしいので、なるべく出番が回ってこないように、賢く立ち振る舞わなければなりません。

 前日、幹事役を務めるサトケンくんにそれとなく探りを入れてみると、我が塩サバ物産(仮名)からの参加者はギリギリの人数しかいない模様です。 が、下請けの桑○電気から助っ人を4名ほど呼んでいるそうで、いや、これでもう安泰ですな。 「わざわざ助っ人で来てくれてる人を差し置いて出るのも悪いしぃ。」 と、オトナとしては当然の “お客様を立てる心” を説き、ついでに 「戦力にならんから、期待せんといてな。」 と、謙虚な態度でそれとなく出場辞退の伏線を張っておいたんですが、それだけではまだ不安なので、“雨乞いの儀式” というのもやっておくことにしました。翌日の天気予報は昼前から昼過ぎにかけて、断続的に弱い雨が降るという、なんとも微妙なところでありまして、朝から中止というのは無理かも知れませんが、1試合が終わったところで雨が降り始めて、そこで打ち切り。弁当だけ貰って、解散!…という流れは期待出来るかも知れません。 「2試合目には出るから。」 と、適当なことを言っておいて、後は運を天に任せるしかありません。 とか言ってるうちに試合当日の朝になったんですが、おおっ、朝から小雨が降ってるやん♪ いやあ、残念。ソフトボール、めっちゃ楽しみにしてたのに、天気だけはどうしようもないですからなぁ。。。 が、いつまで待っても中止の連絡が来ないので、とりあえず行くだけ行ってみることにしたんですが、ちなみに2年ほど前の大会から会場が 富浜緑地 というところに変わっております。石取り祭の評価が星2つとは、舐めとんのか、ここらっと!…と思わずにはいられませんが、それはともかく、大会開始の1時間も前に到着 したというのに、駐車場には既に何台かの車が止まっております。時間が経つにつれて、その数がどんどん増えていって、まさかこの雨の中、強行する気なのか?…と思っていたら、とりあえず1試合だけはやるということになってしまって、ああん! 何て物好きな連中なんでしょうか。 試合は8チームによるトーナメント方式。負けたチーム同士の対戦も組まれるので、いつもなら2〜3試合はやらなければならないんですが、とりあえず1試合。グラウンドは2面しかないので、まずは前半の4チームが試合をすることになったんですが、幸いにも塩サバ物産(仮名)は後半組になっておりました。この分なら、やりたかったけど、雨には勝てないですからなぁ。残念。…ということになるかも知れません。

 前半組の試合が終わったところで少し雨脚が強まって、いよいよ中止かと思われたんですが、とりあえず各チームとも1回はやるという事になって、ああん! 恐怖の先発メンバーの発表でありますが、幸い、助っ人組を含めて若いやつらが結構来ていたので、まったくヤル気のない中年のオッサンは念願の “控え” というポジションを死守することが出来たのでありました。控えらしく、控えめな態度でなるべく目立たないようにベンチの隅っこのほうに隠れて、何とか4回の裏までは漕ぎつけたんですが、最終回、5回の表の守備の段階になって、ここに来た以上、最低でも一度はグラウンドの上に立たないと許されないような雰囲気が感じられるようになって来ました。「さばクン(仮名)、センター!」 という、とんでもない声が聞かれたんですが、あ、でも、グローブが無いしぃ。ちなみに僕は野球やソフトボールの類が大の苦手なんですが、一応は左利きだったりするので、出場を余儀なくされた場合に備えて、マイ・グローブを持って来ていたんですよね。 が、下手にグローブを持って来ているのがバレて、ヤル気があると勘違いされても困るので、車の中にこっそり隠しておりました。“能ある鷹は爪を隠す” ってヤツぅ? 幸いメンバーの中に左投げの人はいないようで、いやあ、出たいのはヤマヤマなんだけど、左用のグローブが無いことにはどうしようもないしぃ。…と、あくまでもゴネる戦法に出たんですが、その時、「コドモ用ならあるけど。」…という声がして、何であるねん!? 試しに右手にはめてみたら普通に使えて、なんで使えるねん!? こうなったら覚悟を決めてセンターを守るしかないんですが、幸いにも1度もボールは飛んでこなかったので、糞エラーをして大恥を晒すという事態だけは何とか避けることが出来ました。ラッキー♪

 そしていよいよ最終回の攻撃。得点は10−5と、大きくリードを許しております。僕は8番という打順に入ったんですが、この回は5番からでありますか。1人塁に出ると、回ってきますな。ヒット打つなー!3者凡退で終われー! そんな僕の願いが通じたのか、先頭バッターはサードゴロで、1アウト。よしっ♪ が、続く6番打者がレフト前にクリーンヒットを放ち、1アウト1塁。相手はダブルプレーが期待出来るような守備力を持ったチームでは無いので、僕のところまで回ってくる公算が強くなってしまいました。 最後のバッターになるのだけはいやなので、こうなったら7番バッターの打力に期待するしかありませんね。 と思っていたら、ボテボテの内野ゴロで2アウト。最悪やん! そしていよいよ、塩サバ物産、最後の切り札、サバくん。 いやらしいまでのバッティング・センスに相手投手が思わずアレルギーを起こしてしまうので、 “蕁麻疹のサバ” との異名を持つ左の好打者です。初球、2球目と、抜群の選球眼でボール球を見極め、2ボールのバッティング・カウント。 最後の力を振り絞って相手のエース (←ギャル) が投げ込んできた低目のストレートをバットで捉えて、おおっ!なかなかの手応え! そこそこ痛烈なゴロだったんですが、運悪くセカンドの真正面に飛んでしまって、敢えなくゲームセット。ああん! ま、雨が降っていて、誰もが早く終わりたがっていたので、無駄に相手のエラーとかで出塁するより、顰蹙の度合いは少なかったかも知れませんけど。

 とまあそんなことで、この時点で雨はやや小降りになってはいたんですが、グランド・コンディション不良で怪我人が出る恐れがあるという賢明な判断によって、ソフトボール大会は無事に終了。 弁当を貰って、昼過ぎにはうちに帰ったのでありました。最後のバッターになったのはちょっと悔しいんですが、エラーもしなかったし、ま、ほぼ思い通りの展開だったと言えるかも知れません。弁当、美味しかったしー。 ただ、ハンバーグに海老フライ、魚フライに蟹クリームコロッケ、更には鶏の唐揚げに真っ赤なソーセージまで入っていて、めっちゃ熱量が高そうなんですけどね。今日はベンチとセンターの間を1往復して、バッターボックスから1塁まで軽くジョギングしただけなので、明らかにカロリー過多だと思います。来年はもっと地味に “サバ弁当” とかにして欲しいところですなぁ。参加者全員が蕁麻疹を発症して、午後からの試合は中止!…という展開に期待して、今日のお話はおしまい。

 ということで、今日はポール・ブレイなんですが、この人はアレです。とっても無礼なことで知られております。 その無礼なブレイが、これまた無礼なアート・ブレイキーと組んだ 『イントロデューシング・ポール・ブレイ』 というアルバムを紹介しようと思うんですが、ベースがチャールス・ミンガスだったりして、何とも強力なサイドマンでありますな。今回のソフトボール大会は強力な助っ人のおかげで、非力な塩サバ軍団でも何とか試合の形になったんですが、自前の戦力だけでは20−1くらいで負けるところでしたからね。 僕の出番も増えて、恥を晒す機会も増えたに違いありませんが、やや非力な印象のあるポール・ブレイというピアニストが、キャラの濃い助っ人たちのサポートを受けて、どのようなプレイを聴かせてくれるのか、非常に興味深いところです。そもそも僕はポール・ブレイという人に関しては、カーラ・ブレイの旦那?…くらいの知識しか持ち合わせていないですが、このコーナーで取り上げるのも初めてですしね。 佐藤秀樹クンの書いた日本語ライナーによると、1932年11月10日、モントリオールに生まれたブレイは、5歳でバイオリン、8歳でピアノ、3歳で山菜取りを始めたそうですが、あ、そんなことはどこにも書いてありませんね。そもそも8歳から3歳に戻るところからして無理があるんですが、8歳でピアノを学び始めて、11歳ですでに音楽学校のジュニア・コースを終えるという早熟ぶりを示したそうです。18歳でジュリアード音楽院に入学するために渡米して、作曲と指揮法を学び、その後、カナダに戻って活躍を続け、1953年にアメリカの永住権を獲得する…と。 で、この 『イントロデューシング〜』 というデビュー盤でデビューを果たすんですが、ちなみにデビューというのはミンガスやマックス・ローチらが協力して立ち上げたレコード・レーベルでありますな。僕は今までこの人の演奏を一度も聴いたことがないんですが、なんでもエロくて耽美的なスタイルが特徴なんだそうですね。 ただ、このデビュー当時の演奏は自己のスタイルを確立する以前のもので、多分にパウエル派に属する特色が打ち出されているそうですが、そういうところに着目しつつ、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 このアルバムはもともと10インチ盤で出されたもので、全部で6曲しか入ってなかったようですが、12インチ化された時か、あるいはCDになった時かは定かではないものの、現在では全部で11曲もの演奏が収められております。 で、いきなり 「オパス1」 という作品が2回続けて登場することになるんですが、しかも別テイクのほうを先に持って来ましたか。演奏した順番で行くとそういうことになるのかも知れませんが、個人的に別テイクはいちばん最後に持って来て欲しかったところです。 が、現状そうはなっていないので、あるがままを受け入れるしかないわけなんですが、これはブレイのオリジナルなんですな。 “オパス” というのが “作品” という意味だというのは、ホレス・シルバーの 「オパス・デ・ファンク」 のおかげですっかり知れ渡ることになりましたが、 「オパス1」 というのは 「作品1」 ですか。何にも考えてないタイトルですな。 「アイ・ガット・リズム」 のコード進行に基づいて作られた作品だそうですが、言われてみれば確かにそんな感じがしますよね。言われなければ全然、そんな感じはしないんですけど。ミディアム・テンポのバピッシュなナンバーでありまして、シングル・トーン中心のソロは確かにパウエル派のそれを彷彿させるものがあります。中間部ではミンガスのソロがフィーチャーされるんですが、適度にピアノも絡んでくるので、さほど苦痛に感じることもなく、で、再びピアノのソロが出てきて、テーマに戻って、おしまい。 続く本テイクのほうもほぼ同等の内容です。続けて聴いても、その違いがほとんど分からないくらいなんですが、2曲目のほうがいくぶんブルージーであるような気がしないでもありません。 ま、気のせいかも知れませんけど。いずれも適度に肩の力が抜けたリラックスした仕上がりでありまして、ポール・ブレイ、意外と普通によかったんですが、ただ個人的にはやはり、2回連チャンというのはやめて欲しかったような気がします。

 3曲目、 「ティーポット」 。日本語にすると 「茶壷」 ですかね? 茶壷に追われてとっぴんしゃん、抜けたらどんどこしょ、俵のネズミが米食って、チュウ、チュウ、チュウ、チュウ♪ そういえば最近、さば家ではあまりネズミを見かけなくなりましたが、時たまネズミの糞が落ちていたりするので、まだどこかに潜んでいるとは思うんですけど。ネズミの糞はちょっぴりチョコベビーに似ているので、子供のいる家庭では注意が必要なんですが、で、これ、CDには (TEAPOT) WALKIN' と表記されているように、曲そのものはお馴染みの 「ウォーキン」 です。アート・ブレイキーの無礼極まりないドラムに続いて、かなり速いテンポでテーマが演奏されるんですが、ウォーキンというより、小走りという感じ? いや、大走りと言っていいほどのスピードですな。ブレイの淀みのないフレージングが見事でありまして、終盤はピアノとドラムスの4バースで大いに盛り上がっております。ブレイキーのスチャラカなドラミングが堪能出来て、何よりなんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 4曲目、 「ライク・サムワン・イン・ラブ」 。 ここでムードが一変して、しみじみとしたバラード演奏が繰り広げられるんですが、いかにもこの人らしい耽美的でリリカルな仕上がりになっていて、いいですな、こりゃ。 いや、僕は今までブレイのプレイを一度も聴いたことは無いんですが、何となくこういうスタイルを頭に描いていたんですよね。白人ピアニストやから、エバンス系やろ?…みたいな。 1953年の時点ではまだ、エバンスはさほど台頭していなくて、台東区にちょっとイケてるピアニストがいる。…といったレベルの存在ではなかったかと思うんですが、それを考えるとここでのブレイのスタイルはけっこう新鮮であると言えるかも知れません。 とか言ってるうちに演奏は終わって、5曲目が始まりましたが、続いては 「アイ・キャント・ゲット・スターティッド」 と、歌モノの連発ということになります。日本では 「言い出しかねて」 という邦題で知られ、よく 「飯田市かねて」 と誤変換されることでも知られている作品なんですが、先程のキーワードが “リリカル” だったのに対して、続いては “アブストラクト” ということになりますか。佐藤秀樹クンもそのようなことを書いておりますが、ま、抽象的なのはイントロの部分だけで、テーマ部以降は普通に具象的だったりするんですけど。 いずれにしろ、こういうスタイルは一般的なパウエル派の面々にはあまり見られないもので、ブレイの独自性の萌芽のようなものが感じられるんですが、とまあそんなことで、次です。

 続いては 「スポンティニアス・コンバッション」 。 タイトルは 「自然発火」 という意味ですかね? 小学5年生の時、僕の家が火事で燃えた際には、自然発火説、漏電説、サバ兄による放火説と、いろいろな説が出されたものでありますが、とりあえず、さば家の中では自然発火ということで落ち着いたような気がします。自然に火が出て燃えちゃったんだから、しょうがないよね。…みたいな。 あ、それ以外に “便所の神様の祟り説” というのもあったんですが、これもまた、便所の神様の怒りに触れちゃったんだから、しょうがないよね。…というので、諦めがつく出火原因ですよね。 その一方、フィンガーファイブのアキラが声変わりしちゃったのは、諦めきれない痛恨事でありましたが、とまあそれはそうと 「スポンティニアス・コンバッション」 。キャノンボール・アダレイに同じタイトルの曲があったような気がするんですが、それとは別のポール・ブレイのオリジナルです。キャノンボールの演奏が、まさに火を吹くようなアップ・テンポの派手派手チューンだったのに対し、こちらのほうはゆったりしたテンポのグルーヴィーな仕上がりとなっております。自然に発火しそうな気配がまったく感じられなくて、バーナーで5分ほど炙ってようやく火が付く石炭のようなタイプなんですが、ひとたび火が付いてしまえば燃焼時間は長くて、遠赤外線がたっぷり発生しそうで、何よりだと思います。中間部ではミンガスのソロも聴かれて、かなりこってり風味ですな、こりゃ。

 で、次。 「テーマ」 。 これはアレです。アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズだか、マイルス・デイビスのクインテットだかがよく、ライブの際のテーマとして演奏している曲です。作曲者不詳のシンプルなテーマなんですが、こうしてピアノ・トリオで聴くと、わりとちゃんとした作品だったりするんですね。テーマ部だけでなく、ちゃんとアドリブ・パートもある立派な演奏に仕上がっておりまして、ミンガスのベース・ソロもフィーチャーされております。いくら大御所のミンガスでも、2曲続けてソロをやられるとさすがに飽きてくるので、出来ればあまり前面には出て来て欲しくなかったところですが、自らが立ち上げたレーベルでのレコーディングなので、誰も止める人がいなかったんでしょう。運が悪かったと思って、諦めるしかありません。 で、次。 「スプリット・キック」 。これはアレです。アート・ブレイキーの 『バードランドの夜』 でも取り上げられていたホレス・シルバーのオリジナルです。かなり派手派手な曲なんですが、ピアノ・トリオで聴くと落ち着いた感じがして、これはこれで悪くないです。ブレイキーのブラッシュ・ワークも軽快で、で、最後にピアノとベースの4バースがあってそこそこ盛り上がったところで、テーマに戻って、おしまい。

 続いて9曲目です。 「ディス・タイム・ザ・ドリームズ・オン・ミー」 。 何となく夢を感じさせるタイトルでありますが、これ、どこかで聴いたことのある曲ですな。いかにも歌モノやな。…といった感じのナンバーでありまして、ブレイの歌心を存分に堪能することが出来ます。 ということで、次。 「ズートケース」 。1940年代にアメリカでは “ズートスーツ” と呼ばれるダボダボのギャング服のようなものが流行ったそうなんですが、 “ズートケース” というのはそれの箱バージョンなんですかね? ダボダボの箱で、ダボハゼとかハコフグを詰めるのに、とっても便利♪…みたいな。そんなの、普通に発泡スチロールの箱に詰めればいいような気もするんですが、そこを敢えてダボ箱に詰めるところが粋なのかも知れません。 で、演奏のほうはというと、超アップ・テンポです。もう、めっちゃ速いです。これくらいの速さになるとどうしてもフレージングが単調になったり、相撲甚句が丹頂鶴になったりしがちなんですが、ここでのブレイはそんな素振りをみじんも感じさせず、快調そのものです。快くて調子がいいですな、こりゃ。 最後は b→p→ds→p の4バースできっちり締めて、でもって、テーマに戻って、おしまい。

 11曲目、 「サンタ・クロース・イズ・カミング・トゥ・タウン」 。これからの季節、街のあちこちで聴かれることになる 「サンタが街にやってくる」 もしくは 「サンタが街にやって来た」 のうち、どちらかの曲だと思うんですが、スタジオの借用時間がなくなり、立ったままピアノを演奏したというエピソードが残されているそうです。話し声なんかも入っていて、臨場感抜群のオマケ曲やな。…といった感じなんですが、演奏そのものはわりとしっかりしていて、傾聴に値する1曲に仕上がっております。でもまあ、所詮はオマケなので、あまり深くは深入りしないことにして、とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 地味なジャケットからして正直、あまり多くのものは期待していなかったんですが、いや、意外と楽しめる1枚でありました。1953年の録音にしては音質も悪くないしー。 いかにもポール・ブレイらしい出来かと言われると、多分、全然そうではないと思うんですが、バップ系の白人ピアニストだと思えば、普通にいい出来であると言えるのではなかろうかと。 選曲にもポピュラリティがあるし、オリジナルも悪くないし、最初から同じ曲を2回も聞かされる点だけを除けば、地味にお薦めかも?


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