既に萌芽する時期になっても、なかなか萌芽しない理由はいろいろあります。(萌芽の時期は、種類、地方、栽培環境によって異なります。これを理解した上で、萌芽しないことを悩みましょう。萌芽時期でもないのに、萌芽しないと悩んでいてもしかたありません。)
病害虫は多くの場合、風通しが悪い、枝葉が混みすぎている、別な理由で植物が衰弱している等、栽培環境が悪い、栽培状態が悪いなどで発生します。真夏で盛んに成長しているときよりも、春又は初夏の芽が出始めや、秋に成長が止まったときに発生しやすいものです。
アブラムシ等害虫は、他の病気を媒介したり、植物を弱らせて、その結果、他の病気にかかりやすくするので、気楽に考えて放置することなく、早めに対処する必要があります。
スズメガの幼虫 |
スズメガ(セスジスズメ)の幼虫が、葉を食害する。大きくなる幼虫なので、食べる量も半端ではない。いつのまにか丸坊主ということになる。見つけ次第、補虫すること。
(セスジスズメは、通常、ブドウ科:ヤブカラシ、ノブドウ、ツリフネソウ科:ホウセンカ、サトイモ科:サトイモ、テンナンショウ、コンニャク、カラスビシャク、ムサシアブミ、ヒルガオ科:サツマイモを食害するが、近くにそれらがある場合、成虫がバオバブに産卵して被害を与える可能性がある。)
オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布する。
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シャクガの幼虫 |
シャクガの幼虫(俗に言うシャクトリムシ)が、葉を食害する。見つけ次第、補虫すること。
オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布する。
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アブラムシ |
芽先、若葉に付く(右写真)。アブラムシが付くと成長が阻害され、植物を弱らせる。モザイクウイルス病を媒介する可能性もあるので、放置しておかず早めに駆除する。
アブラムシは小さく、手や接触性殺虫剤系の農薬では殺虫しきれないので、オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を用いて殺虫する。
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オンブバッタ |
オンブバッタという名であるが、どの個体もオンブしているわけではない。
葉を食害することがある。どこからか飛んできて食害するので、捕虫は難しいしキリがない。
オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布しておくと予防できる。
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コガネムシ幼虫 |
コガネムシの幼虫(右写真)が、土中で根を食害することがある。
夏以降、水を与えてもしおれるなどの症状が発生した場合、単に根腐れの可能性もあるが、コガネムシの幼虫による根の食害の可能性があるため、土や根の状態を確認する方がよい。
成虫を見かけたら、産卵している可能性があるので、オルトラン粒剤等の殺虫剤を用いて殺虫する。
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ハダニ |
栽培環境・方法が良くないとハダニの発生が見られる。ハダニは、葉裏につく0.5mm程度のムシ(というか本当はクモに近い生き物。)である。ハダニが付くと、葉は、カスリ状に白っぽくなり弱々しくなる。
ハダニを予防するためには、灌水時に葉の表だけではなく裏も水をかける。ホースで勢いよく植物全体に灌水する環境ではあまり発生せず、ベランダ園芸、室内園芸などジョウロ利用の場合に良く見られる。ハダニは通常の殺虫剤は効果がないので、ハダニ専用の農薬を用いる。当然、葉の裏に散布しないと意味がない。
ハダニと似た症状をもたらす害虫に、コナジラミ、グンバイムシ、スリップス(アザミウマ)がある。
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コナジラミ |
コナジラミの成虫は、葉裏につく1〜2mm程度の白いハエのようなムシである。触れると飛び立つ。幼虫は、成虫と同じく葉裏につく。植物から吸汁し弱らせる。コナジラミが付くと、その排泄物によりスス病が発生し、葉などが黒くなる。
温室、室内では、植物に葉があれば1年中発生する。
オルトラン水和剤、アクテリック乳剤を用いる。
アクテリック乳剤の使い方
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アオバハゴロモ |
アオバハゴロモの成虫は、茎につく9〜11mm程度の白い虫である。セミに近い仲間。触れるとぴょんと跳んで逃げる。分泌物は真っ白のワタ状。幼虫は、体にワタ状のものを付ける(写真、上のほうにワタ状の分泌物が見られる。)。
草木の汁を吸収する。(見た目が悪い以外の)実害はあまりないが、大量に発生すると、植物を弱らせることがある。
大量に発生する場合は、殺虫剤を散布する(薬剤には弱いようなので、大方の園芸用殺虫剤は効く。)。
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ナメクジ |
屋外や温室で播種するような場合、発芽したての子葉、本葉、胚軸を、ナメクジに食害される場合がある。
ナメクジには通常の殺虫剤は効かない。専用の薬剤を使う方法があるが、根絶やしも不可能なので、幼苗のときのみの対応として、播種床にナメクジを近寄らせない工夫をする。
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灰色カビ病 |
葉の基部等が丸く茶色くなり、患部の周りや新芽、茎に灰色のカビが発生する。低温多湿を好み、害虫の被害で木が弱ったり、風通しの悪い場所で、初夏や秋に発生する。
ベンレート水和剤等の殺菌剤を散布する。
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スス病 |
葉や茎などがススが被ったようになる。コナジラミなどの害虫の排泄物を基にして発生する。植物を枯らすというよりは光合成を阻害し、大量に発生すると木を弱らせる。
原因となっている害虫を駆除する。
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モザイクウイルス病 |
最も恐ろしい病気は、ウイルス病である。ウイルス病は、かなり多くの種類の植物に感染が見られるが、バオバブでも感染する可能性がある。
ウイルスに感染すると、葉の色が緑と薄緑〜黄色のモザイク状になる症状や、葉の変形、萎縮が見られる。害虫などが見当たらないのに、新しい葉においてこうした変形が継続的に見られる場合は、ウイルス病を疑う必要がある。
ウイルス病は、アブラムシ、その他の害虫によって媒介されるほか、病樹に触れたハサミ、人間の手などからも感染する。また、種子にも感染する可能性がある。
おかしいな?と思ったら、隔離して様子を見ることが必要、手やハサミなどで媒介するので、疑いのある植物に触れたら、健全な植物に触れないこと。
ウイルス病は不治の病であり、現在においても治療法はない。感染した場合、他への伝染を防ぐために、その樹は焼き捨てるしかない。
ICTV(国際ウイルス分類委員会)では、バオバブに感染するウイルスとして
CSSV(Cacao swollen shoot virus カカオ膨梢ウイルス、バオバブが感染すると葉の黄ばみ症状となる)
が、実験的な感染では、
OkMV(Okra mosaic virus、オクラモザイクウイルス)
CYMV(Cacao yellow mosaic virus カカオ黄色モザイクウイルス)
が報告されています。
*カカオ、オクラとも、バオバブと同じアオイ目の植物
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