ぱんさのマイナー植物園/バオバブ王国

標準的な栽培方法

 
 
はじめに

 バオバブの自生地は、マダガスカル、アフリカ、オーストラリアのサバンナです。自生地の気候については、「バオバブの自生地の気候」を参照してください。
 バオバブには、かなりの適応力がありますが、基本的には、乾季と雨季、つまり休眠期(落葉〜新葉展開まで)と成長期(新葉展開後〜秋)をきちっと区別した(メリハリを付けた)栽培をすることが必要です。
 日本では、温度管理の点から、自生地とは逆になりますが、冬季を乾季、夏季を雨季として管理します。
 成樹の雰囲気からは多肉植物の様に思えますが、栽培的には(休眠期のある)熱帯樹木と考えた方がいいでしょう。
 この「標準的な栽培方法」は、「Adansonia digitata アダンソニア・ディギタータ」を基準にしています。バオバブの種類によって若干の違いがある場合があります。種類別の栽培特性については、「バオバブの種類別栽培特性」を参照してください。
 剪定や仕立て方については、別ページの剪定・仕立て方法にまとめてありますので参照ください。


 
発芽後〜定植

  • 発芽後は、ひょろひょろと徒長させないように、日光によく当てる。どんな植物でもそうだが、小さなうちは、土は乾燥させないようにする。
  • 本葉数枚になれば、肥料を与えてよい。濃度には注意。肥料等については、下記の「施肥・肥料」を参照のこと。
  • ポットから根がはみ出してきたら、定植する。ジフィーポットで播種・育苗した場合、そのまま鉢に植えることができる。
  • 定植の方法、用土等については、下記の「植替え・用土」を参照のこと。
 
日照・栽培環境

  • 自生地では陽射しをさえぎるものがないので、直射日光にガンガンに当てる。一方で蒸れることは嫌うので、風通しのよいところで栽培する。つまり、春(新葉展開後)〜秋は、屋外の直射日光下で栽培するのが望ましい。室内や温室内で栽培すると、徒長しやすく、病害虫にかかり易い軟弱に育つ。
  • 1年中室内で栽培するとひょろひょろと徒長するので、バオバブは、室内鉢物としては不向き。室内で育てたいのなら、他の植物(観葉植物)の方がよい。
 
温度管理

  • 人間がダウンしそうな真夏日、熱帯夜が続く時期がバオバブの最盛期で、ぐんぐん成長する。
  • 最低温度は5℃〜15℃程度で、これ以下の低温には耐えれない可能性が高い。よほど温暖な土地や置き場所でない限り、冬季は温室か室内での保護+加温が必須。露地植えは、南西諸島(沖縄等)以外ではムリ。
  • 次の項目にも記載しているが、冬季に灌水を続けると低温の影響をまともに受ける
 
灌水(水やり)

  • 春(新葉展開後)〜秋を雨季・成長期とし、十分な灌水をする(「十分な灌水」を誤解する初心者さんもいるようなので、補記しますが、灌水は、表土が乾いたら鉢底から流れ出る量の水を与えるのが常識。無条件に毎日灌水するという意味ではない。植物が必要なときに、必要な量を与えるという意味なので誤解がないように。)。根元だけでなく、木の全体に灌水する。春(新葉展開後)〜秋は、屋外・雨ざらしで栽培すると丈夫で元気な樹になる。

  • 冬季(休眠期)に向い、灌水管理と温度低下により、葉の黄化、落葉がはじまったバオバブAdansonia grandidieri
  • 冬季は、徐々に水を控えめにして(注)、落葉させ、最寒期(12〜2月)には完全に断水するか月1度程度にする。ここで、灌水を続けると低温の影響を受けて根腐れして枯れる可能性が高い。
  • 断水し休眠した状態では、かなり耐寒性がある。断水するのは耐寒性を高めるためであって、気温・日照とも常春、常夏の環境がある場合は、断水しなくてもかまわない
  • 適期より遅れて播種した場合など、かなり小さい木(木というか芽というか・・)で冬季を迎える場合、地下塊根がまだ発達していないため、断水すると衰弱する可能性がある。加温により夏並みに温度を高くして、灌水を続けるしかない。
  • 冬季に向けて水を控えめにしはじめると、幹(幼木においては、地下塊根)の肥大が進む。
  • 春は、自然に新葉が展開するまで灌水は控える。ここで、あわてて灌水をしたり、雨ざらしにすると根腐れして枯れる。
  • これは、ガーデニングの常識であるが、鉢皿に水を一切溜めてはいけない。屋外に置く場合は鉢皿は不要である。
(注)徐々に水を控えめ

 「毎日灌水」→「1日おきに灌水」→「3日おきに灌水」→「1週間に1度灌水」→・・・と、段階的に回数を少なくするということ。
1回の水の量を減らすという意味ではない。


冬季へ向かう潅水の注意

 マダガスカル原産のバオバブのうち、南方系のグランディディエリ、ルブロスティパ、ザ、は、9〜10月頃、最低温度が下がると、成長が止まり冬芽を形成するので、潅水を控えめにするということが実感できるが、一方で、最も気温の高い地域の北方系のバオバブである、マダガスカリエンシス、ペリエリ、スアレゼンシスは、成長が継続する。北方系は寒さに強いのではなく、寒さを知らない植物なので、お調子に乗って潅水を継続すると痛い目に合うので注意する。
 
植替え(移植)・用土

  • 植替え(移植)は、成長期である6月〜8月に行なう。これ以上遅れると、根張りができる前に冬季が来て、冬季に生き残っても、翌年春にグズる可能性がある。
  • いきなり大きい鉢を使うより徐々に大きくした方が、しっかりした樹になる。
  • 直根は、水分や栄養分を蓄えるため塊根状によく発達するが、細根がびっしり張るということはないため、移植時には根鉢は崩れ易い。崩れやすい根鉢をできる限り崩さないようにした方が、伸び伸びと育つ。
  • 培養土は、微酸性〜中性で通気排水の良いものと考えられるが、ごく普通のホームセンターの園芸用培養土なら問題ない。1〜2割程度、軽石を配合する。
  • 鉢は、陶器製の鉢(駄温鉢)でもプラ鉢でもよいが、陶器製の鉢の場合は柔軟性がないので、直根が発達すると株が浮き上がってくる可能性がある。プラ鉢の方が良いかも知れない。伸び伸びと育てるのなら、直根が発達するので深鉢が望ましい。盆栽風に育てるのであれば、必然的に浅鉢となる。
  • 鉢底には、1cm程度軽石を敷き、通気・排水を良くする。
 
施肥・肥料

  • バオバブは、肥料がかなり効く植物である。
  • ハイポネックス(下写真)等の液肥を1000倍に希釈して、成長期(雨季)に、月3回程度を上限として与える。(当然、移植後2週間以内には与えてはならない。)
  • 市販の油粕+骨粉の玉肥(下写真)(商品例:花ごころ)や白つぶ肥料(商品例:ハチパラエース)などを与えても良い。(当然、移植後2週間以内には与えてはならない。)
  • 市販の油粕+骨粉の玉肥が一番手間がかからないのでお薦め。このような有機質の肥料には、カビが生え、コバエが湧く。それが自然なのだが、それが理解できない・気になる方は屋外で栽培している場合にのみ利用した方がよい。
  • 肥料は、与えた方がよいが、めちゃくちゃ与えすぎると木ばかり大きくなって、樹姿がくずれる。控え目がよい。
  • 改めて言うまでもないが、休眠期には施肥してはいけない。

ハイポネックス

油粕+骨粉の玉肥
 
年中管理

バオバブ年中管理の基本モデル

*これはあくまでもモデルである。地方、その年の気候、種類によって異なるので、この図は厳密なものではない。
*植物の状態を見ながら管理されたい。
 
春になっても萌芽しない!

 既に萌芽する時期になっても、なかなか萌芽しない理由はいろいろあります。(萌芽の時期は、種類、地方、栽培環境によって異なります。これを理解した上で、萌芽しないことを悩みましょう。萌芽時期でもないのに、萌芽しないと悩んでいてもしかたありません。)
 
理 由 原  因 対  応
枯れている
根腐れして半死状態
低温に当てた。
低温な休眠期に灌水することにより根腐れを起してしまった。
 地下部は腐ってぶよぶよになっており、それが幹まで達して幹がふにゃふにゃになっている場合は助かりません。
 直根の一部分のみの場合は、腐っている部分を切り取って植えれば、発根して助かる場合もあります。
根先がダメージを受けた 成長が止まる休眠期寸前、あるいは休眠期に植替えをした。
根を低温にさらした。
 ダメージが直根に達してない場合は、萌芽はかなり遅れますが、時間がかかっても萌芽する可能性がありますので、諦めずに待ちましょう。
休眠芽がダメージを受けた 低温な休眠中に枝先を枯れ込ませた。
休眠期寸前、休眠中に枝先を剪定した。
 バオバブは、休眠前に枝先に休眠芽を作ります。これが低温で枯れ込んでなくなったり、成長が止まる休眠期寸前や、休眠期に剪定して切り取ったりすると、芽のない腋(葉のあった場所)に芽を形成しなければなりませんので、萌芽は遅れます。
 根がいたんでおらず、腋が残っていれば(子葉があった場所より下まで枯れこんだ場合は絶望的です。)、時間がかかっても萌芽しますので、諦めずに待ちましょう。
 

支柱の立て方

  • バオバブは、一気に成長するために、強風にあおられて斜めになってしまう場合が多い。それが気になる方は、支柱を立てる。
  • 株元に1本支柱を立てても安定せず支柱ごと倒れるので、ラン支柱を三ツ手に組んで、それを支えにして中央に支柱を立てればよい。
  • 支柱に樹を結束してからは、幹の成長に合わせて結束が幹に食い込むことがないよう注意する。

 

害虫・病気

 病害虫は多くの場合、風通しが悪い、枝葉が混みすぎている、別な理由で植物が衰弱している等、栽培環境が悪い、栽培状態が悪いなどで発生します。真夏で盛んに成長しているときよりも、春又は初夏の芽が出始めや、秋に成長が止まったときに発生しやすいものです。
 アブラムシ等害虫は、他の病気を媒介したり、植物を弱らせて、その結果、他の病気にかかりやすくするので、気楽に考えて放置することなく、早めに対処する必要があります。

スズメガの幼虫  スズメガ(セスジスズメ)の幼虫が、葉を食害する。大きくなる幼虫なので、食べる量も半端ではない。いつのまにか丸坊主ということになる。見つけ次第、補虫すること。
 (セスジスズメは、通常、ブドウ科:ヤブカラシ、ノブドウ、ツリフネソウ科:ホウセンカ、サトイモ科:サトイモ、テンナンショウ、コンニャク、カラスビシャク、ムサシアブミ、ヒルガオ科:サツマイモを食害するが、近くにそれらがある場合、成虫がバオバブに産卵して被害を与える可能性がある。)
 オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布する。
シャクガの幼虫  シャクガの幼虫(俗に言うシャクトリムシ)が、葉を食害する。見つけ次第、補虫すること。
 オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布する。

アブラムシ  芽先、若葉に付く(右写真)。アブラムシが付くと成長が阻害され、植物を弱らせる。モザイクウイルス病を媒介する可能性もあるので、放置しておかず早めに駆除する。
 アブラムシは小さく、手や接触性殺虫剤系の農薬では殺虫しきれないので、オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を用いて殺虫する。
オンブバッタ  オンブバッタという名であるが、どの個体もオンブしているわけではない。
 葉を食害することがある。どこからか飛んできて食害するので、捕虫は難しいしキリがない。
 オルトラン水和剤、スプレー式のGFオルトランC等の浸透移行性殺虫剤を散布しておくと予防できる。
コガネムシ幼虫  コガネムシの幼虫(右写真)が、土中で根を食害することがある。
 夏以降、水を与えてもしおれるなどの症状が発生した場合、単に根腐れの可能性もあるが、コガネムシの幼虫による根の食害の可能性があるため、土や根の状態を確認する方がよい。
 成虫を見かけたら、産卵している可能性があるので、オルトラン粒剤等の殺虫剤を用いて殺虫する。
ハダニ  栽培環境・方法が良くないとハダニの発生が見られる。ハダニは、葉裏につく0.5mm程度のムシ(というか本当はクモに近い生き物。)である。ハダニが付くと、葉は、カスリ状に白っぽくなり弱々しくなる。
 ハダニを予防するためには、灌水時に葉の表だけではなく裏も水をかける。ホースで勢いよく植物全体に灌水する環境ではあまり発生せず、ベランダ園芸、室内園芸などジョウロ利用の場合に良く見られる。ハダニは通常の殺虫剤は効果がないので、ハダニ専用の農薬を用いる。当然、葉の裏に散布しないと意味がない。
 ハダニと似た症状をもたらす害虫に、コナジラミ、グンバイムシ、スリップス(アザミウマ)がある。
コナジラミ  コナジラミの成虫は、葉裏につく1〜2mm程度の白いハエのようなムシである。触れると飛び立つ。幼虫は、成虫と同じく葉裏につく。植物から吸汁し弱らせる。コナジラミが付くと、その排泄物によりスス病が発生し、葉などが黒くなる。
 温室、室内では、植物に葉があれば1年中発生する。
オルトラン水和剤、アクテリック乳剤を用いる。

アクテリック乳剤の使い方
アオバハゴロモ  アオバハゴロモの成虫は、茎につく9〜11mm程度の白い虫である。セミに近い仲間。触れるとぴょんと跳んで逃げる。分泌物は真っ白のワタ状。幼虫は、体にワタ状のものを付ける(写真、上のほうにワタ状の分泌物が見られる。)。
 草木の汁を吸収する。(見た目が悪い以外の)実害はあまりないが、大量に発生すると、植物を弱らせることがある。
 大量に発生する場合は、殺虫剤を散布する(薬剤には弱いようなので、大方の園芸用殺虫剤は効く。)。
ナメクジ  屋外や温室で播種するような場合、発芽したての子葉、本葉、胚軸を、ナメクジに食害される場合がある。
 ナメクジには通常の殺虫剤は効かない。専用の薬剤を使う方法があるが、根絶やしも不可能なので、幼苗のときのみの対応として、播種床にナメクジを近寄らせない工夫をする。
灰色カビ病  葉の基部等が丸く茶色くなり、患部の周りや新芽、茎に灰色のカビが発生する。低温多湿を好み、害虫の被害で木が弱ったり、風通しの悪い場所で、初夏や秋に発生する。
 ベンレート水和剤等の殺菌剤を散布する。
スス病  葉や茎などがススが被ったようになる。コナジラミなどの害虫の排泄物を基にして発生する。植物を枯らすというよりは光合成を阻害し、大量に発生すると木を弱らせる。
 原因となっている害虫を駆除する。
モザイクウイルス病  最も恐ろしい病気は、ウイルス病である。ウイルス病は、かなり多くの種類の植物に感染が見られるが、バオバブでも感染する可能性がある。
 ウイルスに感染すると、葉の色が緑と薄緑〜黄色のモザイク状になる症状や、葉の変形、萎縮が見られる。害虫などが見当たらないのに、新しい葉においてこうした変形が継続的に見られる場合は、ウイルス病を疑う必要がある。
 ウイルス病は、アブラムシ、その他の害虫によって媒介されるほか、病樹に触れたハサミ、人間の手などからも感染する。また、種子にも感染する可能性がある。
 おかしいな?と思ったら、隔離して様子を見ることが必要、手やハサミなどで媒介するので、疑いのある植物に触れたら、健全な植物に触れないこと。
 ウイルス病は不治の病であり、現在においても治療法はない。感染した場合、他への伝染を防ぐために、その樹は焼き捨てるしかない。

ICTV(国際ウイルス分類委員会)では、バオバブに感染するウイルスとして
CSSV(Cacao swollen shoot virus カカオ膨梢ウイルス、バオバブが感染すると葉の黄ばみ症状となる)
が、実験的な感染では、
OkMV(Okra mosaic virus、オクラモザイクウイルス)
CYMV(Cacao yellow mosaic virus カカオ黄色モザイクウイルス)
が報告されています。
*カカオ、オクラとも、バオバブと同じアオイ目の植物

基本的な薬剤の組み合わせ。バオバブの一般的な害虫・病気には対応できる(ハダニを除く。)。
写真は、粉末の分包タイプ。割高ではあるが少量を計測なしで使用できる。
殺虫剤:オルトラン水和剤 浸透移行性殺虫剤。食害、吸汁するほとんどの昆虫に効果がある。浸透移行性なので、下手な散布をカバーできる。
殺菌剤:ベンレート水和剤 うどんこ病、灰色カビ病等カビ類を原因とする病気に効果がある。
展着剤:ダイン
植物の本数が少ない場合、アブラムシ、ガ等の幼虫等には、スプレー式のGFオルトランCが便利。
ただし、病気に対しての効果範囲は狭い。
スミチオン(乳剤、水和剤、スプレー)は、一部のバオバブに薬害を生じさせる可能性があるので、散布しない方がいいでしょう。

 

 
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