幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 10月6日 ● 上原の涙。

 上原がペタジーニを敬遠気味の四球で歩かせた後、マウンドを蹴りさらに涙まで流したシーンを見て「あ、もしかしてこれで日本のプロ野球も変わるかもしれない」と思いました。長年良識あるファンからあれだけ非難をされても変わらなかったプロ野球界の悪しき伝統、ファン無視の醜いタイトル争いが、今後はファンのためのエキサイティングなタイトル争いへと変わる予感がしたからです。

 毎年シーズン終盤になると、プロ野球各球団は自チームで個人タイトルを獲得できそうな選手のために、当然のように勝負を度外視した無茶をします。かつてはそれがペナントの優勝争いにまで影響したことがありました。

 昭和57年10月18日、中日がいよいよ優勝を決めようかという最後の大洋戦。この時、中日・田尾と大洋・長崎は激しい首位打者争いをしていました。大洋は直接対決で田尾を連続5打席敬遠、見事(?)長崎は首位打者を獲得しました。対して中日は、田尾こそ首位打者を逃しましたが、一番打者が全打席出塁したのですから、当然試合に勝ち優勝を決めました。この時2位だった巨人にしてみれば腸の煮えくり返るような出来事でしたし、そもそもペナント争いよりも首位打者争いを優先するプロ野球界の発想そのものがおかしいのは誰が考えたってわかります。

 これ以後もご存知のように様々なファンの期待を裏切り続けたタイトル争いが毎年ありました。首位打者争いをしている選手は様子を見ながら出たり引っ込んだり。ホームラン王争いをしていたら、直接対決ではまずストライクを投げてもらえません。盗塁王争いでお互いに走らない協定を結んでタイトルを分け合った時などは、まさにファン無視の愚挙としかいいようがありませんでした。

 昭和60年バースが王の本塁打記録55本に並びかけようとした時も、巨人投手陣がみんなバースにボール球を投げ続ける中、ひとり江川が勝負したことがあり美談のように扱われましたが、そもそもあれが当たり前の行為なのです。マスコミもとりあえず醜いタイトル争いに対して非難はしますが、それもその時だけのこと。後は知らん顔してタイトルを取った選手を褒め称えています。本当はそんなカタチでタイトルを取ったことを忘れずに、ずっとブーイングを浴びせ続けるだけの見識が欲しいと思います。

 今回は巨人のルーキーにしてエースの上原が、木田以来の新人20勝がかかっているという場面での涙ですから、マスコミも飛びつきますしファンの注目度もやたらと高くアピール効果抜群です。これが例えばマリンスタジアムで小宮山が泣いても誰も見ていませんから意味はありません。上原の涙ひとつが百のマスコミの非難よりもはるかに世の中を動かすチカラがあると思います。

 海の向こうではマグワイアとソーサが2年連続で爽快なホームラン王争いを演じてみせました。こういう情報がリアルタイムで日本にも入ってくる時代に、今回の上原の強烈なアピール。これで変われなければ、プロ野球はダメかも知れません。それほど彼我の差ははっきりしています。上原なんか、今度敬遠させられたら巨人やめて大リーグに行ってしまうでしょうからね。

とりあえず、読むたびに(1日1回)

を押してください。
日記猿人という人気ランキングに投票されます。
結構更新の励みにしているので、ひとつよろしく。


前日翌日最新