幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 10月5日 ● 盛田昭夫の講演。

 僕にとって盛田昭夫は高校(彼の時代にはまだ旧制中学ですが)の大先輩にあたります。もちろん個人的なつながりはありませんが、僕の在学中に高校が創立百周年を迎え、その記念事業のひとつとして彼の講演会がありました。

 名古屋の鶴舞公会堂に現れた盛田は「東京から自前のジェットヘリを飛ばして名古屋空港まで来たが、名古屋空港からここまでの方が時間がかかった。こんなアクセスの悪い空港では名古屋の発展はない」ということから講演を始めました。確かに空港のアクセス問題は、未だに名古屋都市圏のアキレス腱なわけで、当時海外を飛び回っていた盛田には、それがよくわかったのでしょうが、あいにく飛行機に乗ったことさえなかった僕には「自前のジェットヘリで来た?偉そうなオッサンだな」くらいの感想しかありませんでした。盛田が中部新国際空港の建設推進に熱心だったことなどもちろん知りませんでした。

 続いて「孫が欲しいというからピンクレディーのレコードを買ってやったが、あんな音楽では子どもたちに良い影響を与えるとは思えない。もっと上質な音楽が日本人にも必要だ」などと話し始めました。CBSソニーを設立しコロンビア映画を買収した盛田の関心は、早くからコンテンツに向いていたことが窺えるのですが、残念ながら当時の僕には「ピンクレディーの良さがわからないとは、単なるジジイだな」という感想しか持ち得ませんでした。

 今ならあの世界の盛田昭夫(米誌タイムの「20世紀の20人」に日本人でただ一人選ばれたということですからね)の講演なのですから、こうして話題のひとつひとつにもそれなりに興味をもって聞くこともできたでしょうが、当時は盛田昭夫よりもピンクレディーに興味がある年頃でしたから、とても彼の話を十分に受け止めるだけの素地を持ち合わせていませんでした。今思えば実におバカな高校生です。結局僕は講演が始まって5分で寝てしまい、ハッと気づいたら講演終了30秒前でした。道理で未だにジェットヘリとピンクレディーの話を覚えているわけです。その2つを聞いただけで寝てしまいましたからね。

 ちなみにこの時の記念事業もうひとつの出し物はダークダックスの公演。マンガさん(30才以下の人には誰がマンガさんで誰がゾウさんでなんてわからないだろうなぁ。そもそも、そのあだ名はなに?って感じかな)が、やはり高校の卒業生だった縁なのですが、こちらは一応寝ないで見てはいました。「なんでうちの高校にはアイドルの卒業生がいないんだろう?」と残念に思いながら。

 盛田昭夫の後年の保守的経済人としての言論活動はともかく、僕にはジェットヘリで颯爽と現れるカッコつけたソニーのミーハーなオジサンという高校時代の印象が、今回の訃報に接して最初に思い出されました。多分根はそのままの人だったんじゃないかと、なぜか今でも思っています。

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