幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 7月5日 ● 退屈なチャンピオンよりも。

 雨にたたられながらも毎日熱戦が繰り広げられてきたウィンブルドンも、結局サンプラスとダベンポートの優勝で幕を閉じました。と言うよりも、アガシとグラフが負けて幕を閉じたと言ってもいいかも知れません。

 ご存知のようにアガシとグラフは、ともに長年のスランプからようやく抜け出して先月の全仏オープンで復活優勝を遂げたベテランです。2人とも辛く苦しい戦いの末にレッドクレーの王者となりました。そしてまたこの2人は常に観客を味方につける魅力溢れるチャンピオンでもあります。

 全仏での決勝戦、2人とも観客の声援に後押しされて勝利を得ました。このウィンブルドンは、そんなファンの声がずっと彼らの背中を押し続けていたような気がします。最初に2人が負けて幕を閉じたと書きましたが、それは全仏からウィンブルドンへと続く長い復活劇という戦いがようやくこの決勝戦で終わったということです。

   彼らが敗れた今年の芝のチャンピオン、サンプラスとダベンポートは、そういう意味では復活劇の幕引きをするには相応しい相手でした。サンプラスはロイ・エマーソンに並ぶ史上1位、12個目のグランドスラムタイトルをこれで獲得したわけですが、その記録の偉大さに比べてエキサイティングさせてくれない実力者です。彼は恐らくテニス史上最も完成されたオールラウンドプレーヤーだと思いますが、かえってその完璧さが、どこか退屈に感じさせるのかも知れません。

 またダベンポートも素晴らしい実力者です。この大会で世界ランク1位に返り咲き、恵まれた素質と若さから当分彼女の時代が続いても不思議はありません。素朴で飾らないキャラクターも実に好感が持てます。しかし、いくら彼女が強くて良い子でも、やはり退屈なチャンピオンであることには間違いないのです。

 アガシもグラフも2人の退屈なチャンピオンよりも、はるかに印象的なプレーを見せて、そしてただ強さしか感じさせない2人に敗れていきました。アガシに負けたラフター、グラフに負けたルチッチ、サンプラスに負けたヘンマンももまた魅力的な敗者でしたが、やはりアガシとグラフにはかないません。まさにこれがカリスマというものなのでしょう。

 9月にはグランドスラム最終戦の全米オープンがあります。2人はどんな姿を我々の前に見せてくれるのか、今から待ち遠しい思いがします。


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