幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 7月3日 ● 「バーンアウト」はテニスだけ?

 朝日新聞の夕刊1面にテニスの女王マルチナ・ヒンギスのカラー写真入りで「燃え尽き病10代襲う?」という見出しの記事が載りました。ウィンブルドン1回戦で16才のエレナ・ドキッチにヒンギスが完敗したことから、女子テニス選手の「燃え尽き症候群(バーンアウト)」問題を取り上げて、ヒンギスがもうコートに戻ってこられないのでは、という憶測記事を流しています。なんか今さらというか、いかにも記事がなかったから穴埋めに1面にしてみました、という印象ですが、それにしてもどうしてテニスだけ「バーンアウト」が問題になるのでしょうか?

 テニス界でバーンアウトが問題になったのは、はるかに昔のことです。記事では1990年代前半に活躍した天才少女ジェニファー・カプリアティのことを取り上げていますが、それよりもさらに10年くらい前にトレーシー・オースチンやアンドレア・イエーガーといった10代の女子選手がバーンアウトしています。

 女子テニス選手は女子の水泳選手や体操選手などと同じく10代半ばで一気に世界のトップ10入りを果たすような選手が多くいます。いわば早熟な競技なのですが、水泳や体操は一度トップに立つと、20才を超えたくらいで早々に引退してしまう場合が多いのに対し、テニスではそのまま30才くらいまで頑張る選手が多くいます。クリス・エバートもシュテフィ・グラフも10代でトップに立ち10数年間頂点で頑張りました。

 水泳選手、例えば岩崎恭子が14才でピークを迎えて、その後は伸び悩んでいても、それは「バーンアウト」とは呼ばれません。単に彼女は早熟の天才だったというだけで終わりです。ところがテニスで同じケースの場合は「バーンアウト」と呼ばれ問題になります。なぜか?それはテニスが興行だからです。10代半ばでトップに躍り出てくる女子選手は当然注目度も高く客を呼べるスターです。興行的に大事なスター選手だからこそ、途中で潰れてしまっては困るから問題になるのです。

 テニスは水泳や体操と違ってプロスポーツとして確立しています。世界的な有名人になれて大金も稼げます。また彼女たちが活躍することで生計を立てている人がたくさん周りにいます。だからこそ多くの女子選手は引退せずに30才くらいまで頑張るのでしょう。単にオリンピックに出て金メダルを取ることだけが目標だったら、テニス選手の多くも20代前半で引退しているのではないかと僕は思っています。

 ヒンギスがバーンアウトするとすれば、すでに18才で名誉も富も手に入れてモチベーションが低下してしまうことからでしょうが、僕はその可能性は低いと思っています。今回は母親のメラニーさんが大会に同行しなかったことや、グラフに全仏で負けたショック、芝への切り替えが遅れたこと、そして何よりも伸び盛りのドキッチがとんでもなく調子が良かったことから思わぬ敗戦を喫してしまったのですが、だからと言ってヒンギスがいきなりバーンアウトとはいかにも短絡的です。

 なにより現在の女子テニス界は、ヒンギス世代が鎬を削って争っています。一人で年上のチャンピオンたちと戦っていたオースチンやカプリアティの時とは全く状況が違います。ウィリアムズ姉妹やクルニコワ、ルチッチ、ドキッチら同世代のライバルが支えとなって、ヒンギスの「バーンアウト」を許さないのではないかと僕は思っています。


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