幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 5月19日 ● 1億使っても、まだ2億。

 高額納税者の発表がありました。サラ金や健康食品などいかにも時代を象徴しているような業種の面々が並んでいます。69億円も税金払うなんてどんな気持ちだろう、などと想像もつかないことを考えてみたり、なんで石橋と木梨はこんなに稼ぎに差があるんだろう、などと思ったり。

 いずれにしても自分の微々たる収入と引き比べてため息をついているそんな大多数のビンボー人の目に突き刺さる一行のコピー。「1億使っても、まだ2億。」そう、ドリームジャンボ宝くじの広告です。いよいよ1等賞金2億円前後賞5000万円、合わせて3億円という時代がやってきたのです。

 「3億円」というのは日本ではある意味、大金の象徴のような額です。日本の犯罪史上最も有名(?)な「3億円強奪事件」の、あの3億円。当時に比べれば随分貨幣価値が下がったとは言え、今でもサラリーマンの生涯年収に匹敵する額です。これを大金と言わずしてなんと言いましょう。

 ドリームジャンボの広告を考えたコピーライターも、絶対にこの3億円事件を思い浮かべたはずです。「日本全国で3億円事件。」とかなんとかのコピーも作ってみたと思います。しかし、やはり宝くじに犯罪のイメージはそぐわない、なんて反対意見も出てきたりして、結局ボツにされたのでしょう。

 そこで出てきたコピーが「1億使っても、まだ2億。」だったんでしょうね。実に切れ味の良い、しかも心に届く実感できるコピーです。僕はこの広告を初めて見た時、思わず感嘆の声を挙げてしまいました。

 このコピーの素晴らしいところはどこか。それは3億円という一般人には実感しにくい大金を「1億+2億」と分解してみせたことです。3億と聞いても3億円事件しか思い出せず、なんの使い道も思いつかない人間に対して、1億円(一応満足できる良い家が買える額だな)+2億円(贅沢しなければ遊んで暮らしていけそう)という構図で、3億円を実感しやすいレベルにまで翻訳してみせたところがコピーライターの冴えだと思います。

 僕の周りのコピーライターに聞いてみても、このコピーは絶賛です。単にカッコをつけているだけの広告ではなく、コピーだけで宝くじを買いに行かせる力があるからです。恐らく業界の広告賞などには、あまりノミネートされないかも知れませんが、僕はこれぞビジネスとしてのコピーライティングのお手本だなぁ、と久々に感心しました。

 もっともそう言っていても、僕は宝くじは多分買わないけどね。あれは半分以上寺銭に取られてしまう極悪非道な博打だから、手を出さないことにしているんです。


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