幹事クリタのコーカイ日誌2021

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3月10日 ● 原作から消えたキャラ。

 落ち目のフジテレビドラマの救世主になりつつある月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」ですが、第8〜9話は原作の中でもミステリ度が高い「アイビーハウスの謎解き」編でした。僕は原作を片手に見ていたのですが、セリフがほぼ同じところが多く、セットや美術も含めて原作に忠実に再現していることを確認し感心しました。力の入った作品に仕上がっていて視聴者の満足度も高いと思います。

 俳優陣も達者な人を揃えていて、特に今回の犯人役である橘高役の佐々木蔵之介はさすがの存在感と表現力で、ドラマを見ていて改めて佐々木の名優ぶりを堪能した視聴者が多かったのではないかと思いました。原作を読みながら見ていると、数多くの伏線のシーンでの演出や演技に注目してしまいますが、そのあたりもちゃんと計算されていて素晴らしい出来だったと思います。

 それだけに残念だったのが原作と改変した部分、つまり原作で登場する「相良レン」という男子大学生のキャラを消してしまい、そこに刑事の風呂光聖子を押し込んだことです。相良は主人公の久能整と同じ天達ゼミの学生で、だからこそ天達に誘われてバイトとして2人が一緒に山荘に来ることにも不自然さがないのですが、ここに女性刑事の風呂光が突如として参加するのはあまりにもおかしいし、天達のような思慮深い人物が男ばかりの中に女性を、しかも刑事を入れるのは不自然過ぎます。

 また相良は久能とは正反対のいわゆる「陽キャ」なので、それゆえに相良がいる意味があります。風呂光は決して明るいキャラではない上に才気あふれるタイプではなく努力の人です。今回求められている鋭い感受性と観察力には乏しいですから、天達が誘うというのはちょっと無理があります。相良のセリフを全て風呂光に喋らせるわけにはいかないので、本来相良の登場シーンのところだけが原作と変わってしまい全体の展開に強引さが残ってしまいました。

 どうしても久能と風呂光を近づけて恋愛パートを制作側は入れたいと考えているようですが、ここまでずっと見てきていつもそこが不要だなと引っかかってしまう部分になっています。ドラマの風呂光が「女子」過ぎて、かえって原作の風呂光の魅力が失われてしまっているのも残念です。もちろん原作を読んでいない視聴者にはそれほど違和感はないのかも知れませんが、やはり緻密に構成されているクオリティの高い原作と比較してしまうと、少々の破綻があるだけでも惜しいと思います。

 恐らくこれだけヒットしたことでドラマのパート2も制作されることでしょうし、映画化も検討されているだろうと思いますが、ドラマとしても面白いだけに、犬堂我路が大人過ぎたこと以上に風呂光のキャラが改悪されて、エピソードの中で重要なキャラが消えてしまったことが残念でなりません。



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