幹事クリタのコーカイ日誌2021

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12月14日 ● 伊達公子の砂入り人工芝弊害説。

 伊達公子と言えば日本が誇る世界的なテニスプレーヤーであり、彼女の発信力の高さと影響力の強さはつとに知られるところです。そんな伊達が長年にわたって日本の選手が世界で勝てないのは日本に多い「砂入り人工芝」コートのせいだと主張してきているのも多くの人が知っていることでしょう。彼女がそう主張したために岐阜の長良川テニスプラザなどは砂入り人工芝コートを全てハードコートに改修したくらいです。

 彼女の言うところに一理あるのはわかります。世界で普及していない砂入り人工芝というサーフェスは、ボールが弾まないし球速は遅くなります。フットワークもハードコートやクレーコートとは違います。これに慣れてしまったら速くて弾むハードコートやクレーコートが主流の海外では太刀打ちできないというのはわかります。だからジュニアの頃からハードコートやクレーコートで練習できるような環境を整えてやりたいんだと。世界で通用するテニスプレーヤーを育成するという目的のためには極めて合理的な主張です。

 だがしかし。日本には数百万人のテニス愛好者がいて、彼らは「世界で通用するテニス」とは無関係に国内で趣味のテニスを楽しんでいます。そしてほとんどのテニス愛好者、特に人数が多い中高年以上のプレーヤーは砂入り人工芝のコートを好んでいます。なぜなら球足が遅くなり弾まないからこそラリーが楽に長く続けられて楽しめるからです。また足腰への負担も軽減されますし、多雨の日本の気候で少々の雨なら安全にテニスができることも喜ばれています。一般のプレーヤーにとっては砂入り人工芝は弊害どころか良いことだらけです。

 そして公営コートは誰のためにあるのかと言えば、当然こうした一般のテニス愛好者のためにあります。公営コートの目的は地域住民のためにテニスを通して健康づくりの一助となることです。そのために税金が投入されているのであって、決して世界で戦える選手を育てるためではありません。それなのに公営コートを地域住民が喜ばないハードコートに改修するというのは明らかに本来の目的から外れています。こんなことはテニス関係者ならわかっていることですが、テニスを知らない首長などは「あの伊達さん」が言うのだからと長良川のようにコートの改修を命じてしまいます。

 世界に通用するジュニアを育てたいという気持ちはわかりますが、それによってテニス人口の裾野を狭くしてしまうことが果たして本当に日本のテニスを強くすることにつながるのでしょうか?高い山は裾野が広いからこそです。たださえ昔に比べたらテニス愛好者は高齢化が進み総数も減ってきているというのに、さらにこんな愛好者がテニス離れを起こしかねないようなことをしたら、どんどんテニスがマイナー競技になってしまいます。スポンサーもつかなくなりテニスでは食えないとなったらジュニアの育成といったところで元も子もありません。

 トップジュニアが練習しているのは公営コートではなく地域のテニスクラブです。小学校就学前くらいからテニスクラブで練習を始めなければトップジュニアにはなれないのですから、ジュニアの育成に熱心な地域のテニスクラブがハードコートやクレーコートを用意できるようにテニス協会が資金を提供するような体制作りをするべきでしょう。テニスの裾野をこれ以上狭くすることは日本テニス界全体の危機につながります。



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