幹事クリタのコーカイ日誌2021

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12月2日 ● 金より人権を選択したテニス界。

 中国のペン・シューアイ選手が中国最高幹部による性被害を訴えた問題。SNSでの告発記事は30分で削除され、その後ペン・シューアイの行方はわからなくなりました。強い懸念を示した女子テニス協会(WTA)が中国政府に対してペン・シューアイの無事を明らかな証拠とともに示すように要求しましたが、中国政府はこれを無視し、政府寄りの報道機関がペン・シューアイの最近のものだとする動画や写真を公開。さらに北京冬季五輪ボイコットへの延焼を恐れるバッハ「ぼったくり男爵」が電話でペン・シューアイと会話をしたと語るも、さらに疑惑は増すばかり。

 発端から1ヵ月が経ち、ついにWTAは堪忍袋の緒が切れたようで、香港を含む中国全土でのテニス大会の中止を決定しました。中国は即座に「スポーツの政治化に反対する」と反発をしましたが、「中国は選手の安全に懸念を示すWTA側と、協議したのか」との質問には直接答えることはなく、また中国国内ではWTAが大会中止を発表したニュースは報じられてもいないということで、中国はこの問題をなかったことにしたいようですが、金でも軍事力でも黙らせられない相手との交渉は苦手なようです。

 このWTAの決定に対しビリー・ジーン・キングやマルチナ・ナブラチロワらテニス界のレジェンドがすぐさま支持を表明しました。中国から撤退すればWTAは推測で数億ドルの巨額なビジネスを失うだろうということですが、それでも選手の人権を選択したことにつくづく感心しました。これは東京五輪の時にも露呈したIOCの金権体質とは全く正反対の対応だけに、今後はIOCへの批判が高まることは間違いありません。すでに欧米では北京五輪への「外交的ボイコット」が言われていますが、ますますその声は大きくなることでしょう。日本政府はかなり対応に苦慮しそうです。

 テニスファンとしては素直にこのWTAの対応を称賛したいし、テニス界の良い部分が表れたと誇りに思います。テニスは何よりフェアであることを重んじるスポーツです。そうでなければセルフジャッジシステムは成り立ちません。「疑わしきは相手有利に判断する」精神こそがテニスの根本としてある限り、金よりも人権を重んじるのは当然のことです。さて、WTAの決定を受けてATP(男子プロテニス協会)やITF(国際テニス連盟)は中国での大会をどうするのでしょうか。



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