森会長が女性蔑視発言で辞任をしました。これで東京五輪を招致した時の主役だった猪瀬東京都知事、安倍首相、竹田JOC会長、森組織委員会会長の4人が揃って姿を消したことになります。「呪われた」東京五輪と最近よく言われますが、さすがに4人が4人ともいなくなるとは。招致した人たちがいないのだから、五輪自体が幻になっても何ら不思議はありません。

　ところで森会長は辞任の挨拶の時に「老人が悪いかのような表現は極めて不愉快な話だ」と述べました。全くその通りの正論です。高齢者であっても能力がありその任に相応しい人物であれば、年齢を理由に退けるのは間違っています。明らかに年齢による差別です。だから日本の会社がいつまでも定年制を見直さないのはおかしいと思っていますし、年齢によって役職を外されたりするのも間違っています。

　これが年齢ではなく性別によって待遇に差をつけたりしたら大問題になります。だから森会長自身がその発言で今回辞めることになったわけで、それに自分で気がついていないあたりが彼の限界でしょう。老人だから悪いわけではないように、女性だから悪いわけではない、全ては個々の人間の人格、識見、能力の問題なのです。森会長が「一言」で世界中からバッシングされて悪者になったのは可哀想、などという人は物事の本質が見えていません。彼が昔からこういう人物であることなど、長年の言動を見ていてとっくにわかっていたはずです。

　森会長が後任を川渕三郎氏に託そうとして大きな批判を受けたのも、彼の無理解無自覚無能の証明でした。なぜ引責辞任させられる自分がキングメーカーのように後任人事を決められると思ってしまうのか、またそれを唯々諾々と受けようとした川渕氏も川渕氏です。さすがに政権が止めに入ったことでこんな恥ずかしい人事は白紙に戻りましたが、もし実現して「森院政」みたいなことになっていたら恥の上塗りでした。

　さらに後任の会長は女性が良い、という言説もまたおかしいということに気づかなくてはなりません。最初に性別ありきでは、それもまた性差別であることに無自覚過ぎます。若い人が良いというのも同じです。組織委員会の会長に相応しい人を性別や年齢に関係なく選ぼうとなぜ言えないのでしょうか。すぐに属性で人を判断しようとする癖からそろそろ卒業しないと、台湾のオードリー・タンのような有能な人材がいても埋もれさせるばかりで、日本はどんどん世界に遅れを取っていってしまいます。