長年にわたってサントリーのBOSSはクオリティの高い、そしてエモーショナルなCMを続けてきました。長寿の人気シリーズCMはソフトバンクとかauとかもありますが、若者がメインターゲットの携帯会社と違って、BOSSのCMのターゲットが若者よりも少し上の働く大人世代だけに、中年男女にとってより「エモい」テイストを目指しているのが感じられます。

　今回新たに登場した「ザ・ドリフターズ×BOSS」のCMもそんな中年世代をまさに狙い打ちした企画です。ドリフとのコラボで「ババンババンＴシャツ」なるものが当たるのですが、そのCMは往年のドリフの名場面集。いかりや長介と志村けんが鬼籍に入ってしまった今となっては、もう二度と揃うことのないドリフが「全員集合」している姿を見るだけでグッとくる人も多いことでしょう。

　「いい湯だな」の替え歌をバックに元気な５人がコントに興じる姿が走馬灯のように次々と映し出されていくと、ドリフ世代なら笑いながらも泣けてくることでしょう。最後にBOSSのキャラクターに模した５人の似顔絵の上にタライが落ちるオチは、かつて加藤、仲本、高木が登場してオチにタライを落とされた同じサントリーの伊右衛門のCMと被りますが、これも恐らく意識してやっているのだろうと思います。

　ただ今の40〜50代は志村けんのドリフが大好きでしょうが、僕より上の世代にとってはドリフは志村ではなく荒井注なんですよね。荒井がドリフを辞めたのが1974年。もう47年も前のこと。僕は中学生でしたからしっかり記憶していますが、下の世代にとっては志村なのも仕方ないほど昔の話になりました。還暦以上の世代はBOSSのターゲットではもうないということです。