幹事クリタのコーカイ日誌2020

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4月12日 ● 青春は大林宣彦とともにあった。

 映画監督の大林宣彦が亡くなりました。肺がんということで、コロナとは関係がないようですが、大林が亡くなったことは個人的には志村けんよりもはるかに大きなショックを僕に与えました。それほど僕の青春時代は大林宣彦が作った映像に影響され感化されてきたからです。

 ご存知のように大林は映画監督デビューする前はCM界の巨匠でした。まだ僕が広告業界に入る前のことですから、あのCMもこのCMも大林が演出していたと知ったのは後のことですが、僕が10代の頃に見て「いいなぁ」と思っていたCMの多くは大林が手掛けていたものでした。僕だけではなく僕と同世代の広告制作者はみな似たようなものでしょう。

 彼のCM作品と言えばチャールズ・ブロンソンのマンダムであり、ラッタッタで知られるホンダのバイク、高峰三枝子・上原謙の国鉄フルムーン、山口百恵&三浦友和のグリコアーモンドチョコレート、レナウンのワンサカ娘など、日本のCM史に名を残すような傑作や話題作ばかりです。CMでの海外ロケや海外の大物タレントを起用したCMを作り始めたのも大林宣彦の功績です。

 そして1977年に『HOUSE』で商業映画デビューした大林は1982年の『転校生』を皮切りに『時をかける少女』『さびしんぼう』の尾道三部作を生み出します。僕が大学生から新社会人の頃に発表されたこれらの作品群は、古臭い日本映画を一気に若者に向けた映画に転換させるきっかけとなりました。尾道に旅行に行った時には当然のごとく聖地巡礼をしたものです。映画としては『転校生』が一番好きですが、ヒロインとしては『さびしんぼう』の富田靖子がナンバー1です。

 またアイドル映画の先駆者としても知られている大林ですが、何といっても1978年の山口百恵主演『ふりむけば愛』がもっとも印象に残っています。百恵映画というのは『伊豆の踊子』『潮騒』のように東宝の文芸路線に乗った端正な作品が大半で、その中で『ふりむけば愛』はオリジナル作品、サンフランシスコロケ、何といっても百恵の初ベッドシーンもあるという衝撃的で異端な映画でした。グリコのCMで培ってきた大林と百恵の信頼関係があってこそできたことなのでしょう。

 個人的な大林映画の最高傑作は尾道三部作ではなく1992年の『青春デンデケデケデケ』です。直木賞を受賞した同名青春小説が原作ですが、とにかく楽しくてハチャメチャな音楽映画で、映画館で見た時には最高にハッピーな気分になりました。僕は小説でも映画でも「青春部活もの」というジャンルが大好きなのですが、この映画はその代表的な作品のひとつです。

 大林宣彦について語り出すと本当にいろいろ青春時代を思い出してしまいます。素晴らしい作品をたくさん世に送り出してくれたことに感謝しています。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


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