幹事クリタのコーカイ日誌2019

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7月15日 ● 最強と最高の戦い。

 ウィンブルドン男子シングルス決勝。第1シードのジョコビッチと第2シードのフェデラーの頂上決戦は、まさにテニスの天界に君臨する神々の戦いでした。準決勝のフェデラーとナダルの試合も素晴らしい試合でしたが、これが極限の肉体と技術の対決だったとしたら、決勝は精神の戦いだったと思います。それほどお互いの圧力が高くて、神ではない人間が立ち入ろうものなら潰されてしまうような領域の試合でした。

 詳細な内容は省略をしますが、もっとも凝縮されたところを選ぶとしたら、もちろん最終セット8-7で迎えたフェデラーのチャンピオンシップポイントとなった40-15からの2ポイントでしょう。それまでのフェデラーのサービスゲームを見ていたら、さすがにあの場面はもう優勝するための舞台が整ったという状況でした。ゴルフなら18番ホールで30センチのウィニングパットを沈めるばかりというところです。観客も対戦相手も普通はそう思う場面です。

 しかしジョコビッチは違いました。そこからでも最強のメンタルで挽回するのがジョコビッチです。彼は過去にもそういう絶体絶命のところから生き返ってきました。今回はまさに最大のピンチでしたが、やはりそれでもカムバックするのがジョコビッチです。あそこで40-40まで持ち込んだところでフェデラーから優勝の二文字がすっと遠のいた気がしました。ブレイクされた時点でこれはジョコビッチの優勝だろうと思いました。もうフェデラーにブレイクのチャンスは訪れないだろうし、タイブレークになったらジョコビッチが勝つだろうと。

 ジョコビッチはまさに最強のメンタルをもって世界最強のチャンピオンとして君臨しています。テニスの内容ももちろん最高級の選手ですが、ピンチになればなるほど強くなる精神力の卓越ぶりが完全に人間のレベルを超えています。ジョコビッチは対人競技であるテニス選手にとってもっとも必要な武器を持っていると考えていいでしょう。対フェデラーでも対ナダルでも勝ち越していることがなにより最強の証明です。

 ただ最強のテニス選手がジョコビッチだとしても、最高のテニス選手がフェデラーであることには変わりありません。華麗で美しく見ているものを魅了するフェデラーのテニスはまさに芸術です。今大会は錦織、ナダル、ジョコビッチと続いたドローが不運でした。もしナダルがジョコビッチの山に入っていたら、フェデラーが優勝だったかも知れません。それほど最強と最高の勝負の差は紙一重でした。トータルの獲得ポイントではフェデラーがジョコビッチを上回っていたのですから。「ここぞ」で取り切れるジョコビッチが最強だっただけです。

 9月の全米でも最強の選手が大本命であることは間違いありませんが、今回のテニスを見た限りでは、最高の選手にもチャンスはきっと巡ってくるだろうと信じています。


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