幹事クリタのコーカイ日誌2019

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6月11日 ● 出勤してえらい!

 最近は頻繁に広告が炎上します。最新事例では阪急電車の中吊り広告が炎上して掲出を取り下げられました。確かに僕もこの企画はちょっと時代錯誤感あるよなぁ、と思います。自分が通勤電車の中で目にしたら多分前向きな気持ちになるというよりは、ちょっと説教臭くてウンザリしてしまうことでしょう。ただマイノリティに対する差別表現とかとは違いますから、掲出中止になるほど大炎上したことには驚きましたが。

 これに対して西武鉄道の中吊り広告が「癒される」と評判になっています。「出勤してえらい!」「電車にのってえらい!」と人気キャラクターのコウペンちゃんが褒めてくれる広告です。どちらが通勤電車に乗っていて嬉しいかと言われたら、そりゃ偉そうに上から説教されるよりも、可愛いキャラクターに「えらい!」と褒められる方が嬉しいでしょう。

 この西武の広告の良いところは、なにも難しいことを言っていないことです。理屈っぽくないし、うまいことを言うわけでもない、作意なく単純に今の状況(電車に乗って通勤していること)自体を褒めてくれるのですから、ストレートに心に響いてきます。みんな疲れていて、それでも自分を励まし頑張って今日も出勤しているからこそ、電車に乗っている自分を褒められて少し救われるのです。

 これが令和元年のビジネスパーソンにぴったりハマるということは、それだけ令和の人々は先の見えない状況に疲れているのだろうと思います。阪急の広告も昭和から平成初期あたりなら「良い広告」だと言われたかも知れません。逆に西武の広告は「バカにするな」と怒られた可能性もあります。あの頃はみんな前向きで頑張ることに意義を見出せた時代でした。給料は上がるし、出世もできる、欲しいものはたくさんあるし、将来に夢が見られた時代だったのです。「ジャパン・アズ・ナンバー1」「24時間戦えますか」の頃です。

 いま日本は平和で治安もよく清潔な国です。昭和に比べたらはるかに人々のマナーが良くなり住みやすい国になりました。それはとても誇らしいことですが、反面、明らかに閉塞感が漂っていて人々は疲れています。そして良い未来が見えにくい国になりました。東西の電車の中吊り広告で、そうした令和日本の風景が炙り出された気がします。


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