幹事クリタのコーカイ日誌2019

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5月13日 ● 佐藤浩市は三流ではない。

 つくづく最近のネットの風潮には嫌気がさします。なぜ佐藤浩市が総理の役をお腹が弱い設定にしてもらったというだけで、猛烈にネット上でバッシングを受けなければならないのか、まったく理解できません。原文を読めばわかりますが、それを安倍首相を揶揄していると受け取って批判するというのは揚げ足取り以外の何物でもないし、「三流」だとこき下ろす百田某に至ってはもはや真っ当な言論人ではないことは明らかです。

 佐藤浩市は総理という責任ある役を演じる上で、その中に少し人間らしい弱さや重圧を表現したかったということでしょう。あくまでも役作りの話であって、決して「反安倍」を主張したわけではありません。もしかしたら彼の中には「反体制」的な気分はあるのかも知れませんが、それは個人の主義主張であってどう思っていようが彼の自由ですし、そもそもそんなこと言ってもいません。その「気分」だけかぎ取って無理やり安倍首相の病気と結び付けてバッシングするのは難癖をつけているようなものです。

 ローラの沖縄の発言の時もそうでしたが、芸能人が政権を擁護するような発言の時には何も言われないのに、批判と受け取られるような発言をしただけで叩かれるのはおかしな話です。こんなおかしな風潮は以前の自民党政権の時にもありませんでした。だいたい自民党支持者であっても現政権に対しては批判的というのはごく当たり前にあったことで、権力というのは批判されることで鍛えられていくものです。批判者の声に耳を傾けないどころか言論封殺をしていたら、その先に待っているのは独裁政権でしかありません。

 いや、今日は政治の話ではなく役者としての佐藤浩市の話を書こうとしているのに、どんどん話がずれてしまいましたが、こんなことでなぜ佐藤浩市ほどの名優が三流呼ばわりされなければならないのかと思うと、腹が立つばかりです。そもそも俳優としての力量と政治的スタンスは全く関係がありません。もっと言えば力量と人格だって無関係です。三流かどうかは発言ではなく作品のみが決めることです。

 映画「青春の門」の頃から40年近く佐藤浩市をずっと見続けてきていますが、映画でもドラマでも印象的な名演が数限りなくあります。ドラマなら「青が散る」「天気予報の恋人」「新選組!」「天国と地獄」「官僚たちの夏」「オリエント急行殺人事件」など。映画なら「忠臣蔵外伝 四谷怪談」「GONIN」「壬生義士伝」など。特に三谷幸喜作品には欠かせない役者で「THE 有頂天ホテル」「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」「清須会議」、どの作品も佐藤の名演なくして成立していません。

 強さや男らしさを特徴としながらも、その裏に隠されている繊細な内面の表現ができるので、キャスティングする側からしたら「これは佐藤浩市でぜひ」と思うことが多いでしょう。というか、彼に代わり得る俳優が思いつきません。今回のように発言を曲解したようなことで叩かれるのも、佐藤浩市が役で作り上げてきたパブリックイメージがかえって災いしてしまったのかも知れないなと思います。まさに一流の俳優ゆえということでしょう。


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