幹事クリタのコーカイ日誌2018

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6月15日 ● 無防備力も女子力。

 「無防備力も、女子力なんだと思います。」

 西鉄が110周年記念で作ったポスターの中の1枚に使われていたコピーだそうです。ビジュアルは幼い女の子の写真。無邪気で飾らない姿こそが本当の自分らしさだというコンセプトだということですが、そういう意図は残念ながら汲み取れません。無防備で幼い方が可愛くて男受けするよ、という二流の女性誌の見出しみたいです。

 当然批判が起こりました。幼い女の子が被害者になる事件があったり、性被害に遭った女性に対して自衛していないなどと非難したりする風潮の中で、無防備なことに女性の価値があるというコピーは批判されて当然です。西鉄はこの広告を撤去したそうです。

 元コピーライターとして、こんなコピーを書いてしまう気持ちはわかります。ちょっと目新しいことを主張したい、ちょっと上手いことを言いたい、これまでの価値観をひっくり返したい、そういう気持ちを持っていないコピーライターはいないでしょう。たくさん書いたコピーの中に、こういう危ういキャッチフレーズが混ざることは十分あり得ます。

 僕が若手だった時代なら、多分何の問題も起きなかったコピーです。しかし、時代は変わりました。昔はセーフでも今はアウトになるのです。それだけ人々の意識は変わりましたし、またネットの発達によって一地方のポスターであっても、あっという間に世間に拡散してしまい、それが批判となって返ってきます。

 問題はこれがそのまま掲出されてしまったことです。コピーライター本人のフィルターは通過してしまっても、アートディレクターかクリエーティブディレクターが「ちょっと危ないんじゃない?」と言うべきだし、制作チームがイケイケでも営業が、営業がスルーしてもクライアントがチェック機能を働かせないといけません。無防備だったのは誰でしょう?


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