幹事クリタのコーカイ日誌2017

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5月14日 ● 伊調馨の逡巡。

 NHKの「サンデースポーツ」では毎月1人のアスリートがマンスリーキャスターとして登場します。今月は女子レスリングの伊調馨です。番組内では彼女が毎週スポーツ関係者と対談をする企画があります。今日の対談相手はシンクロの井村雅代コーチ。「鬼の指導」で有名な人ですが、指導者への道を目指す伊調としてはいろいろ学びたい対談相手だったでしょう。

 対談はずっと伊調から井村への質問だったのですが、井村の話はさすがと思わせるような内容ばかりで、厳しさの裏に選手への強い愛情と責任感があるんだということを感じさせるものでした。単に威張るだけ、怒るだけの指導者なら掃いて捨てるほどスポーツ界にはいることでしょうが、井村のような自分のためではなく選手のために全力を注いでいる指導者はどれほどいるのかと思ってしまいます。

 井村の言う「言葉は選手に伝わらない」というのは納得できました。だからこそ「指導者はたくさん言葉を持たなければならない」のだそうです。人を教えるというのは本当に難しくて、特にスポーツのような体で覚えていくものを言葉で説明することの難しさというのはよくわかります。なのに言葉を持つ努力をしていない指導者がどれほど多いことか。最近話題にはならなくなってきましたが、一時期問題になっていたスポーツ界の体罰事件はそういう怠慢な指導者が多いことの証左でしょう。

 さて、その井村が最後に伊調に言ったのが「力尽きるまで」選手を続けろということでした。サンデースポーツでの伊調の言動を見ていると、明らかにもう現役を引退して指導者になりたいという気持ちのようです。しかし井村は「開催国で選手として出る五輪」の貴重さを説き、伊調に東京五輪まで現役を続けることを勧めていました。

 それを言われても伊調はかなり逡巡していました。彼女にしてみれば五輪4連覇というかつてない偉業を達成して、もはややり尽くした感があるのでしょう。これ以上厳しい現役生活を続けていくモチベーションが保てないのも理解できます。モチベーションがあるとしたら次は地元で開催されるオリンピックだということしかありません。それが井村もわかっているからこそ伊調に強く言ったのだと思いますが、それでも伊調は迷っていました。

 伊調はまだ「力尽きた」わけではないと思いますが、モチベーションがない状態では現役続行に前向きにはなれないのも無理ありません。またレスリングのような階級別に1人しか参加できない競技では自分が退いて後進に道を譲ることも考えてしまうのかも知れません。指導者になる夢をもつ伊調ならなおさらだと思います。偉大なアスリートの去就は常に難しいものですが、彼女がどういう結論を出すのか気になります。


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