幹事クリタのコーカイ日誌2016

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6月30日 ● マーカス・ウィリスの奇跡。

 テニスの世界にずっと残るような奇跡の物語が起きました。イギリスのレッスンコーチをしている25歳のマーカス・ウィリスが起こした奇跡です。日頃は普通のテニスクラブで子どもや年配者を相手にレッスンをしているこの青年はランキング772位。ウィンブルドンの予選に出られるワイルドカードを与えられる大会を勝ち上がって予選にチャレンジ。そこで世界ランク100位台の選手たちを相手になんと3連勝をして本戦に進みました。これだけでもかなりすごいことです。なにせウィリスはグランドスラムはおろか、ATPのツアー大会にすら一度も出場したことがなかったのですから。

 さらにウィリスの奇跡は続きます。1回戦で世界ランク54位のベランキスに勝ってしまったのです。そして2回戦の相手がなんと帝王ロジャー・フェデラー。今さら説明の必要もない生けるレジェンドです。当然場所はセンターコート。テニスをする誰もが憧れる聖地ウィンブルドンのセンターコートで、同じく誰もが愛し尊敬するフェデラーとテニスができるのです。これ以上の喜びはありません。まさに奇跡の物語です。

 センターコートに入場した時からウィリスは浮足立っていましたが、それは緊張していたというよりはファンのように楽しんではしゃいでいるようでした。まるで会場から4大大会を17度制した偉大なるチャンピオンとラリーをしてみませんか、と言われて出てきた観客のようでした。笑顔を浮かべてフェデラーとアップを始めたウィリスの様子は、会場の観客のみながらずテレビを通じて見ている視聴者にも好感がもてるものでした。

 試合が始まりフェデラーのミスで1ポイントを取ったウィリスは勝ったように両手を上げ、観客も大きな拍手を送ります。第2セットに初めてゲームを奪った時にはスタンディングオベーションです。ウィンブルドンで圧倒的な人気を誇るフェデラーがここまでアウェイになるというのは、地元期待のマレーとの決勝戦以来でしょうか?いやマレー以上にウィリスは応援を受けているようでした。

 結果は当然フェデラーのストレート勝利でした。フェデラーが練習か、エキジビションをこなしているくらいのローギアで戦っていたので、スコア以上に力の差は歴然としていましたが、それでも素晴らしい試合だったと思います。奇跡の物語は爽やかに幕を閉じました。

 さて、後日譚としてこれからのウィリスはどうなるのでしょう?これをきっかけにツアープロとして覚醒していくのか、それとも異色の人気プレーヤーとしてタレント的な活動をするのか、もしくはまた普通のテニスコーチという日常へと戻っていくのか?できたら遅咲きのプレーヤーとしてまたウィンブルドンに帰ってきてくれると嬉しいなと願っています。


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