幹事クリタのコーカイ日誌2015

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12月22日 ● 悪夢のような話。

 久しぶりにMっちゃんの話です。悪夢のような出来事が起きた話をしてくれました。Mっちゃんがクライアントから大事な大事な商品を預かったんだそうです。商品と言ってもその会社の創業時のもので、博物館に置いておくような記念の商品。それを広告制作に使うために借りてきてイラストに描き起こし、戻ってきたものをMっちゃんが返却するつもりだったそうです。

 ところが先週、気がついたらその商品が入った箱がなくなっていました。デスクのゴミ箱の横に置いておいたので、誰かが空き箱と勘違いして間違って捨ててしまったと思ったMっちゃんは真っ青になりました。あまりにも貴重なものだけに恐ろしくなったMっちゃんは、上司にも周りの同僚にも紛失したと言えず、ひとりで何とか黙って見つけ出そうと考えました。ゴミを集めた業者から辿って、どこにありそうなのか問い合わせたところ、某大型ゴミ処理場に送られているということまでわかりましたが、そんなところに行ってしまっていたらもう見つけ出すのは無理です。テレビドラマじゃないんだからゴミを漁っても見つかるはずがないし、そもそもいつ紛失したかもわからないのですから、とっくに焼却されている可能性が大です。

 焦ったMっちゃんは似たような商品がネットで売りに出されていないか探したそうです。当然そんな貴重な骨董的商品が売られているわけもありません。そもそもネットで類似品が見つかったところで、それをクライアントに持っていってどうしようというのでしょう?「なくしたので似たものを買ってきました」と言えば許されるとでも考えたのでしょうか、それとも知らん顔をして返せばクライアントをごまかせるとでも思ったのでしょうか。

 このままではどうにもならないと思い詰めたMっちゃんは「逃げる」しかないと考えたそうです。会社に何も言わずに会社を辞めて行方をくらまそうと。そんなことをしたって何の解決にもなりませんし、逃げ切れるはずもないのですが、思考が全くおかしくなってきています。テストで0点を取った小学生並みの発想です。とても50代後半のオヤジが考えることではありません。

 紛失に気づいてから4時間後、逃げ出す前にあまりのプレッシャーから解放されたくて、その仕事を一緒にしていた外部のプロダクションの人間にだけこっそり打ち明けたそうです。「大変なことが起きた。驚かないで心して聞いてくれ。借りてきた商品を紛失しちゃったんだよ」と。相手はしばらく黙って聞いてからMっちゃんに言いました。「Mさん、何を言ってるんですか?あれは怖くてとても預かれるようなものじゃないから、借りずにあの場で僕が写真撮って、その写真をイラストレーターに渡したでしょ?僕が写真を撮っているのをずっと横で見てたじゃないですか」と。

 Mっちゃんはようやく悪夢から覚めました。そうか、そう言えばそんな話をして写真を撮っていたっけ。なんだ、あれは借りてこなかったのか、あー、助かった。「いやぁ、クリタさん、本当にこれまでの人生で一番ショックな出来事だったよ。今でもまだその時のショックとストレスで体調が悪いんだよ」だって。

 いやいやいや、この話を聞かされた僕はどう反応したら良いんでしょう?何も問題なくて良かったね、ですか?ストレスで大変だったね、でしょうか?そんなこと、言うはずありません。頭から尻尾まで、あまりにも突っ込みどころが多すぎてクラクラします。行動のひとつひとつ、思考のひとつひとつが間違え過ぎています。これが本当に夢の中の話ならわからなくもありません。そういう変な夢を見ることも時にはあるでしょう。でも寝てもいないのに現実にそんなことする人っていますか?

 なくなったと思った箱って結局なんだったの?中身の入った箱を確かめもせずに勝手に捨てる人がいるの?なぜ早く周囲に確認しないの?だいたい本当にその箱は現実に存在したの?そもそも預かっていないものを預かったと勘違いしたまま、そこまで気づかないで探し回っていられるものなの?イラストレーターに渡したり返してもらった事実もないのに?逃げてどうするつもりだったの?

 これでどうしてMっちゃんが「優秀な営業マン」だと、いま在籍している会社に評価されているのか、僕には全く理解できませんが、飛びぬけたエピソード製造マンであることだけは相変わらず確かです。


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