幹事クリタのコーカイ日誌2015

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11月20日 ● 錦織とフェデラーの芸術的テニス。

 昨夜のツアーファイナル、錦織とフェデラーのゲームは、テニスの面白さが凝縮したような素晴らしい試合でした。もともとクリエーティブでイマジネーション溢れる刺激的なテニスをする2人です。ツアー屈指の「テニスアーティスト」がお互いの本領を存分に発揮して、しかもそれがハラハラするようなクロスゲームになったのですから面白くないわけがありません。テニスをあまり知らない知人が見ても「面白かった!」と言っていたくらいでした。

 試合はフェデラーが先行しました。錦織は立ち上がり少し硬くなっていたようです。しかしブレイクバックをしてからは互角の展開。最後はフェデラーが7-5でファーストセットを奪いましたが、錦織も全くひけをとらない素晴らしい内容でした。

 そしてセカンドセット。またもフェデラーが錦織を引き離しにかかります。フェデラーから4-1となったところで、さすがにこれは錦織の心も折れたかなと思われましたが、なんと錦織はここから怒涛の5ゲーム連取。錦織がゾーンに入ったのです。この5ゲームの間に6ポイントしか落とさないという圧倒的なテニスを見せます。こうなった時の錦織は世界ナンバー1のジョコビッチでさえ圧倒します。フェデラーが手も足も出ない状態に追い込まれてしまい、錦織が6-4とセカンドセットを取り試合はファイナルにもつれこみました。

 ファイナルセットでも3たびフェデラーが先行。しかしまたも4-1から錦織がラッシュをかけて4-4と追いつきます。セカンドセットの再現に一気に錦織の逆転勝利かと思われました。しかし、そこはさすがフェデラー。9ゲーム目のサービスゲームで圧倒的なテニスを展開し、なんと58秒でこのゲームを終わらせてしまったのです。燃え上がった錦織の反撃の炎を一瞬にして鎮火してしまいました。後は続く錦織のサービスゲームをブレイクして試合終了。最後にフェデラーが貫録を見せつけた形でした。

 終わってみれば獲得した総ポイント数はフェデラー96、錦織93とわずか3ポイント差。惜しくも勝利に届かなかった錦織でしたが、その試合内容は本当にファンタスティックでした。ラリーの1本1本にお互いの意図があり、駆け引きの火花が散っていました。単調にスピードボールで打ち合うのではなく、高く跳ねるループボール、厳しいアングルショット、ドロップ、一転して激しい高速フラット。コートカバーリングも素晴らしいし、追い込まれてからのカウンターもスリリング、ネットでの攻防もお互いに見事なタッチで、時にはダブルスかと思うようなボレー戦もありました。パワーだけで勝負する選手とはこの2人はひと味もふた味も違います。

 大会前に僕も書いたように、今大会の錦織は勝敗よりも自分らしいテニスをして自信を取り戻すこと、そしてトップ選手たちに錦織の「凄さ」を改めて見せつける「ブランド力の回復」が肝心でした。今シーズン後半の低迷を脱し、来シーズンにまた「らしい」テニスをするために、今大会でよりチャレンジしていくことが必要だったのですが、ジョコビッチ戦では完敗したものの、その芽は見えていましたし、ベルディヒ戦、フェデラー戦でしっかり自分のテニスを取り戻せたのではないかと思います。

 来季に向けて手応えを掴んだ錦織。1月の全豪が今から楽しみになりました。最後にひとつ。この試合、ほとんどチャレンジがありませんでした。何回か使えばいいのに、という場面で2人ともチャレンジをせずに淡々と試合を続けていました。それだけテニスに集中していたのでしょうが、チャレンジシステムを使った時間稼ぎや流れを敢えて切るような駆け引きではなく、あくまでもテニスでの駆け引きに徹した2人のスポーツマンシップも賞賛に値するものだと思います。


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