幹事クリタのコーカイ日誌2015

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11月3日 ● セーラームーンはバーのママになるか。

 現在テレビCM出稿量が多い業種と言えば自動車と通信。特に携帯電話業界の激しいCM合戦が目立ちます。ソフトバンクの「白戸家」が長年ずっと目立っていたのですが、ここのところauの「三太郎」が一気に好感度で追い抜いていきました。ソフトバンクの方が有名タレントを山のように起用して金がかかっている感はありますが、企画力やセンスではauの方が上回っているかなという印象です。

 そこでソフトバンクがスタートさせた新しいシリーズがアニメキャラの起用です。それも「元セーラームーン」(小泉今日子)、「元鉄腕アトム」(堺雅人)、「元ちびまる子ちゃん」(広瀬すず)のように超有名キャラクターたちの「その後」を豪華タレントが演じています。他にも「あしたのジョー」「おぼっちゃまくん」「ゴルゴ13」「北斗の拳」などのキャラクターが登場する予定らしいです。タレント料だけではなくこれらの作品に対して支払う使用料もかなりの額になるのではないかと思いますが、ソフトバンクの広告予算ではこのくらいものの数ではないのでしょう。

 ただ金をかけて豪華なタレントをキャスティングしても、結局広告は企画力とセンスの勝負です。いま頻繁にオンエアされているセーラームーンの経営するバーでセーラースティックが伸びて自撮り棒になるというバージョンを見ていると、ちょっと三太郎には似てるけど勝てないかなぁと感じます。もちろん悪いわけではありません。演技や映像のクオリティが高いのはわかるのですが、もうひとつふたつ足りてない感じがします。

 一番足りないと感じるのはアニメに対する「思い入れ」のような気がします。有名なアニメ作品を並べて、いま旬の著名なタレントに演じさせるという企画は安直と言えば安直です。これまでにもあった手です。だから、この手を使うならCMプランナーや監督にその作品に対する「思い」がなくてはなりません。その「熱量」が視聴者に伝わって心を揺り動かすのです。それが「浅い」と感じられてしまうと「わかってないなぁ」となって単なる「安直」になり下がります。

 かつてグリコが大人グリコのCMを作った時に、「その後の磯野家」を題材にして話題になりました。サザエさんという作品に対する深い理解と愛情があったからこそ、あの作品は名作CMたりえていました。このソフトバンクのCMにはそれが感じられません。単に国民的人気を誇った有名アニメキャラを並べてみただけにしか思えないのです。セーラームーンは不老不死ですから、中年女になってバーのママになるという設定はファンの気持ちを逆撫でしかねません。ファンが納得できないCMを作ったら反感を買うだけでせっかく使ったのに逆効果です。

 個々の作品には個々の世界観があります。セーラームーンと鉄腕アトムは全く世界観が違います。両者のファンを納得させるだけの、両者が共存できる世界を作るのは至難です。auの三太郎は日本のおとぎ話というかなり近い世界を最初から共有しています。ソフトバンクの手練れのCMクリエーターたちが、今後どう巻き返していくかを期待したいと思います。


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