幹事クリタのコーカイ日誌2015

[ 前日翌日最新今月 ]

9月7日 ● デザインの専門性。

 なんだか今頃になってボツになった東京五輪ロゴの冷静かつ的確な説明がデザイン業界界隈から出てきています。代表的なわかりやすいエントリーとしてこちら(「よくわかる、なぜ「五輪とリエージュのロゴは似てない」と考えるデザイナーが多いのか?」)を取り上げておきますが、読んでいたただければおわかりの通り、専門家であるデザイナーにとって自明のことも、一般人にはわかりづらいわけで、なぜこういう丁寧な説明を組織委員会が早くしなかったのかと悔やまれます。今となっては全ては手遅れです。

 僕はコピーライターとしてデザイン業界の端っこにいて、彼らの仕事ぶりに関わってきているので、専門的な説明はできなくても大まかには理解できているつもりです。だから発表された五輪のロゴとベルギーの劇場のロゴは違うから大丈夫だと思っていました。僕の周りのデザイン関連の人の意見もほぼ同じ。しかし、結果的に今回こういう最悪な形で取り下げられてしまったので、次のロゴデザイン選定はかなり難航することは間違いありません。あんな風に過去の作品まで遡って類似を探されてネット上で誹謗中傷されて叩かれるようなら(もちろん盗用はいけませんが、そうじゃないものも一緒くたにされていました)デザイナー側も提案を躊躇してしまうでしょうし、審査側だって世界中の全てのロゴデザインまで知っているわけではないので、選考に膨大な手間と時間がかかることでしょう。

 先のエントリーに書かれているように、デザインは単に美しく見せれば良いというものではないのです。見た目の美しさだけで良いの悪いの、まして好きだの嫌いだのと言うのは選考時には的外れです。ことに五輪のロゴともなれば、単に印象に残り、独自性があるというだけではなく、モノクロにしても小さくしても印刷が粗くても判別できるような機能性の高さが必要ですし、様々なシーンに展開できる展開力も欠かせません。ビジネスとしてロゴを成立させるためには専門家の緻密な計算と熟達した技術が必要で、単なる思い付きでできることではないのです。

 残念ながらほとんどの人がそういうことを知りませんでした。テレビで発言していたタレントや文化人たちもわかったようなことを言っていましたが、ほぼみんな的外れでした。今回の騒動をきっかけにして、少しでもデザインの奥深さと専門性の高さを理解認識してもらえれば、それがせめてもの救いだと思います。そして今後同じような炎上や叩きが起きないように、デザイン業界側からももっと積極的に真摯に発信していくことになれば良いなと思います。昔からデザイナーという人種は口下手な人が多いのですが、今度ばかりはそういうわけにはいかないので頑張って欲しいものです。


gooブログでも読めます「幹事クリタのコーカイブログ」

テニス好きなら「幹事クリタのテニス日誌」