幹事クリタのコーカイ日誌2015

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8月16日 ● 『火花』読了。

 お盆休みの連休が終わろうとしています。今年は全く予定を入れずに、ただただノンビリとしていましたが、お陰で充実した休みになりました。テニスもそれなりにやれたし、溜まっていたマンガも読めました。サックスもかなり練習できたので曲がスムーズに吹けるようになりました。ちょっと残念だったのはピアノが思ったほど上達できなかったことで、これは練習不足かも。それから休みに入った時に決めたAKB48の5枚組DVDも見たし、貸してもらった『火花』も読み終わることができました。

 『火花』はそれほど長い小説ではないのですが、読み進めるのに少し抵抗を受ける感じの小説でした。直木賞ではなく芥川賞受賞作である以上、純文学カテゴリーですからスイスイと読めるとも思っていなかったのですが、かと言ってそれほど難解な作品でもありません。実際、その気になれば一気に読めたのですが、どうもその「その気」になりにくさを感じるのです。

 難解でもないのに読みにくい理由のひとつには文体の生硬さがあります。なんだか「文学たらん」としている意気込みばかりが感じられて、それが文体を必要以上に気張ったものにしているように思います。後半になるほどに筆致は滑らかになるのですが、前半は本当に昔の作家のパロディでもしようとしているのかなと思うほどに「昭和」しているので、読みにくいというか、読みたくないと思わせるのです。

 それと主人公の憧れである先輩芸人の造形が、いまひとつ魅力的ではありません。もちろん非現実的なヒーローである必要はないのですが、かと言って主人公がそこまで憧れる理由が伝わってこないので、納得できないままに読み進めることを強いられます。何となく頭では言いたいことが理解できなくもないのですが、読者に伝えきれていないのは作者の力量不足であると僕は思います。

 『火花』は又吉直樹という芸人の知名度があって初めて「商品」として成立しています。又吉のことを知っていて、彼の「私小説」として読むからこそ面白さも感じるし話題性もあります。しかし、全く知らない無名の作家が書いたとしたら、ほとんど誰も手に取らないであろう一部のマニア向け作品でしょう。もちろん現実には「芸人」又吉が書いたことを前提として読まれるわけですから、これはこれで意味も価値もあるし、だからこそ大ヒット作品となっているのですが。

 僕には又吉の次の作品が気にかかります。次も似たような路線の作品だったら『火花』を読んだ人の何割が次も買うでしょうか?せいぜい1割程度じゃないかなと思います。又吉はそれでも構わないかも知れませんが、商売として考えている出版社としては「売れる」ものを求めるでしょうから、「もっとわかりやすく」「もっと面白く」「もっと刺激的に」と求めてくるのではないかと。芸能界を舞台にしたエンターテイメント小説になるなら、それはそれで期待できるとは思いますけど、果たしてそれが又吉の書きたいものなのかどうかはわかりません。


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