幹事クリタのコーカイ日誌2014

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9月11日 ● テニスファンをイラッとさせる発言。

 錦織の全米における大活躍で、今までテニスに興味がなかった人がたくさん中継を見てくれたようです。それは長年のテニスファンとしては嬉しいのですが、いろいろと誤解やら勘違いをしている人が多いし、特にテレビに出ている知ったかぶりでエラそうに喋っているド素人タレントにイライラすることもあるので、少しだけそうした発言を取り上げてみます。毒を吐いているみたいになりますので、心してお読みいただくようにあらかじめお断りしておきます。

 まず「錦織、世界1位に勝ったのに格下に負けるなんてダメじゃん」とか批判している人。多分テニスファンが一番いらつく発言でしょう。決してテニスファンの前で言わない方が良いです。男子テニスのトップ20くらいにいる選手はみな紙一重の実力を持っています。ランキングは年間を通じて参加した上位18大会の成績のトータルのランキングですから、それぞれの大会、それぞれの試合ごとではどういう結果になるかはわかりません。ナンバー1の選手が100位くらいの選手に負けることだってあるのです。錦織とチリッチの差なんて、その日の調子次第でどちらにも転ぶほどのものですから、こういう結果も十分にあり得ます。錦織がダメなわけではありません。

 「錦織は決勝進出を目的みたいに言ってたから優勝できなかったんだ」と言う人がいます。それはそれで必ずしも間違った批判とは言いませんが、テニスの世界ではファイナリストというのは特別な地位だということを理解していない発言なので、やはりテニスを知らない人だなとバレてしまいます。ファイナリストは単なる2位ではありません。テニスは「1位でなければ2位でも最下位でも一緒」という価値観ではないのです。対人競技ですから、2人がコートに立たないと試合は始まりません。勝者だけではなく敗者もリスペクトして拍手を送るのがテニスの文化です。まだ立ったことがない「決勝のコートに立つ」ことが大きな目標になるのは当然だということを理解してもらいたいと思います。

 「次こそ優勝できる」と威勢の良い発言をしている人。確かにこれも単なる掛け声としてはわからないわけではないですけど、そう簡単なことではないし、そもそも「次」ってなんだ、ということがわかっていない時点で、テニスを知らないなぁと思ってしまいます。テニスは毎週のように大会が開かれています。グランドスラムだけがテニスではないのです。4年に一度のサッカーW杯やオリンピックとは違います。錦織にとっての「次」は全米後に初めて出場するツアー大会なのか、それとも年間最終戦か、次のグランドスラムの全豪か、それとも来年の全米のことなのか。いずれにせよ「いつか優勝できる」ならともかく「次こそ優勝できる」とはテニスファンなら思いません。

 最後に「錦織に国民栄誉賞を」なんて先走ったことを言う人もいるようですが、まだまだその必要はありません。確かに日本人男子選手としては卓越した成績ではありますが、世界のテニス界の中で俯瞰すれば錦織はようやく出てきたニュースターの一人に過ぎません。もっと大きな実績を積み上げてからでいいでしょう。もしテニス界から選ぶなら今回も単複2冠、今年の年間グランドスラムも達成した無敵の王者、車椅子テニスの国枝慎吾でしょう。フェデラーが「日本にはクニエダがいるじゃないか」と発言したというエピソードは有名です。グランドスラムでシングルス16勝、ダブルス15勝の男子世界歴代最多記録、日本人が好きなパラリンピックでもシングルスで2個、ダブルスで1個の金メダルを獲得しています。まさにスーパースターですが、その割に知名度が低いしマスコミの扱いも小さいし。もっと彼をクローズアップして欲しいと思います。本当に日本の誇りなのですから。


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