幹事クリタのコーカイ日誌2014

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9月10日 ● 負けたことで錦織は成長する。

 多分大げさではなく、日本中が期待していた錦織圭のグランドスラム初制覇はなりませんでした。スコアは錦織から3-6、3-6、3-6。完敗です。ラオニッチ戦、バブリンカ戦、ジョコビッチ戦で見せた錦織らしいテニス、攻撃的で展開の速いテニスが陰を潜めてしまい、チリッチの豪快なサービスを崩せないばかりか、得意なはずのストローク戦でもミスを連発して自滅した感が強かったです。

 もちろん、チリッチのテニスが冴えまくっていたのも事実です。さすが準決勝でこれまで1回も勝ったことがないフェデラーをストレートで破ってきただけのことはありました。このテニスが今後も続くようなら「チリッチ覚醒」です。もともと高く才能を買われていた選手ですし、今年はずっと内容の濃い試合をしていました。このままいけば一気に4強を脅かす一番手にすらなることでしょう。ただ概してこの手の選手は浮き沈みが激しいので、まだ本当に覚醒したのか、この大会限りのバカ当たりだったのかは判然としませんが。

 そして錦織。戦前から僕は相手がフェデラーの方がやりやすいのではないかと心配していました。これまでは格上の選手を相手に臆せず立ち向かってきた錦織です。チャレンジャーとして失うものがないという気持ちが伸び伸びとしたプレーを引き出していました。ジョコビッチが「負けられない」というプレッシャーからディフェンシブになって錦織に敗れ去りましたが、今度は逆に錦織の方が受け身に立ってしまいました。

 錦織が試合後のインタビューでも「勝てる」「勝たなくてはいけない」と思ったことでプレッシャーを感じてしまったと語っているように、ガチガチでリズムが作れないまま試合が終わってしまいました。「ここまで硬くなったのは久しぶり。試合に入り込めなかった」ということですが、錦織のような繊細なタッチで創造性豊かなテニスをするタイプの選手は過度に緊張したらテニスが崩れてしまうのも無理ありません。今回は完全にメンタルが敗因でした。

 ただこの痛い大きな敗戦は、錦織を今後大きく成長させるのではないかと思います。実力的にはもう4強にも勝てるポテンシャルがあることを証明してみせました。またフィジカルに難があり怪我が多い錦織が、2週間の大会を最終日まで戦い抜くスタミナと体の強さができたこともわかりました。そして今回の敗戦が血となり肉となってメンタルを鍛えるはずです。いよいよ準備は整ったのです。技術も体力も経験も、グランドスラムを制覇するだけのものが完成しました。今から来年1月の全豪が楽しみですが、まずその前に11月のツアーファイナルがあります。世界のトップ8だけが参加できる「第5のグランドスラム」と呼ばれる年間最終戦。今回の準優勝でランキングを8位に上げた錦織にとってはコートの相性も良いはずですし、楽しみな大会になると思います。


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