幹事クリタのコーカイ日誌2014

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8月16日 ● 映画『マレフィセント』感想。

 久しぶりに先日劇場で映画を見てきました。ディズニーの『マレフィセント』。あの『眠れる森の美女』の悪役を主人公に据えて善悪をひっくり返したという話だったので、原作アニメはどんな話だったのかなと思い出しながらの鑑賞でしたが、結果、あまり原作は気にしないで見た方が良さそうな作品になっていました。なお、僕は映画の感想は基本的にネタバレをほぼ気にしないので、どうしても知りたくない人は読まないでください。あー、昔はこんなことイチイチ断らなくても良かったのにな。

 さて、この映画は単純なストーリー(男に裏切られた女の復讐譚)ながら、いろいろと深読みしようと思えばできるところが、映画好きならツボにはまるのではないかと思います。まず原作アニメ(あくまでもディズニーのアニメ)との違いをどう考えるかという問題。単に悪の側の視点から描いたということではなく、すっかり最後はストーリーが変わってしまうのです。なぜ変えるのか?ストーリーを変えないと現代ではリアリティが維持できないのだろうと(特に「真実の愛」の解釈)思ったのですが、原作アニメファン至上主義者には耐えがたい「改悪」かも知れません。だから、原作は意識しないで見た方が楽しめると思うのです。

 次に男女の地位の変化というか、ジェンダー的な視点。この映画は「人間」と「妖精」の戦いという設定ですが、人間側はほぼ男性しか出てきません。つまり「男」vs「女」の戦いを描いています。悪いのは出世欲や権力欲などにまみれた好戦的で身勝手な男であり、それに翻弄され傷ついた女が復讐をし、最後は女だけで平和な世界を築き上げます。そこにいるのは女王とそれを見守るゴッド・マザー、そして彼女たちを補佐する従順な下僕の男、そして純粋だが無能な王子。つまり女の最上の幸せは女だけで共有し、男は言うことを何でも聞く使用人さえいれば良いという世界観。最近の映画界では、そういう徹底した女性優位という映画がヒットするという共通認識があるのかも。

 映像的には素晴らしい作品です。と言うか、僕はこの作品は何より映像を見ることをお勧めします。まず「絵」として美しい。全体が絵画的な美しさに溢れています。ファンタジー映画ではつい子どもっぽいガチャガチャとした絵になりがちですが、この映画は実にシックで洗練されています。そして造形美とその表現のレベルの高さ。ディズニーがルーカス・フィルムを配下にした成果が出ています。『スター・ウォーズ』をさらに進めたようなクリーチャーたちの表現や動きの滑らかさ、美しさ。そしてアンジェリーナ・ジョリーのルックスと細やかな演技。満点をつけても良いでしょう。

 残念な部分ももちろんあります。特にストーリー展開の粗さは気になります。上映時間の制約があったのかも知れませんが、細かい描写が抜け落ちている感じなのです。なぜマレフィセントとオーロラが惹かれあうのかとか、マレフィセントと国王と3人の妖精たちの関係はどうなっているのかとか。唐突に出てくる王子も余りにも適当に描かれていて、「なんだこいつは」感しかありません。ラストの大団円なハッピーエンドはディズニーらしいのですが、なら国王をあっさり殺してしまうのはディズニー映画的にはどうなの、というのもちょっとモヤモヤしました。

 そういう雑なところは散見されますが、全体としては良くできた作品だと思います。特に女性は見終えてスッキリするのではないでしょうか。なにせ男に捨てられた女が、自分の卓越した能力を使い、従順でイケメンの下僕を従えて男に見事に復讐を果たし、しかも母性愛を存分に発揮して全ての幸せを勝ち取る映画ですから痛快でしょう。男は昔ながらのマッチョ的価値観を持っているほど、見終わって微妙に感じるかも知れませんが。


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