幹事クリタのコーカイ日誌2014

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1月21日 ● 錦織の善戦と可能性。

 昨日の全豪4回戦。錦織とナダルの対戦は日本のテニス史に残る死闘でした。スコアは錦織から6-7、5-7、6-7。これだけでもすごい戦いだったことはわかりますが、その内容の充実ぶりは錦織の実力がいよいよ世界のトップに肉薄してきていることを十分に証明するものでした。

 ナダルは世界ランキング1位で今大会の第1シードですが、それだけでは語れないフェデラーと並ぶ「生ける伝説」というべきレベルのチャンピオンです。彼の武器は回り込んで打つ強烈なスピンのかかったフォアハンド。力でぐいぐい押してくるこのフォアを打たれ続けたら、どんなに守備力の高い選手でも最後は押し切られてしまいます。辛うじて現在ジョコビッチだけがナダルに対抗できていますが、フェデラーやマレーと言えどもストロークの打ち合いになったらナダルの敵ではありません。

 ところが昨日の錦織はストローク戦でナダルと互角と言うよりは、むしろ主導権を握ってナダルを振り回し続けていました。これはナダル対策をきちんと練ってきたその成果です。錦織の戦略はナダルに得意の回り込みフォアを打たせないように、ナダルの時間を奪ってしまうこと。つまりベースラインから下がらず常に前のポジションに立ってライジングで角度をつけて打ち返していくという戦略で、ナダルはすぐに返ってくる錦織のショットに回り込む余裕がなくなり、角度のついたショットに振り回され続けてしまいました。

 もちろん、この戦略はやろうと思っても誰でもできるものではありません。錦織のフットワークと読みと天才的なセンスがあってこそ。ナダルの時間を奪うためには自分も時間を奪われるわけで、短い時間の中でショットメイキングをしていくことができなければ成立しません。いま世界のテニス界でも錦織以上にこの戦略を巧みに実行できる選手はいないのではないかと思います。

 世界1位のナダルを徹底的に振り回し続けた錦織でしたが、結果は0-3のストレート負けであることも事実です。紙一重の差ではありましたが、終わってみれば錦織はナダルにセットを奪われ続けて負けてしまいました。「紙一重の差」が大きな差だったのです。ここぞというポイントでは常にナダルが錦織を上回りました。ナダルは錦織に振り回されても諦めず追い続け、錦織の山のようにあったチャンスを愚直に潰し、そして錦織のわずかな隙を突いてセットを奪い勝利しました。このあたりの強さがナダルをナダルたらしめているのだと、見ていてつくづく感心しました。錦織が勝負弱いわけではありません。ナダルのメンタルが強すぎるのです。

 錦織としてはいくら相手がナダルであったとしても、もはや「善戦」だけでは納得しないでしょう。結果がついてこなければダメだと考えていると思います。昨日は惜しいところで勝利を逃した錦織でしたが、可能性は十分に感じられる見事な戦いぶりでした。この敗戦を糧としてさらに上を目指していくであろう今年の錦織は今まで以上に大きな期待をしても良いと思います。年末の最終ランキングトップ10も見えてきた気がしました。


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