幹事クリタのコーカイ日誌2013

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5月22日 ● 日本の良識と世界の常識。

 乙武洋匡さんが銀座のイタリアンレストランで車椅子での入店を拒否された件。大騒ぎしていたネット界隈もようやく収束に向かいつつあるようです。この件に関しては僕もまあ大方の意見と同じく、乙武さんが予約の時に一言「車椅子で行くが大丈夫か」と聞けば穏やかに済んだ話だと思うし、店主側も多分忙しい時に有名人だからって無理言いやがってと、ちょっと気が立っていたのが対応に表れてしまったんだろうと思います。こういう時にはお互いに言い分は必ずあるもので、まあ世の中にはよくある不幸なすれ違いのひとつだと思っています。

 日本的な良識で言えば「お互いにちょっと気を使えば良かったね」って話で収まるのですが、これがアメリカだったらどうか、グローバルスタンダードだとどうなるか、という論議はまた少し視点が違う話です。アメリカなら事情はどうあれ乙武さんを追い返した店主は完全に間違っているわけで、乙武さんはその権利を行使してしかるべきだということになるでしょう。確かに障害者が店側に気を使うのはおかしい、健常者と同じように扱われるべきだというのは「政治的に正しい」のです。

 このポリティカル・コレクトネス(PC)を単なる建前だ、正義ぶっているだけだと切って捨ててしまってはなりません。人種や民族、性別、年齢などによる差別は許されないのと同じく、障害者も差別されてはならないし、彼らの権利はPCという建前を高く掲げることでようやく守られているのですから。そこに日本的な良識という曖昧さを取りこんだら前提がグズグズになってしまい、なし崩しに差別が起きる可能性があるというのは理解できます。  

 人権問題だけではなく、そうやって現実の前に建前をなし崩しにしていった日本的解決のひとつが例えば自衛隊の存在です。こういうことは日本人の得意技です。日本人ならそうやって空気を読んで「このへんで」という落とし所を見つけて建前とのバランスを保ちますが、多人種多民族国家であるアメリカでそんな日本的腹芸は無理というもの。だからこそPCが尊重されているのであり、そこに「本音は違うだろ」とか「建前を言うな」などと突っかかっていっても相手にされません。そしてアメリカのスタンダードが結局グローバルスタンダードになっているのですから、日本の「良識」と世界の「常識」が食い違ってしまうのです。

 橋下市長が米軍の司令官に「米兵の性欲処理に風俗を活用しろ」などと言ってしまうのもこれと同じ構図で、女性を性的に活用するなど性差別の最たるものでありPC的に議論にすら値しないわけです。アメリカにとって建前上、売春を認めるようなことは最初から無理であり、そこを理解せずに「ぶっちゃけ話」をしようとするから叩かれてしまいます。それこそアメリカにしたら「空気読めよ、ハシモト」と言いたいかも知れません。

 乙武さんの件はローカルな話ですし日本的良識に則った解決でも良いと思いますが、世界を相手にする時は世界の常識を理解しないで「話せばわかる」という態度で臨んだらとんでもないことになるというのが今回の橋下発言の教訓です。と言うか、居酒屋で飲んでるオヤジじゃないんだから、政治家ならそれくらいはわかった上での言動をしてもらいたいものです。



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