幹事クリタのコーカイ日誌2012

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12月1日 ● 橋下の「フェードアウト」マジック。

 「維新」の公約がフラフラしています。ぶれ続ける理由は明らかで、本来ならかなり違うはずの石原慎太郎と橋下徹の政治理念を無理やり合わせようとしているからです。一番象徴的なのが原発に対する姿勢で、原発維持派の石原に対して、「脱原発」を当初から声高に叫んでいた橋下が迎合したために、よくわからないことになってしまいました。

 一度は「脱原発」が消えた維新の新しい公約が「結果的に2030年代までに原子力発電はフェードアウトする」という言葉になりました。橋下は「2030年代に原発ゼロ」だったはずです。それが「フェードアウト」。なんでも横文字で言えばごまかせると考えるのはアホのすることです。原発がフェードアウトしていくなんて、論理的におかしいです。原発は人ですか?「おれ、そろそろフェードアウトしていこうかな」って考えて、どこかに雲隠れするんですか?

 まず「フェードアウト」がおかしいのは、政党として原発をなくすという主体的な態度を示しておらず、原発がなくなっていくんじゃないかという予測をしているに過ぎないからです。「フェードアウト」していなくても「あれ、しませんでしたね」で済んでしまいますし、もし少しでも原発が減っていれば「ほら、徐々にフェードアウトしているじゃないですか」と言えるわけです。野球解説者の順位予想じゃあるまいし、そんな無責任な態度で公約を語るのは珍妙としか言いようがありません。

 次に「フェードアウト」したというのは、どういう状態のことを言うのか?普通に考えれば「見えなくなった」「気づかなくなった」状態のことです。つまり原発がなくなったわけではなく、あるけれど存在が見えにくくなったり、気にならなくなった状態が「フェードアウトした」と言えるわけです。そして、それは福島原発事故以前の状態とほぼ同じです。

 あの事故が起きるまでは、日本人のほとんどにとって原発は意識の外でした。あることは知っていたけれど、廃炉を主張している人なんてごく一握りで、主要政党もみな原発推進派でした。「オール電化」を掛け声に電力会社は電力需要を高めることに躍起になっていたし、「環境派」の人々も、火力発電を抑えて原発依存度を高めるしかCO2を削減できないと思っていたはず。

 原発が稼働しているにも関わらず、みんなの意識の外に原発が置かれた状況に再び戻そうということが「フェードアウト」だとしたら、それはまさに石原慎太郎や自民党が考えている原発政策そのものでしょう。一見維新の公約を橋下の従来の主張に戻したかのように見える「フェードアウト」は、実は真逆の石原の主張だったという言葉のマジックです。

 この詐欺師的マジックは、石原に受け入れられやすいように橋下側の誰かが捻り出したのでしょうが、ただ残念ながら石原にはこのマジックは通用しなかったみたいです。昨日の党首討論会で「そういう公約はやっぱり直させます」と明言しました。さすがに橋下と違って石原はブレません。まさに「老いの一徹」。橋下がこれでまた頭を悩ましている様子が目に浮かびます。次はどんなマジックが飛び出すのか楽しみです。



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