幹事クリタのコーカイ日誌2012

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9月10日 ● ドラマ「負けて、勝つ」のキャスト。

 話題のNHKドラマ「負けて、勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜」の第1回を見ました。占領日本の主役である吉田茂とマッカーサーの2人の葛藤を描く、いかにもNHKらしい骨太なドラマで実に見応えがありました。このドラマについては企画や脚本、演出なども含めていろいろな側面から語ることができるし、歴史学、社会学、政治学などの観点からの評価もあるでしょうが、敢えて難しいことは言わずキャストについて感じたことだけ書こうと思います。

 実在の、しかもつい数十年前の有名な人物たちを描くドラマですから、キャスティングはかなり難しいことは容易に想像できます。吉田茂に渡辺謙、マッカーサーにデヴィッド・モース、吉田の後妻・小りんに松雪泰子、白州次郎に谷原章介、長男で英文学者の吉田健一に田中圭、三女の麻生和子に鈴木杏、鳩山一郎に金田明夫、芦田均に篠井英介、広田弘毅に佐野史郎、松野鶴平に石橋蓮司、佐藤栄作に高橋和也、池田勇人に小市慢太郎、幣原喜重郎に中村敦夫、近衛文麿に野村萬斎、近衛千代子に中島朋子。他に加藤剛、吉田栄作、嶋田久作、永井大、初音映莉子らが顔を揃えていて、実に重厚なキャスティングです。

 まず渡辺謙ですが、彼については常々思っていましたが、テレビでは存在感があり過ぎて収まりきりません。彼が出るとドラマが締まるというよりは「締まりすぎる」のです。吉田茂には似ても似つかない渡辺謙が威圧感たっぷりにワンマン宰相を演じるのは良いのですが、できたらこれは映画館で見たかったなぁと思いました。

 初回に重要な役柄として登場した野村萬斎は良かったです。五摂家筆頭の近衛家の当主としての品格とプライドと繊細さを十分に表現していました。マッカーサー役のデヴィッド・モースも良いです。日本人から見たらまさに巨大な男、立ちはだかる壁という存在。東部エスタブリッシュらしいエリート意識とプライドを演じていました。それから中村敦夫が本当に良いです。彼は最近どのドラマで見ても風格が出ていてハズレがありません。僕の中ではいま中村敦夫と岸部一徳はテレビドラマのバイプレーヤー両巨頭です。

 重厚な演技派が居並ぶ中でちょっと軽いかなと感じたのが谷原章介と永井大。もちろん吉田茂の下につく役柄である以上、吉田よりも凄みを出すわけにもいかないのですが、渡辺謙と並んでしまうとテレビドラマ育ちのひ弱さが目立ちます。特にハラショー演じる白州次郎はスーパースターゆえにイメージがカッコ良すぎて難しいとは思いますが、もう一度伊勢谷友介に演じさせても良かったのではと感じました。

 でもまあ全体としては良く計算された適材適所のキャスティングで、さすがNHKと思いました。これはスポンサーのしがらみがないからこそできることです。民放ドラマならこうはいきません。トヨタ、パナソニック、サントリー、花王、ソフトバンク、大和ハウスなんてスポンサーが並んでいると、それぞれの出演タレントがちゃんとキャスティングされています。しかも主役級の俳優と同じ事務所のタレントが必ずバーターで出ています。ジャニーズ、研音、オスカー、吉本興業など露骨に事務所絡みだなとわかりますが、NHKではさすがに事務所もゴリ押しできないのでしょう。永井大が渡辺謙と同じ事務所ですが、それくらいしか気になりませんでした。

 ただNHKでもやっても良かったんじゃないかなとひとつ思ったのが麻生和子役。杏は杏でも、鈴木杏ではなく渡辺謙の娘の杏を使えば面白かったのに。実の父娘で父娘を演じるくらいの遊びは楽しかったでしょう。豪快な北条政子を演じながらの麻生和子というのも一興ですし。


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