幹事クリタのコーカイ日誌2012

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5月9日 ● 原発ゼロからどうするのか。

 42年振りに国内で稼働している原発がゼロになりました。これはかなり象徴的な出来事です。この状況からどうするのか、再び原発を稼働させて電力の安定供給を図るのか、それとも原発は動かさないで「脱原発」へ向けて一気に舵を切るのか。国論は二分していると言っても良い状況でしょう。

 僕は感情的な「脱原発」派の人々を見ているとウンザリします。科学的な知識も乏しく、聞きかじっただけの怪しげな論拠で原発をやめろとヒステリックに叫ぶような人ばかり。原発容認派に対して容赦なく人格攻撃する様を見ていると、「脱原発」というイデオロギーか宗教でしかないと思ってしまいます。

 と言って「原発容認」派の人々の胡散臭さもまた近づきたくない空気を醸し出しています。頭にあるのは損得の計算だけ。金儲けの論理をふりかざして、二言目には「日本は貧乏国になる」と脅迫してきます。センスが高度経済成長時代から一歩も進んでいないのではないかと思うほどの経済絶対主義者。これもまた一種のイデオロギーでしかありません。

 しかもこの両派が噛み合わないのは、議論しているスパンが格段に違うからです。「脱原発」派は子どもや孫の世代に原発という負の遺産を残すな、ということを言います。50年、100年という単位で考えれば原発は安上がりどころか高くつくからやめようという主張です。ところが「原発容認」派は今年の夏の話、せいぜい長くてもここから数年先の話をしています。この夏の電力が不足するとか、このままでは日本の経済力が落ちてしまうとか、極めて短期的な経済効果の話です。これではどっちが良いかとか悪いとか言っても、話が噛み合うはずがありません。

 主張はお互いにある程度正しいのです。いま原発を動かさなければ確かに電力は不足するでしょう。倒産する企業も出るかも知れませんし、海外に逃げ出す企業もあるでしょう。日本の経済は他の先進国に対して遅れをとり、国力は衰退してしまうかも知れません。そうなれば失業率は上がり給料は減ることも十分考えられます。

 しかし、このまま原発に依存していると、いつまた福島のような事故が起きるかも知れないし、そうじゃなくても放射性廃棄物の処理に莫大な費用がかかってきます。原発はどんどん老朽化して寿命がくるし、新しい原発を作ることも困難な上にかなりの投資が必要です。トータルで見れば原発は「高くつく」ことも間違いないでしょう。

 要はどっちも厳しい状況の中で、ではどこに着地点を見つけるかです。それが政治家の仕事です。比較的電力が足りなさそうな地域へ、比較的安全そうな原発を動かしてパニックにならないくらいの電力を確保する。そうやって短期的な問題をクリアしながら、長期的な視点で代替エネルギーの開発にもっと本気になって力を注ぐ。そのためにも専門家の意見をきちんと取り入れ怪しい風説をシャットアウトし、情報をオープンにして正しい判断を国民ができるようにする。震災後1年以上が経過したのに、未だに政府は何をどうしていくのか、そのビジョンさえ見えてきていません。彼らが政争ばかりやっている間に、日本の劣化がどんどん進んでいってしまいます。



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