幹事クリタのコーカイ日誌2011

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12月11日 ● 淋しいのはお前だけじゃない。

 市川森一が亡くなりました。昭和を代表する脚本家の一人です。代表作は『淋しいのはお前だけじゃない』『黄金の日々』『異人たちとの夏』『港町純情シネマ』などですが、当時の若者にカルト的に受けていた『傷だらけの天使』や、子供向けにしては大人受けする『ウルトラセブン』なども手がけていました。

 個人的には『ウルトラセブン』や『怪獣ブースカ』などの子供向け番組をまさに見ていた世代なので思い入れが深いですが、コピーライター的には『淋しいのはお前だけじゃない』というタイトルのキャッチーさに強く惹かれます。このドラマは名作の誉れ高く、市川はこれで第1回向田邦子賞を受賞しています。ただ内容もさりながら「淋しいのはお前だけじゃない」という言葉の持つ共感性の高さが見事です。無駄がなく明快で、心にズバッと入ってくる言葉の強さ、人の弱さを表しながらも救いもあります。

 人はみな淋しさを抱えて生きています。特に夜も更けて一人布団で寝ていると淋しさがしんしんと心に積もります。そんな淋しさに共感しながらも「お前だけじゃない」という一言で、連帯感と希望を表現して心を奮い立たせてくれます。そうか、自分だけが淋しいわけじゃないんだと思えば、また明日から生きていけると思えるものです。

 市川が書いた多くの作品の中で、このドラマが代表作として取り上げられるのも、内容の秀逸さももちろんありますが、タイトルの強さがあって人々の記憶に残っているからでしょう。市川がつけたタイトルなのか、スタッフが考えたものなのかは知りませんが、コピーライターとして勉強になるタイトルだと思います。




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