幹事クリタのコーカイ日誌2011

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5月8日 ● 本当に浜岡原発を止めて良いのか。

 浜岡原発の稼働停止要請を政府がしました。中電は基本的にはそれを受け入れる方針のようです。東海地震が30年以内に起こる可能性が87%と高いので、防波堤を築くまで2〜3年間稼働を停止したいということのようです。原発政策に新たな一歩を踏み出したという点で意義のある提言だとは思いますが、突然の政府要請に各地で賛否両論の声が上がっています。当然です。これはメリットとデメリットがはっきりしていて、どちらの側からモノを見て言っているのかによって賛成にも反対にもなりうる問題だからです。

 原発を止めれば今回の福島のような事故は起きる可能性が低くなります。絶対にないとは言い切れませんが、確率が低くなることは確かでしょう。その代わりに日本の製造業の中枢である愛知を中心とした東海地方の機能低下を招くことも確かです。いま東日本を復興するために必要なことは西日本が経済を活性化して金を儲けて東日本に投下することなのに、それが難しくなります。日本の復興は確実に遅くなることでしょう。

 大きな地震が起きると想定される場所にある浜岡原発の危うさはもう30年前からわかっていました。だからこそ中電も浜岡に対しては相応の地震対策を施してきているわけです。想定されるマグニチュード8クラスの地震なら耐えられると中電は言っています。ただし津波については今回の東日本大震災レベルの津波は想定していなかったので、防波提を作りますと。

 理屈としては中電の言い分が通っていると思います。しかし「想定外」の規模の天災が起きたらどうなるのか、それでも何も起きないとは言い切れないだろう、だから稼働を停止しろ、というのが反対派の意見。そもそも中電の言うことなんか当てになるのか、という反感も含んでいます。気持ちはわかりますが、ハッキリ言ってそれは感情論であり、そんなことを言い出したらどんなことだって信じられないし危険になってしまいます。「想定外」はあくまでも「想定外」であって、それは「想定できなかった」のではなく「想定することにムダが多い」から想定していないのです。そこをはき違えて「専門家が想定外なんて言うのは怠慢だ」などと言うのは難癖をつけているに過ぎません。

 もちろん原発は止められるものなら止めた方が良いでしょう。しかし、止める前提として代替エネルギーが用意されていることが必要です。代わりになるエネルギーもないのに単に止めてしまえば起きるのは計画停電であり、経済の沈滞であり、国家の貧困です。むやみやたらと止めれば良いという話ではありません。「起きるか起きないかわからない悲劇」と「多分起きる悲劇」があったら、まずより起きる確率が高い悲劇を食い止めるべきだと思いますが、原発はいま止めることはその逆をいくという判断です。

 浜岡原発は中電の発電量の約1割に過ぎないので、稼働停止させても何とかなるんじゃないかと言われています。東電と違って関電以西の電力会社から電力を融通してもらえるだろうということもあります。しかし、それも「想定外」のことがいつ起きて、そうじゃなくなるかもわかりません。すでに関電以西の電力会社は「期待するな」とのメッセージを発しています。化石燃料の高騰が必至でどこも大変なのです。原発がダメなら余裕がある電力会社なんてありません。地震に対しては想定外のことまで考えろというのに、電力に関しては甘い見通しでいけるなんて判断するのは全くフェアではありません。

 僕の率直な意見は、少なくとも東日本の復興の目処が立つまでは浜岡原発は稼働させておいたらどうかと思います。今は復興が最優先だからです。原発が稼働していようが止まっていようが防波堤は作れます。この2〜3年を停止させるのではなく、この2〜3年を稼働させて復興に頑張り、ある程度目処が立って余裕がでてきたところで稼働停止した方が良いでしょう。もちろん、その稼働中に東海地震が起きて事故が起きることもあり得ます。しかし起きないこともあるのです。だったら、今は防災対策を施しながら復興に向けての経済活性化を図るという両面作戦がベターだと思います。端的に言えば「浜岡は止める、ただし今すぐではない」ということです。




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