幹事クリタのコーカイ日誌2011

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5月7日 ● 安全はコストがかかるという単純な事実。

 ユッケを食べて食中毒で死者4人。GWを家族で過ごし、たまには外食をしようなんて人たちにとっては衝撃的なニュースだったのか、それとも震災関連の報道に少々疲れてしまったのか、結構な勢いでこのニュースが話題になっています。

 あの焼き肉屋の社長に怒っている人もたくさんいるようですが、当初の逆キレ気味の会見の印象が悪かったせいが多分にありますし、正直「なんだかなぁ」と思わないでもありません。結局社長は土下座までしていましたが、そういうのはマスコミ受けする単なるパフォーマンスに過ぎないし、問題の解決に何ら寄与しないだろうなぁと思います。土下座することである種のガス抜きはできるんでしょうけど、誤魔化されてしまう部分も多いだろうし、僕は「土下座禁止」くらいのルールを作った方が良いと思っています。

 それはともかく、こういう場合、まず原因の究明、次に補償の問題と今後の対応策、ということになるんだろうと考えられますが、そもそも生食用の肉なんてものが牛、豚、鶏に限らず本来我が国には流通していない建前になっているということと、実際には大量の生肉が食べられているという現実との乖離をどうするのかからスタートしないといけないでしょう。

 僕は肉は火を通した方が圧倒的に美味いと思っていますし、以前から生で肉を食べるなんて衛生的に大丈夫かと不安に感じていましたから、正直生肉を食べられなくなっても全然困りません。困りませんが、それは「鯨肉なんて食べないから捕鯨禁止しても構わない」というのと同じ理屈になるので、きっと「文化」として残そうという話が出てくると思います。つまり、食べたい人がいる以上、何らかの基準を設けて一定量の生食用の肉を流通させなければなりません。

 その場合、それ相応の手間暇をかけなければ安全な生肉は提供できないわけですから、コスト的には大幅アップは間違いありません。じゃあ仮に今の倍以上の値段を払ってまでユッケを食べようという人がどれだけいるのか、果たしてそれでビジネスとして成立するのか、最近の外食事情を鑑みるとかなり見通しは暗いんじゃないかと思います。

 ここのところずっと外食産業はひたすら低価格化の波に翻弄され続けています。安い牛丼、安いファミレス、安いファストフード、安い弁当。20年ほど前と比べたら今の外食の安さは驚き以外のなにものでもありません。しかし、あんな安価で牛丼やハンバーガーが食べられることを誰もおかしいと思わないのでしょうか?安いには理由があります。それは人件費や広告費や店舗運営費を削ったからかも知れませんが、何より食材の原価を削ったからだと考えるのが普通ですし、そんな食材が本当に衛生的で安全かと言われれば、「うーん?」と首を傾げざるを得ません。

 「安くて安全な肉を」と言うのは簡単ですが、実際にはどこかでマジックを使わないと不可能です。安全にはコストがかかるということを忘れてしまえば、またいつか同じことが繰り返されるでしょう。そしてこの話は電気の問題と構造が同じです。「安くて安全(エコ)な電気を」と言われて原発をたくさん作ってみたら、そこにはやっぱり落とし穴がありました。今後は原発を使うにしろやめるにしろ、「安全な電気」は高いコストを払わないと無理だということがわかってしまいました。電気料金の値上げなんて許さない、という論調を多く見受けますが、安全性を求めれば求めるほど、最終的には電気を使う我々がイヤでもそのコストを負担するしかないのです。

 さて、いくらのユッケなら食べますか?いくらの電気なら使いますか?ユッケと違って電気は高くても使わないわけにはいかないのが困ったところです。




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