幹事クリタのコーカイ日誌2011

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4月10日 ● ACを凌駕したサントリーのCM。

 震災後にまさに「津波」のようにテレビから流れたACジャパンのCM。それはACのせいではないにしろ、多くの視聴者から「暴力的」だと感じられるほどの量であったために苦情を受けて、すぐに震災特別キャンペーンCMをACは作りました。SMAPやトータス松本、嵐、AKB48、三谷幸喜、松たか子、ベッキーら多くの人気者が登場して、メッセージを伝えるシンプルなCMです。まあ特急作業で作るとこういうことになるだろうなぁ、という無難なものでした。

 ただこれらのACのCMでメッセージされているような「無駄な通話やメールをやめよう」とか「買い占めはやめよう」とか、果たしてこれらの「言葉」は視聴者に届いているのでしょうか?見ている方も「ああ、そうだね、わかっているよ、その通りだよ」という以上の感想を持ちようがなく、最初のうちこそ誰が出ているのかと興味がありましたが、一通り見てしまうともう全然印象に残らないCMとなってしまいました。もちろん苦情が押し寄せて困ったACとしては、まず苦情が来ないことが大事で、広告として大切な「共感」も「インパクト」も二の次になってしまう事情もわかりますが、それにしてもちょっと残念なCMだなぁと思います。

 そして、少し遅れて先日からオンエアされたのがサントリーのCM。こちらはサントリーの広告出演者たちが「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」の2曲をリレー形式で歌うものですが、実にクオリティの高い感動的な名作CMに仕上がっています。

 僕がたまたま最初に見たのは、水前寺清子から始まる「見上げてごらん夜の星を」バージョンでした。水前寺清子→三浦雄一郎→左右田一平→浜美枝→村田兆治→仲本工事→加藤茶→堺正章というもっとも高年齢層をターゲットにした渋いラインアップだったので、思わず「?」と首を捻ってしまいました。そもそも短い時間にパッと見ただけで誰かわかったのが水前寺清子と加藤茶と堺正章だけでしたから「サントリーも訳のわからないことやってるな」と思いました。

 しかし、その後に和田アキ子から始まるバージョン、そして竹内結子から始まる「上を向いて歩こう」バージョンなどを見て、なるほどサントリーの契約タレントが出演しているわけか、と納得すると、今度はこれはスゴイなと感じました。サントリーが契約しているのは一流のタレントばかり。忙しい彼らをスタジオで歌わせて、それをつないで何パターンものCMを作る。それは時間に余裕がある時なら難しいことではないでしょうが、この時期に特急作業で作ってこのクオリティの高さは、まさにプロの仕事です。

 次々と新しいバージョンを見るたびにその思いは強く深くなり、もう繰り返し見ているうちに涙がこぼれそうなほど感動しました。余計なメッセージを挟まず、ただただ日本の生んだ名曲を多くのタレントが歌うシンプルな強さ。まさに日本版「We are the world」です。そして最後の一行のコピーは曲のタイトル。それがそのまま被災した人、そして全ての日本人に向けてのメッセージになっています。タレントの持つパワーと歌そのものが持つ力を融合させて、「思い」が視聴者にしっかりと届いてきます。多くのタレントを使いリレー形式で出演させるという同じ構造ながら、残念ながらACのCMはサントリーに完敗です。

 全てのバージョンをご覧になりたい方は、サントリーの公式サイト(こちら)からどうぞ。恐らく日本のCM史に残る傑作だと僕は思います。




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