幹事クリタのコーカイ日誌2011

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4月6日 ● 歴史を軽んじる大河ドラマ『江』。

 NHKの大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』は見るに耐えないドラマだと思います。いや、視聴率はそれなりにずっと取れているから、そうは思わない人もたくさんいるのでしょう。だから全ての人にとってダメだとは言えませんが、少なくとも僕はもう見る気が失せてしまいました。もしこのドラマを好きな人は、これからドラマの批判を書きますので読まない方が良いかも知れません。

 そもそも昨年主要キャストが発表された時に、僕は俳優の年齢設定がおかしいということを危惧しました。鈴木保奈美と宮沢りえの親子役はあり得ないと。そして、それは単に年齢だけの問題にとどまらず、演出も脚本も全てにわたって「史実無視」どころか「リアリティ無視」というカタチで露呈して、ドラマ全体が訳の分からないファンタジーかイリュージョンのようになってしまっています。

 いちいち問題点を挙げていくとキリがありません。言葉使いは現代語そのまま、考え方も発想法も現代人と同じ、登場人物の内面を掘り下げることはせず、マンガ以下の底の浅い人物描写などはまだ序の口。年端もいかない年齢の娘を20代半ばの女優が演じ、しかもそんな幼児が戦国の世を駆け回って、天下人に説教を垂れる、戦の軍議を家族会議で話し合う、亡霊のように死んだ人間が登場して生きている人間に憑依し干渉する。こんなドラマはもはやSFかコメディでしかあり得ません。

 脚本の田渕久美子は『篤姫』がマシだったので期待したのですが、今回のトンデモ脚本を書いているのは、前回と違ってきちんとした原作がないオリジナルだからでしょう。『篤姫』では宮尾登美子の原作を読んだ時にドラマとの「重み」の違いを感じ、もっと原作に忠実にドラマ化した方が良いのにと思いましたが、問題は脚本家のセンスと知識にあったことが、今回のドラマでよくわかりました。

 ただ悪いのは脚本家だけではないと思います。おかしなファンタジー世界を作り上げている演出家もダメですし、歴史上の人物であることを忘れているかのような軽い演技をしている俳優もダメ、何よりそんなドラマを恐らく意図的に作っているプロデューサーがダメダメなんだと思います。

 今回の大河で一番酷いと思うのは、歴史に対する尊敬の念とか謙虚さが感じられないことです。少なくとも去年の『龍馬伝』には登場する歴史上の人物たちに対しても、また歴史そのものに対しても真摯に向き合おうとする姿勢が感じられました。『坂の上の雲』はさらに原作者である司馬遼太郎に対するリスペクトも含まれていて、それがドラマ全体を引き締めています。しかし『江』から感じるのは「面白くしてやろう」という驕り高ぶりだけです。秀吉への悪意のある描き方、初のおちゃらけにそれを強く感じます。

 自分たちの歴史を面白おかしく改変して省みない姿勢、歴史上の人物たちに敬意を払わないで歴史ドラマを作ったところで、心に訴える作品になるはずがありません。単につまらないだけならまだしも、見ていてだんだん腹が立ってくるドラマというのは久しぶりです。突っ込みながら楽しんで見る、というレベルを超えてしまったので、もう見ないことにしました。




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